電気の施設訪問レポート vol.33
沖縄電力「南大東電業所」を訪問しました
2026年3月31日掲載
2025年12月、パワーアカデミー事務局は沖縄県島尻郡南大東村にある南大東電業所を訪問しました。南大東電業所は、沖縄本島の東方に浮かぶ離島・南大東島全域の電力供給を担う施設です。今回の訪問では、太平洋の絶海に位置する孤島ならではの電力事情と、台風被害を抑えるために導入された可倒式風力発電システムについてレポートします。
- 太平洋の孤島「南大東島」とは
- 島内の電気事業を一括で運営する「南大東"電業所"」とは?
- 島のくらしを守る「災害対応の取り組み」
- 強風に耐えるのではなく強風を避けるー可倒式風力発電
- 「南大東電業所」をご案内いただきました
- 編集後記

太平洋の孤島「南大東島」とは
まずは南大東島についてご紹介します。台風情報で「南大東島の南○○○kmの海上を...」という表現を耳にしたことがあるかもしれません。南大東島は沖縄本島の約360km東方に位置し、周囲約20.8kmの石灰岩の急崖や岩場に囲まれた、内部がすり鉢状の平地となる離島です。浅瀬や入江がないため船は直接着岸できず、人や物資は港でクレーンにより荷揚げされます。気候は年中温暖で暮らしやすい一方、夏から秋にかけて台風の接近・直撃が多く、暴風や高波による被害が全国ニュースになることもあります。
島は1900年(明治33年)1月23日に東京・八丈島からの開拓移民によって本格的に開かれ、2025年に入植125周年を迎えました。人口は約1,200人で、小・中学校は1校あり、進学希望者は、沖縄本島へ移住して進学しています。島と本土は小型プロペラ機と定期船で結ばれており、内部の平地はサトウキビ畑に覆われ、サトウキビ栽培が基幹産業です。南大東電業所の隣にも製糖工場があり、外洋に囲まれた孤島ならではの美しさと、島独自の暮らしや文化が今も息づいています。

南大東島の面積は約30.54km2で、東京都世田谷区(約58.1km2)の約半分の大きさです。
島内の電気事業を一括で運営する「南大東"電業所"」とは?
今回パワーアカデミー事務局が訪問した南大東電業所は、南大東島全島の電力供給を担う施設です。「電業所」とは、発電、送配電、契約者向けサービスなど電気事業を一括して行う事業所を指します。南大東島は完全に独立した電力系統のため、電業所内で電気事業が完結する点が特徴です。
沿革として、同電業所は村営で運営されていましたが、1970年(昭和45年)に全島点灯を達成し、1972年(昭和47年)に沖縄電力株式会社(以下沖縄電力)(当時の琉球電力公社)へ移管されました。発電設備はディーゼル発電機と可倒式風車を併用し、定格電圧6600Vで直接配電網へ供給しているため変電所は設けられていません(一般家庭へは柱上変圧器で200Vまたは100Vに降圧)。
職員は所長を含む7名体制で、所長1名は沖縄電力所属、残る6名の所員はグループ企業の沖電企業株式会社(以下沖電企業)所属です。そのうち1名が監督を担い、5名が3交代で発電所運転業務を行い、発電所運転員が契約者向けサービスも兼務しています。また配電設備起因による停電が発生した際は非番の所員が修繕対応しています。配電設備の保守業務は沖縄電力の那覇支店が担当し、協力会社の株式会社東江電気工事(以下東江電気工事)が工事を請け負っています。
発電から契約者サービスまでを一貫して担う仕組みは、島内の電力供給を守るという強い使命感と、地域に密着したきめ細かな運営につながっています。

電業所の職員と東江電気工事のスタッフ。20代から60代まで各年代が満遍なく在籍し、南大東島の電気を守っています。

南大東電業所の上空から撮影したパノラマ写真。左側に、南大東電業所と製糖工場があり、右側に、月見池と瓢箪池が見えます。瓢箪池の水は電業所で使用する冷却水の一部として利用されています。
島のくらしを守る「災害対応の取り組み」
南大東島は本州と比較し海水温の高い南に位置しているため、台風の勢力が非常に強いまま到来する傾向にあります。そのため台風接近中は復旧作業が困難を極め、台風による設備被害が大きく、長期停電や生活の支障が生じやすくなる傾向にあります。実際に約一週間の停電を余儀なくした事例もあります。
対策として、台風接近前に配電設備の巡回を行い、停電の起因となりそうな不具合設備については、迅速に改修するように努めています。また、沖縄電力の配電部門では、被害復旧支援システムを活用し、現場状況を配電用スマートフォンから即時共有することで、関係部署との密な連携が可能となっています。これにより、被害の未然防止や早期復旧に取り組んでいます。台風の被害が大きくなることが予想された場合は、沖縄電力本島より人員、資材、食料の応援が行われており、県や自衛隊と連携することもあります。台風時は職員が電業所に泊まり込んで復旧対応にあたっています。
また、離島ならではの課題として、ディーゼル発電機の燃料を週1回の定期船で搬送しており、夏の台風や冬のしけで入港できない事も想定されるため、電力供給に支障が出ないよう燃料備蓄には注意を払っています。台風通過後も、しけが続くことが多いため燃料の備蓄拡充に努めています。

