産学交流会 OBインタビュー 博士課程で自分を磨けば、キャリアの選択肢も大きく広がる。

パワーアカデミー産学交流会は、2020年で第10回目の開催となります。そこで、これまで参加してくださったOBの方に、参加してよかったこと、得たことなどを振り返っていただきました。

国立大学法人 東京農工大学
大学院生物システム応用科学府 特任助教
博士(工学)
根岸ねぎし 信太郎 しんたろう さん

プロフィール

2018年3月
大阪府立大学工学研究科 電気・情報系専攻 電気情報システム工学分野修了
2018年4月
NECデータサイエンス研究所入社
2018年9月
同社退社後、大学院生物システム応用科学府特任助教着任

将来の進路の不安を抱きながら博士課程へ

根岸さんはパワーアカデミー産学交流会に計3回も参加されたそうですね。

根岸:ええ、修士1年、2年と博士課程2年の時に参加しました。きっかけは、当時、指導してくださっていた先生が勧めてくれたことです。最初に参加したのは第3回の交流会でしたが、会場だった新潟へ行くのも初めてでしたし、参加するのがとても楽しみだったのを覚えています。

どのようなことを期待して参加されましたか。

根岸:博士号を持ちながら、アカデミアではなく産業界で活躍されている先輩方のお話を聞きたいと思いました。当時、私の周囲にはそうした方がいなかったし、それまで会ったこともなかったので、博士号を取得して産業界で働くとはどういうことだろうと感じていたからです。

進路に対する漠然とした迷いが、パワーアカデミー産学交流会参加のきっかけに。左奥が根岸先生。

多様な選択肢があることを知り、ご自身の未来が大きく開けたと実感されたそうです。

ご自身の将来に対して不安をお持ちだったわけですか。

根岸:そうです。私は、実は学部時代は経営工学系の研究室に所属していました。ただ、本当は電力システム系の研究室に行きたかったのです。そこで修士に進む段階で思い切って研究室を変えるという選択をしました。おかげで本来取り組みたかった電力システム系の研究室に入ることができたのです。回り道はしましたが、やっと初心を貫くことができた喜びは大きかったです。ただ、修士の2年はあっという間ですし、就職活動を考えれば十分な研究時間も取れません。回り道をした分、腰を落ち着けてじっくりと研究に取り組みたいと考え、修士に進んだ段階で博士課程に進むことも決めていました。しかし、一方で、果たして博士課程を終えてからでもちゃんと就職できるか、社会で活躍する場があるだろうか、という不安も少なくはなかったです。

いわゆる「ポスドク問題」もありますね。

根岸:高校時代に「ポスドク問題」のことは耳に挟んでいたので、気にはなりました。両親も、博士課程で学ぶことは応援してくれたのですが、その先についてはやはり懸念していたようです。友人からは「博士号持ちは企業から敬遠されるらしい」「企業からすると、博士号持ちは使いづらいようだ」というネガティブな噂を聞きましたし。そうした不安を解消するためのきっかけを、パワーアカデミー産学交流会で見つけることができればと思いました。

大切なのは自分ならではの能力や知見を磨くこと

実際に参加されて、そうした不安は解消できましたか。

根岸:はい。博士号を持ちながら産業界で活躍されている方々と直接お話しすることができ、“博士=アカデミア”という固定概念がなくなりました。特に、企業の人たちが博士号取得者に対してどんなイメージを持っているか、忌憚のないお考えを聞けたのがよかったです。印象に残っているのは「博士号を持っているから期待するのではない。博士号を取得する過程で磨いたスキルや知見を、ビジネスの場でどう発揮してくれるか、という面で期待をしている」という言葉です。要するに大切なのは博士号ではなくて、あくまでその人ならではの能力ということです。おかげで自分にも産業界で活躍する場が開かれているという実感を得ることができました。

将来の選択肢が広がったという印象ですね。

現在は、東京農工大学大学院の特任助教として、環境省の委託研究に取り組んでいらっしゃいます。

根岸:その通りです。パワーアカデミー産学交流会で得た自信を胸に就職活動に臨んだのですが、公開・非公開を含めて多くの企業が博士号取得者を求めていることを実感しました。特にデータアナリティクス、AI、ICTといった分野では、博士号取得者を強く歓迎しているように感じます。また、自分の研究分野に固執せず、柔軟に考えることも大切だと思いました。例えばデータアナリティクスを専攻したわけではなくても、自分の研究の中で統計を取ったり数学的な解析を行ったりという経験があるなら、必ず活かすことができます。それこそが、博士号を取得する過程の中で身につけた、自分ならではの価値なのです。専門分野にこだわらず、幅広い分野に目を転じることで、活躍の選択肢はさらに広がると思います。

博士課程に進むと社会に出るのが遅くなるため、生涯賃金の面で不利では、という見方もあります。

根岸:その点は私も懸念していました。確かに一つの会社で勤め上げるとすると生涯賃金は抑えられてしまう可能性はあるかもしれませんが、現在は終身雇用を前提としたキャリアプランが絶対ではなくなりましたから、キャリアチェンジによって自分の価値を高めていくことは十分に可能です。その際、博士号を持っていることで難易度の高い会社の門戸も開かれるでしょうし、好待遇も得やすいでしょう。さらには国際学会や論文執筆等で培った語学力を活かして、グローバル企業で活躍することも可能です。収入面で不利ということはないでしょう。

皆さんにメッセージをお願いします。

「博士号=アカデミアととらわれず、柔軟に考えることが大切」と、キャリア選択についてメッセージを送ってくださいました。

根岸:博士号取得後のキャリアパスに、正解はありません。新卒で選んだ就職先がゴールとは限らないのです。私自身も最初に入社した企業は退職し、東京農工大学の教員公募のチャンスを活かして、現在のポジションを得ることができました。博士課程に進んだことで必ずしもキャリアの幅が狭くなるということはありませんし、自分を磨くことで、選択肢はいくらでも広げられます。ぜひ皆さんも臆することなく、博士課程取得に対してポジティブに取り組んでいただければと思います。

ありがとうございました。