機械工学は、電気工学と共に古くから日本のモノづくりを支えてきた学問です。機械の原理・構造を理解し、新しい機械を生み出すことを目的としています。具体的には、熱力学、機械力学、流体力学、材料力学の4つの力学を基礎とした機械の設計技術を学びます。現在、多くの機械は電気駆動であるため、電気工学との関わりも深く、機械工学の授業でも電気工学の基礎を学ぶ場合があります。

Honda ASIMOに見る、電気工学と機械工学

「ASIMO」は、2000年にHondaが発表した、世界に類をみない二足歩行ロボットです。この人間型二足歩行ロボットの実現には、電気工学と機械工学の技術が深く関わっています。ロボットにおける機械工学は、部品や材料の選択・成型を行い、主に設計に関わる「材料力学」。空気抵抗や摩擦について考察する「流体力学」。歯車やピストンなど運動性能に関わることを学ぶ「機械力学」などが貢献しています。ここでは電気工学が、人間型二足歩行ロボット・ASIMOの最先端機能にどのように貢献しているのかを見てみましょう。
(協力:Honda)

各機能の詳細

1. トレイを運搬する(道具を使った動作)

ASIMOの特徴は本体に搭載されている各種センサーとプログラミングを組み合わせて、様々な人間的動作を実現していることです。これにより、握手をしたり、障害物を避けたり、ボールを使うなどといった動きが可能になっています。
トレイ運搬の場合は、ASIMOの頭部に搭載されたアイカメラ(視覚センサー)と手首の力覚センサー(力を計るセンサー)で人の動きを検知することにより、相手の動きに合わせて確実にものの受け渡しができます。

目標地点へ置かれます

また、力覚センサーが、トレイをテーブルに接地したときの手首への力のかかり方を判断することで、確実に目標地点へ、トレイをテーブルに置くことができます。 ASIMOに搭載されているセンサーは、技術の粋を集めた各種・高性能センサーです。これらのセンサーは、電気工学における制御技術によって実現しています。

2. あいさつ(認識機能)

ASHIMOの挨拶

人が手を振って挨拶すると同じように手を振る、指示された場所に移動する、顔を認識して名前を呼ぶ、等々。ASIMOは、人の姿勢やしぐさの意味を理解して自律的に行動できる知能化技術を搭載しています。
これらは認識機能と呼ばれ、電気工学における最新の信号処理技術(ディジタル信号処理 )が支えています。

3. 自然に近い歩き・走り

ASHIMOの歩き・走り

ASIMOの大きな魅力のひとつとして、人と遜色ない歩き方や走り方をすることです。速さやフォームが自然に変わる、屈伸運動は、高性能モーターの実現によって可能となりました。モーター制御は、電気工学の重要な技術のひとつです。
また、脚構造においては、CAE(コンピュータエンジニアリング)を活用し、慣性、応力、たわみ等の機械特性を解析することで成立させています。

4. 動力源

バッテリー

ASIMOの大きな魅力のひとつとして、人と遜色ない歩き方や走り方をすることです。速さやフォームが自然に変わる、屈伸運動は、高性能モーターの実現によって可能となりました。モーター制御は、電気工学の重要な技術のひとつです。
また、脚構造においては、CAE(コンピュータエンジニアリング)を活用し、慣性、応力、たわみ等の機械特性を解析することで成立させています。

ASIMO開発者に聞く。「ロボットにおける、電気工学の重要性」

ASIMO は、電気工学の力なくしては存在できません。

Honda ASIMO開発スタッフアンケートより

ASIMOは、動作そのものを起こすモーターおよびドライバはもちろん、外部の状況を知るためのカメラ、障害物センサーや、自分の状況を知るための傾斜計やG センサーなど、多種多様のセンサーが搭載されています。そして、それらの入力情報を処理する各種コンピューター類やすべてを支えるバッテリーと電源システムなど、ASIMO は電気工学の力なくしては存在できません。
今後、電気工学に期待することは、ASIMO に搭載されているすべての部品の高性能化を支えていくことです。処理性能はもちろん、消費電力や大きさ、重量なども重要です。まったく新しい技術の登場も期待されます。たとえば自在に形が変わる回路基板などがあれば、どこにでも回路が搭載できるようになり、大きな能力向上につながるかもしれません。他にもいろいろあると思いますので、ぜひ、電気工学に携わる人は、大きな想像力を持って挑戦してください。

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