強風に耐えるのではなく強風を避けるー可倒式風力発電
南大東島の南端付近には2011年(平成23年)2月に設置された可倒式風車が2基(245kW×2基)あり、CO2排出削減と燃料費削減を目的に導入されました。可倒式は台風の多い沖縄に適した工夫で、台風接近時に風車を倒して被害を未然に防げる点が大きな利点です。国内では唯一沖縄電力が所有している発電設備となります。初導入は2009年に波照間島(はてるまじま)であり、2025年現在沖縄電力管内の4つの離島(南大東島、波照間島、粟国島、多良間島)で導入されています。
南大東島の風力発電は、ピーク時に島の需要の約1割を賄う出力を持ちます。最低風速4m/sから発電可能となり、出力変動はあるものの、CO2排出量及び燃料消費量削減に貢献しています。風車を倒す作業は風が弱い時に行い、油圧装置でワイヤーを巻いてゆっくり倒す方式で、準備を含め約2時間、実作業は約1時間、2名で実施します。パトロールは週1回実施し、手間はかかるものの、燃料削減やCO2低減といった成果があり、地域の防災力向上や再生可能エネルギー導入への意識醸成にも寄与しています。

高さ53m(ブレード含)を誇るフランス製の可倒式風車です。2枚のブレードを持ち、風向きによって自動で方向転換をしていました。

風車の下部です。青い箱のような器具が油圧装置となります。こちらを動力源としてワイヤーを巻きとり、風車を傾倒します。

風車傾倒時の写真。90度近く傾倒することが可能で、その結果、メンテナンスも地上近くで行うことができます。
「南大東電業所」をご案内いただきました
当日ご案内いただいた南大東電業所の施設および業務の様子をご紹介します。
電柱の運搬

穴掘建柱車を使用して電柱を電柱運搬車に乗せる作業を見せてもらいました。3名一組で、老朽化した電柱を取り替えるなどの作業を行います。
東江電気工事・現場事務所

電業所敷地内には、配電工事を請け負う東江電気工事の現場事務所があります。沖縄本島にある東江電気工事本社とシステム連携しており受託した工事を迅速に行える体制となっています。また工事に必要な資材や工具、機材などが保管されています。
重油貯蔵タンク
定期船で運ばれた重油はドラム缶(写真左)で運ばれ、重油貯蔵タンク(写真右)に収蔵されます。ちょうど取材日の前日に運ばれていました。燃料は取り扱いが容易でディーゼル発電に適した「A重油」を使用しています。


廃電柱

廃棄となった電柱も、電業所の敷地に置かれます。不要になった電柱は産業廃棄物として適切に管理・処分されています。
ディーゼル発電機

発電機は4台あり、最新の発電機が9号機で2025年7月に運転を開始しました。9号機は650kWの発電出力を誇ります。「A重油」を燃料としてディーゼル・エンジンで発電を行っており、可倒式風力発電を除いて、島内電力のほとんどを4台の発電機が担っています。
ラジエータ(冷却装置)

ラジエータ(冷却装置)は、発電で発生した余分な熱を外部へ放散し、機器を適正温度に保つ役割を果たす装置です。
煙突

発電所の煙突はディーゼル・エンジンの排気ガスを大気中へ放出する設備です。目に見える煙はほとんどありません。
配電設備

電業所内にある電柱から、島全島に6600Vで配電が行われます。その後、一般家庭では柱上変圧器で200Vまたは100Vに降圧され利用されます。
発電制御室
発電機をコントロールする制御室です(写真左)。2025年7月に運転を開始した9号機は、パソコンによるデジタル制御が可能になりました(写真右)。


電気室

変圧器、遮断機、計器類などの電力系統を調整する設備が電気室におさめられています。
契約者向けサービス

御来所いただいたお客様からの電気料金の収納業務を行うこともあります。契約・請求・各種手続きに関する問い合わせであればコールセンターを案内しています。
編集後記
羽田から那覇経由で半日かけて南大東島へ到着しました。取材日は抜けるような青空と海が広がっていましたが、台風が来れば簡単に孤立する、まさに絶海の孤島です。その厳しい環境のもとで、島の電力事業者が示す強い使命感や、可倒式風車をはじめとする数々の技術的工夫が強く印象に残りました。
最後に、電気工学を志す方々へ向けて、取材にご協力いただいた皆様からのメッセージを紹介します。
「南大東島は小さな島ですが、再生可能エネルギーの導入に努め、地球温暖化防止にも取り組んでいます。地球を守る新たな電力技術に挑戦してください。」(沖縄電力・前川辰二所長※写真左)
「自分たちが街の電気をつくっているという喜びを感じてほしいです。」(沖電企業・新田和也係長※写真中央)
「災害時に復旧して電気が灯る瞬間には大きなやりがいがあります。今後はAIの進歩で人的負担が軽くなることを期待しています。」(東江電気工事・福原博文配電リーダー※写真右)

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