萌芽研究
電気自動車ユーザーの充電行動モデルに基づく充電ステーションの運用設計フレームワーク構築
2023年7月掲載
研究者 | 大阪大学 坂井 勝哉 特任講師(常勤) |
---|
※上記肩書きは、採択時のものです
また本HPでの当該情報の公開についてご了承をいただいている題目のみ掲載しています
費用と待ち時間のトレードオフに基づいて、電気自動車の急速充電器の最適な台数を検討。交通の観点から、充電インフラの最適化を目指しています。
新しいフィールドで挑戦するために
Q.「パワーアカデミー研究助成」に応募したきっかけをお教え下さい。
現在の所属である大阪大学のモビリティシステム共同研究講座では、電気自動車の普及に向けた様々な研究活動を行っています。その中でパワーアカデミーの研究助成公募がある話を伺いました。私の専門は土木計画学の交通工学であり、交通ネットワークでの渋滞メカニズムや、その解決策に関する研究を行っていましたが、電気自動車をターゲットとする現所属に移ってからは、交通×電気という学際的な位置で新たな知識を蓄えつつ研究活動を行っていました。そこで、新しいフィールドで挑戦できるというメリットに魅力を感じ、電気工学分野である本研究助成に応募しました。
どこに何台の急速充電器を置けば最適か
Q.研究内容をお教え下さい。
電気自動車の急速充電インフラを交通の観点から最適化する研究です。皆さんご存じのとおり、電気自動車の航続距離はガソリン車と比べると短いため、長距離の移動をする時には経路上で充電する必要があります。どこに、何台の急速充電器を置けば最適なのでしょうか?充電器の数を増やすとインフラ費用が増えます。充電器の数が少ないと充電をするための待ち時間が長くなります。このトレードオフに基づいて、適切な充電器の数を決めることができます。また、充電インフラの設計によって電気自動車の交通流が変化するため、交通渋滞の状況が変わるという点も重要なポイントになります。
交通渋滞の多少で最適台数は異なる
Q.現在までの研究成果と今後の展開についてお教え下さい。
本助成研究では、充電スポット毎の最適な充電器数を求める最適化のモデルを構築しました。このモデルでは、充電スポット毎の魅力度(充電中の待ち時間をその場所で有効活用できるか)を定義して、充電器の配置によってドライバーの行動が変容することも含めた定式化を行い、充電スポットで発生する待ち時間と、道路上での渋滞による遅れ時間を表現できる交通ネットワーク配分モデルを用いました。その結果、交通渋滞が少ない場合には、魅力度の高い場所にたくさんの充電器を配置することが望ましいという定性的な結論を得ることができました。しかし、交通渋滞が多く発生する場合には、必ずしも魅力度の高い場所に充電器を配置することが最適とは限らず、更なる詳細な分析が必要です。
未来のEV社会の実現へ向けて
Q.最後にひとことお願いします。
電気自動車は学際的な分野です。電気自動車がもっと普及するためには、どこでも簡単に充電できるようにすることが大切です。この大切な充電器をどこにどう置くかは、電気を学ぶ人にとっても、他の分野に興味がある人にとっても、すごく意味のあることです。「充電」によって(物理法則に従って電気が流れる)電気ネットワークと(人間の行動による)交通ネットワークが繋がるのが研究として面白いポイントだと思います。電気工学、都市計画、データ分析といった多様な技術を適用し総合的な解決策を導き出す研究ですので、未来のEV社会実現へ向け、ぜひこの分野の研究に挑戦してみてください。