超伝導体のまったく新しい応用研究、
ワイヤレス給電を進化させる高周波用途を開拓  山梨大学 關谷 尚人 准教授

2018年5月掲載

超伝導体を用いて電気機器を製作すると、一般的な銅線などに比べてエネルギー損失がほとんどゼロで大電流を流すことができます。しかし、こうした超伝導応用の研究・開発は、高周波領域の電気機器ではほとんど行われていませんでした。山梨大学の關谷准教授は、高周波領域における、ワイヤレス電力伝送技術(WPT※1)を切り口に、超伝導体の新たな可能性に挑みました。

(※1) ワイヤレス電力伝送技術については、身近な電気工学「未来は、コードやケーブルがなくなる?」もご覧ください

これまでにない研究アイデアの実現のために

Q.「パワーアカデミー研究助成」に応募したきっかけをお教え下さい。

山梨大学 關谷 尚人 准教授

WPTは、送受電コイルの距離を広く取って効率(伝送効率)よく電力を送るためには送受電コイルの導体損失を低減する必要があります。しかし、送受電コイルには銅線が用いられているため、従来技術ではこれ以上効率を改善することができませんでした。この問題を解決する唯一の方法が「超伝導体」の利用です。しかしながら、WPTが用いられる高周波では構造上、低損失を実現できない問題がありました。
そこで、高周波でも低損失を実現できる超伝導線材(高周波用超伝導線材)の研究に着手しました。このアイデアを実証するため、パワーアカデミーの萌芽研究に応募しました。超伝導線材の研究は費用がかかるため、こうした研究助成の存在は非常にありがたいです。

まったくの未開拓分野、超伝導線材の高周波応用分野の創出

Q.研究内容をお教え下さい。

高周波でコイルを使用する電力技術は、ワイヤレス電力伝送技術(WPT)以外にも、核磁気共鳴(NMR※2)を用いるMRI装置、核四重極共鳴(NQR※3)を用いる爆発物探知装置や不正薬物探知装置、アンテナやフィルタなどがあります。これらはすべて銅線を用いたコイルを使っています。そのコイルに「高周波用超伝導線材」を用いれば導体損失が大幅に低減し、従来では実現できなかった装置の性能改善が期待でき、様々な分野への貢献を実現できます(図①参照)。そこで私は、まず高周波用超伝導線材を開発して、将来的にはこれまで未開拓であった「超伝導線材の高周波応用分野の創出」を目指しました。そのための第一ターゲットが、ワイヤレス電力伝送技術というわけです。

(※2)核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance : NMR)とは、磁場中に置かれた原子核のスピンによって起きる共鳴現象のこと
(※3)核四重極共鳴(Nuclear Quadrupole Resonance : NQR)とは、スピンが1より大きい原子核に電気四重極モーメントがあることを利用した共鳴現象のこと。

世界最高クラスのQ値を達成、高周波用超伝導線材コイルを開発

Q. 現在までの研究成果と今後の展開についてお教えください。

山梨大学 關谷 尚人 准教授

提案する高周波用超伝導線材を用いたコイルのQ値(損失が低いことを表す指標)が銅を用いたコイルと比較して飛躍的に改善することを電磁界解析シミュレーションによって明らかにしました。また、原理確認試験では実装上の問題などから飛躍的なQ値の改善には至りませんでしたが銅コイルより4倍程度高いQ値が得られることを明らかにしました。これは、現段階で世界最高値です。
今後は実装上の問題を解決し、さらなるQ値の向上を目指します。また、様々なアプリケーションに超伝導コイルが利用できるか検討して、各種装置の性能改善を目指していきます。

幅広い視野を持てば、電気工学には大きな可能性がある

Q.最後にひとことお願いします。

パワーアカデミーの活動は、研究助成はもちろん、産学連携の促進など、大学での研究活動に足りない部分を補っていただける貴重な場だと思っています。特に産学連携は大学での研究がうまく企業ニーズにマッチングすれば大きく研究が前進し、実用化も期待できます。こうした良い流れが拡大する活動を継続して、大きな広がりを持ったアピール活動を期待しております。
学生の皆さんには、幅広い視野を持って研究に取り組んでもらいたいです。様々なものに興味を持ち、視野を広げておくことは新しいものを生み出すために非常に重要です。私自身、これまでマイクロ波超伝導フィルタを10年以上研究してきましたが、今回の着想に至ったのはワイヤレス電力伝送に興味を持ったのがきっかけです。広い視野を持てば、大きな可能性が生まれるでしょう。

山梨大学 關谷 尚人 准教授

2018年3月14日に開催された研究助成・成果報告会の様子。


電気工学の未来