人材ニーズの高い電気工学
電気工学を学んだ人たちは、本当に就職に強いのか?どのような業界に求められているのか?転職はできるのか?こうした疑問を人材採用・人材育成の専門家である、就職情報サイト「マイナビ」高橋 誠人編集長に伺いました。電気工学に関する、株式会社マイナビによる調査データと共にご紹介します。
※本インタビューは、2026年4月に行いました。
プロフィール
2002年、株式会社マイナビに入社。キャリアサポーターとして10年間マイナビの学生向け広報業務に携わり、関西圏の大学、短大、専門学校での就活支援講座を多数行うなど、学生の就活サポートを精力的にこなす。その後営業の現場で、企業の採用コンサルティングに幅広く関わる。熊本支社長、鹿児島支社長、兵庫支社長を経て、2018年7月より現職。日本キャリア開発協会会員(CDA)。
過去から未来まで、電気工学が「売り手市場」であり続ける理由
最初に申し上げますが、電気工学をはじめとする工学系学生は、過去から現在までずっと就職に強い「売り手人材」です。この傾向は、技術革新が進む未来においてさらに加速するでしょう。
現在の新卒就職市場を見ると、企業の採用選考は理系学生を優先して動く傾向が顕著です。最新の調査(マイナビ調べ)によれば、3月1日時点の内々定率は理系が文系を15%以上も上回っています(図1)。特筆すべきは、学生側の満足度の高さです。学科系統別の「就職内々定満足度」調査において、機械・電気・電子系統の学生は非常に高い数値を記録しています(図2)。これは単に内定が出やすいだけでなく、学生自身が「納得感のある進路」を選べている証といえるでしょう。
これほどまでに工学系人材が強い理由は、日本を支える基幹産業である製造業において、電気があらゆる技術の土台だからです。どんなに優れた機械もAIも、電気がなければ動くことはありません。「製造業が世界を支え、その中心を電気系人材が担っている」事実は、高校生にぜひ知ってほしい真実です。
今後、本格的なAI時代が到来しますが、AIを動かすコンピュータや半導体の進化を支えるのもまた電気工学の領域です。次世代の世界を創り出す貴重な人材として、電気工学を学ぶ方々の活躍の場は大きく広がっています。

図1 内々定保有率の推移・文理別
26年卒の文系の内々定保有率が35.2%に対し、理系は55.5%。
出典:2026年卒 大学生キャリア意向調査3月1日<就職活動・進路決定>

図2 内々定先企業の満足度(2025年卒、2026年卒)
現在の内々定先企業にはどの程度【満足】しているかという調査を5段階で評価。機械・電気・電子系は、トップの71.8%。
出典:「マイナビ 2026年卒内定者意識調査」
メーカーの枠を超えて、商社、金融まで広がる電気系のキャリア

電気系の学生を求める業界は、今や製造業に関わらず全産業へと広がっています。特に現在はSDGsとも深く関わる「GX(グリーントランスフォーメーション)」や「脱炭素社会」への転換期です。企業が持続的に発展し、社会から信頼されるためには、製品やサービスがいかにクリーンであるかが問われます。その次世代の製造ステージを形作るのは、今、電気工学を学んでいる方たちに他なりません。例えば自動車産業においても、自動車は単なる「移動手段」から、電気・情報・ソフトウェアを核とした「モビリティ(※1)」へと変貌を遂げており、電気の力が進化の鍵を握っています。
また、ここ1~2年で急速に熱を帯びているのが半導体業界です。人口減少が進む日本においてAIの活用は不可避であり、それを支える半導体は、国家戦略レベルで重要視されています。10年前には想像もできなかったようなスピードで、電気系の専門性は価値を高めています。さらに、商社や金融機関といった非製造業においても電気系人材は、文系業務をも網羅できる、代えのきかない専門人材として、非常に幅広いキャリアの選択肢を提示されています。
(※1)モビリティとは、移動手段(乗り物)だけでなく、移動を支える技術やサービス全般のこと。
AIには代替できない領域。デジタル化が進むほど価値が高まる「電気」の専門性
現代は大きな時代の転換期にあります。マイナビの新卒サイトに掲載されている約3万社の企業のうち、今や「終身雇用」を明言している企業はごく僅かです。大手企業であっても、自らのキャリアを会社任せにする時代は終わりました。そうした中で重要になるのが、時代が変わっても変らない「専門性」です。
例えばITの世界では、これまで人間が行っていたコーディング作業をAIが瞬時にこなすようになりつつあります。しかし、電気という物理現象の基礎知識や、エネルギーを制御する仕組みそのものは、どれほど効率化が進んでも覆ることはありません。「電気主任技術者」のような資格に裏打ちされた専門性は、人生100年時代を生き抜く強力な武器になります。中途採用市場においても、転職情報サイト「マイナビ転職」では「電気・電子・半導体」分野のニーズはITエンジニア以上に景気変動の影響を受けにくく、2025年、2026年の3月度において求人件数は前年同月比160%以上(※2)と、常に最高水準の求人数を維持しています。一度身につけた電気工学の素養は、将来にわたって自身の市場価値を担保してくれるはずです。
(※2)出典【2026年3月度】正社員の求人件数・応募数推移レポート
【2025年3月度】正社員の求人件数・応募数推移レポート
電気工学はすべてを動かす「土台」を創る、一生モノのチカラ
最後にお伝えしたいのは、女性技術者の可能性と、進路を検討する上での視野の広さについてです。残念ながら、教育現場や社会には「工学系は男性の分野」という無意識のバイアスが未だに残っています。しかし現実は、企業は今、女性ならではの視点を持つ技術者を切実に求めています。電気工学を学んだ女性のニーズは驚くほど高く、その希少性はキャリア形成において大きなアドバンテージとなることを強調させてください。
また、電気工学系への進学は、保護者の方々にとっても非常に安心できる選択です。物価高や不安定な経済情勢が続く中、日本を代表する企業や安定した社会インフラ業界への道が確約されているこの分野は、まさに「親孝行な学科」といえるでしょう。
電気はあまりにも身近すぎて、普段はその重要性を意識しにくいかもしれません。しかし、手元のスマートフォンから電気自動車、そして未来のAI社会に至るまで、すべては電気工学という盤石な土台の上に成り立っています。電気工学で専門性を磨くことは、充実した人生を歩むための大きな強みと言えるでしょう。








