ホバークラフトで国技館を遊泳歩行

全国大会唯一ホバークラフトを成功させる

"ホバークラフト"とは、空気の力を利用して船体を浮上させ走行する、水陸両用の乗り物のことです。このホバークラフトの原理を、ロボットに取り入れようという試みは、近年、毎回出てきますが、成功までに至るケースはほとんどありませんでした。しかし、今大会、その前例を打ち破ったロボットが出現しました。福井高専の『Air Walker(エアーウォーカー)』です。

全参加チーム124チーム中、ホバークラフトにチャレンジしたのは福井高専含めて2校のみ。全国大会へ進んだのは、福井高専だけです。福井高専の皆さんに、ホバークラフトの原理を伺いました。

「ロボットが風を送り、その風によって、乗り物の底部に取り付けられた3つの浮き輪で台車が浮き上がるという構造です。風は家からもってきた掃除機で起こしています(笑)。最終的には250kgの重量まで浮かせることができました。しかも低コストですよ(笑)」。

1回戦では、順調に2足歩行を成功させて連結ゾーンへ。そして、チームメンバー3人がホバークラフトで両国国技館を遊泳歩行!手を振って、大きな歓声を浴びていました。タイムも1分45秒と完走して、見事突破。残念ながら、2回戦はホバーの不調で完走できませんでしたが、素晴らしいパフォーマンスで会場を沸かせてくれました。

バッテリー、電力変換、制御技術、電気工学の工夫が満載です

Air Walkerのシールが貼られている箇所が、
苦労してつくったインバーターです。

ホバークラフトの製作ははじめてだったという福井高専の皆さんに、一番苦労した点を伺いました。

「特に苦労したのは全体設計です。ホバーで浮かすには、大型のバッテリーが必要になるため、全体の機構設計にはアタマを悩ませました。何度もやり直しましたよ」。

では、電気工学関連ではどんな点で苦労して、工夫を施したのでしょうか。

「ホバークラフト用モーターに対応した、インバーター(電力変換装置)を使用したことでしょう。直流24Vを交流100Vに変換する高出力インバーターで、ホバークラフト用モーターを制御することができました。大型バッテリーによる大電流をうまくいかすことができました。完成するまでは大変でしたが報われました(笑)」。
また、自作(!)のギアボックスを用いて、モーターのトルクや速度も必要に応じて調整可能にしました。その他にも、鍵に使用したLEDライトの制御など、福井高専の皆さんは、数々の電気工学技術を使用していました。

「ロボット製作を通して制御回路の重要性が認識できたため、電気工学の分野に興味が出てきましたね」と電気工学について、現在の率直な感想を語って頂きました。

チームメンバー3人が国技館を浮く!ホバークラフト。

取材後記

3年目となる「ロボコン特集」はいかがだったでしょうか。わずかのミスも許されない今年のスピード勝負は、モーターや細かい動作の制御など、電気工学の技術が更に重要となっているように感じました。ご感想・ご質問などございましたら、お気軽にお問い合わせフォームやメールでお送り下さい。最後になりましたが、お忙しい中、アンケート及び取材・撮影にご協力頂いた各出場チームの皆様、毎年多大なるご尽力を頂いているロボコン事務局様に心より感謝申し上げます。

(パワーアカデミー事務局)

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