2014年11月、パワーアカデミー事務局は中部電力と北陸電力の電力系統を連系している南福光連系所(富山県南砺市※とやまけんなんとし)を訪問しました。南福光連系所は、同一周波数(60Hz)の電力系統を二組の交直変換装置で連系しており、変換装置の直流側出力相互を直接接続するBTB(Back to Back:背中合わせの意味)という方式をとっています。本レポートでは、建設の背景から連系所の意義、数々の電力機器を紹介します。

電力の安定供給を担う、地域間連系設備

全国の電力会社では、電力の安定供給と供給信頼度の向上を図るため、隣接する電力会社と送電線等を接続し、お互いに連携しながら電力供給業務を行っています。この隣接する電力会社と相互接続する電力設備は、総称して「地域間連系設備」と呼ばれています。“連系”は電力系統を連ねるという意味でこの字を使っています。

周波数の異なる東日本(50Hz)と西日本(60Hz)を連系する箇所には、周波数変換装置を設置しており、現在は長野県の新信濃変電所と静岡県の佐久間周波数変換所、東清水変電所の3箇所あります。地域間連系設備には周波数変換装置(FC)だけでなく、電力会社の間を連系する交流送電線も含まれます。また、以前ご紹介した電源開発・北本連系設備も、北海道電力と東北電力の間を直流で連系する地域間連系設備です。

そして、今回ご紹介する南福光連系所は、中部電力および北陸電力間をBTBでつないでいる、地域間連系設備です。BTBという聞きなれない設備について、ご紹介しましょう。

全国の電力会社間の接続状況

※周波数変換所については、身近な電気工学第10回『周波数変換の謎、徹底解剖。』を、北本連系設備については、電気の施設訪問レポートvol.8をご覧ください。

中部~北陸電力間を結ぶ、南福光連系所がつくられた背景

南福光連系所ができるまでは、中部電力と北陸電力は関西電力を介して間接的に連系していましたが、供給信頼度の向上と、両者間の相互融通能力の拡大による電力の安定供給を目的に、中部電力と北陸電力の間を直接結ぶ連系送電線の建設を計画しました。

この連系送電線が構築されると、下記の地図をご覧になれば分かる通り、中部電力と北陸電力と関西電力の3社にまたがる系統となります。日本の電力系統が交流連系であることはご存じだと思いますが、この中部電力と北陸電力との連系を交流送電線で行うと、関西電力を含めた3社間の大きな交流ループ系統が形成され、電力潮流(電力の流れ)の調整が困難になるのです。また、短絡容量が増大してしまい、南福光連系所の新設以外にも広範囲に既設の送電線・変電所などの改修も行わなければならず、工事が大規模になってしまいます。そこでこうした問題を避けるため、潮流調整能力を持ち、短絡容量を増大させない交直変換装置を介して直流連系する方式を採用することが決定されました。直流連系では、電力の量と方向を迅速かつ容易に制御できるため、系統故障時の緊急電力融通、交流系統の周波数制御や安定度向上に効果的な役割を果たすことができます。

連系の概要

日本で唯一のBTB

交直変換装置とは、簡単に言えば、交流電力と直流電力とを変換する装置のことです。南福光連系所では、交直変換装置にサイリスタという半導体素子が採用されており、これによって電力の変換を行います。

南福光連系所では、交直変換装置を2つ用いて交流→直流→交流と変換して、交流系統同士を連系しています。このように2つの交直変換装置を1箇所に設置して、交直変換装置同士が背中合わせとなるような設備構成となっていることからBTB(Back to Back)と呼ばれています。周波数変換所もほぼ同様の装置構成であるBTBの一種ですが、両端の周波数が異なる場合、特に区別してFC(Frequency Converter Station)と呼ばれています。日本は世界的に見れば同一国内に2つの周波数を有する特殊な国であるため3カ所ものFCがありますが、南福光連系所は国内唯一のBTBになります。

