離島における、バッテリーレスの太陽光発電を利用した揚水発電システムの研究開発。/沖縄工業高等専門学校 安里 健太郎 助教

2013年7月掲載

※肩書きは採択時のものです。

再生可能エネルギーの大量導入に関して、コスト面・性能面で大きな課題となっているのがバッテリーです。沖縄高等の安里 健太郎助教は、離島において、バッテリーレスで、太陽光発電による「揚水システム」と「マイクロ水力発電機」を組合せた発電システムの開発を行いました。一般家庭や農業用地用などの小規模発電システムですが、再生可能エネルギーの発電だけで、バッテリーレスにより電気を供給するというのは、とても画期的な発想ではないでしょうか。

沖縄のような島嶼(※1)地域に適した発電システムを研究したい

Q.「パワーアカデミー研究助成」に応募したきっかけをお教え下さい。

沖縄工業高等専門学校 安里 健太郎 助教

共同研究者の玉城教授(琉球大学、情報工学科)より、パワーアカデミー研究助成についての情報をいただいたことがきっかけです。

玉城教授はかねてから再生可能エネルギーを利用した発電システムの研究開発に携わっており、あるとき、「(沖縄のような)島嶼地域に適した発電システム」について議論したことがあり、それがこの研究の原点となります。この議論を機に発電システムの研究開発にも携わってみたいと考えておりましたので、沖縄高専へ着任後、本格的にこの研究に着手する運びとなりました。

私はこれまで制御理論に関する研究が中心でしたので、パワーアカデミーのことは知りませんでしたが、玉城教授から情報をいただき、良い機会だと考えて研究助成に応募させていただきました。

※1:島嶼・・・(よみ)とうしょ。島々(大きな島と小さな島)の意味。

離島の独立型電源に、再生可能エネルギーを利用する

Q.研究内容をお教え下さい。

現在、エネルギー問題の解決策の一つとして、再生可能エネルギーの積極的な利用が強く望まれてきています。私の出身地である沖縄県では、島嶼地域ということもあり、離島の独立型電源を確保する手段として、とりわけ太陽光発電や風力発電の活用が期待されています。このような背景が動機づけとなり、現在私たちは、持続可能な独立電源としての実用化を目指して、バッテリーレスの太陽光発電を利用した揚水発電システムの研究開発を行っています。

この発電システムの特徴は、バッテリーを介さずに、太陽光発電で得た電力によりポンプを直接駆動して揚水することで、太陽光発電の発電電力を位置エネルギーとして蓄える点にあります。そして、この蓄えられた位置エネルギーをマイクロ水力発電機により電力に変換することで、必要な時に、電力の安定的な供給を行うことができます。
また本システムの運用としては、揚水発電による電気は何日間か保管しておき、曇りの日などの太陽光発電が足りない場合に使用するといった形で考えております。

離島の独立型電源に、再生可能エネルギーを利用する

自然を相手にする研究の難しさ、実用化へ向けてさらなる研究開発を

Q. 現在までの研究成果と今後の展開についてお教えください。

沖縄工業高等専門学校 安里 健太郎 助教

今回の研究では、先行研究で開発した揚水システムが台風被害にあうなど、多くの困難に直面し、自然を相手とする研究開発の難しさを痛感いたしました。今後はこの教訓を糧に、持続可能な独立電源としての実用化を目指して、この発電システムの研究開発に継続して取り組んでまいります。

具体的には、まず、今回の研究成果を踏まえ、より柔軟な運用が可能となるようにマイクロ水力発電機の改良を行っていく予定です。そして、先行研究の揚水システムの修繕を行った後、改良したマイクロ水力発電機を連携させ、気象情報などを考慮した最適な発電システム運用法を確立していきたいと考えております。

また、離島における農業や畜産業などの生産分野では、持続可能な独立型電源の活用が切望されております。今後は、生産者の方々と連携を図りながら、そういった分野への実用化に向けて取り組んでいきたいと考えております。

他分野との横断的な技術交流が、革新的な技術創造につながる

Q. 今後、パワーアカデミーに期待することをお教えください。

再生可能エネルギーを利用した発電システムの開発進めていくのは初めての経験でしたので、本研究助成は私の研究開発能力向上につながったと強く感じております。ありがとうございました。今後とも、若手の研究者を支援していただける本研究助成の継続を希望いたします。

そして、電力関係だけでなく幅広い分野の企業や研究者とも交流を深めていくことも願っております。今回の私のプロジェクトも前述した玉城教授との交流で生まれました。玉城教授は、別のプロジェクトで、ほぼ無人の離島における畜産のプロジェクトをされており、どのように電気を確保するかといった課題があり、それが本研究のヒントとなりました。他分野との横断的な技術交流が行われる機会が増えていくことで、革新的な技術が創造されることを期待いたします。

沖縄工業高等専門学校 安里 健太郎 助教

電気工学の未来