BTB連系の概要

中部~北陸電力間を結ぶ、南福光連系所の設備

それでは、当日ご案内いただいた、南福光連系所の主な施設や特徴をご紹介します。下記の写真をご覧になれば分かる通り、中部電力の南福光連系所と北陸電力の南福光変電所が隣接している電力施設です。1993年より工事が開始され、1999年3月に運転が開始されました。

中部電力の「越美幹線」と、北陸電力の「加賀福光線」「能越幹線」

中部電力の「越美幹線(えつみかんせん)」(亘長 約110km)、北陸電力の加賀福光線(亘長 約13km)が新設されました。どちらも500kVの送電線です。その連系点に南福光連系所はつくられました。写真は中部電力の500kV「越美幹線」です。500kV送電線の巨大な鉄塔に圧倒されます。

電力変換を行う「サイリスタバルブ」

交流を直流に、または直流を交流に変換する役割を果たすのがサイリスタバルブで交直変換装置の核となっています。サイリスタバルブは1相あたり1台、3台1組で交直変換を行います。

7個の素子から構成される「サイリスタバルブモジュール」

写真は、サイリスタバルブを構成するモジュールの外観です。1つのモジュールに光で電子を励起してゲート電流を流す光直接点弧サイリスタ素子が7個直列に並んでいます。サイリスタバルブは図のように、1相4アームの112素子からなり、1アームは4モジュール・28素子から成り立っています。

サイリスタバルブを冷却する「純水冷却装置」

サイリスタバルブが運転中に発する熱を除去するための冷却装置です。冷却媒体は電気的な絶縁を確保するために純水が用いられています。写真左は、バルブホール(サイリスタバルブが設置されている区画)内部に設置されている純水冷却装置で、写真右は屋外に設置されている、風冷冷却器です。風冷冷却器はサイリスタを冷却した際の熱で温度の上がった冷却水(実際には寒冷地であるため冷却水と熱交換した不凍液)を冷やします。

電流を平滑化する「直流リアクトル」

サイリスタバルブにより変換された直流の脈流(交直変換時に発生する周期的な電流変動)を少なくする装置です。

中間電圧方式でコストダウンをはかる「連系用変圧器」

南福光連系所につながる送電線は、すべて50万ボルトの超高圧送電線です。これらを連系用変圧器で特別高圧まで降圧しています。

設備の開発面積を縮小した「GIS(ガス絶縁開閉装置)

GISはコンパクト、かつ環境調和性に優れた設備です。さらに、連系所のある南砺市のように冬場に雪が2~3m積もるところでは、GISのような密閉機器が信頼度・保守面から最適です。

高調波を吸収する「交流フィルタ」

直流変換装置は交流をスイッチングして、直流に変換するため、その際に高調波が発生します。その高調波を吸収して、電力系統に流出しないようにする装置です。高調波が系統に出て行くと、機器の加熱や焼損といったトラブルが起きる可能性もあります。
一般にサイリスタを用いた交直変換設備は無効電力を消費するため、これを補償する多数の電力用コンデンサが設置されます。しかし、南福光BTBでは、連系送電線の亘長が長く、線路の充電容量で十分まかなえるため、分路リアクトルのみで無効電力制御を実施しています。

編集後記

富山県と石川県の県境の緑豊かな医王山県立自然公園内に位置する南福光連系所。自然と完全に調和した佇まいが印象的でしたが、中へ入ると最先端の電力機器がひしめいていました。中でも印象的だったのは、サイリスタバルブです。防塵服に着替えエアーシャワーを浴びてバルブホールに入ると、改めて巨大な電力機器でありながら、実は繊細な半導体素子であることを思い知りました。

また連系設備の定期点検の時期は、現場で働く方々は2週間以上泊まり込みになるそうです。電力設備の保守現場の方々のご苦労や労力があって、私たちのもとへ電気が届けられているのだと感じました。

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