萌芽研究
再生可能エネルギー、電気自動車、電力システムの協調制御手法の設計と実装
2017年5月掲載
いよいよ本格的な電気自動車時代が到来しようとしています。電気自動車の特長のひとつとして、電力エネルギーを消費すると同時に貯蔵源となることが挙げられます。電気自動車が普及をとげた場合、この貯蔵された電力エネルギーは大きな可能性を秘めています。そこで東京都市大学の太田准教授は、再生可能エネルギーおよび送配電ネットワークとどうすれば電気自動車はうまく協調できるのか、さまざまなシーンをシミュレーションすると共に、バーチャルシステムもつくりあげました。
※肩書きは採択時のものです。
パワーアカデミーは研究課題を継続して進める支え
Q.「パワーアカデミー研究助成」に応募したきっかけをお教え下さい。
2008年のパワーアカデミー設立時に、電力・エネルギー分野の中長期的研究課題を網羅する研究マップ拡充・発展のための調査研究の公募があり、今回の萌芽研究の元となる構想を研究マップに入れていただきました。その後、特別推進研究のメンバーの一員として実際に研究を進める機会もありました。2015年より東京都市大学電力システム研究室を結成することとなり、産学連携を一層活発に進めたく、萌芽研究に応募しました。パワーアカデミーからの支援をひととおり受けている申し子のようなテーマとなっていますが、研究課題を継続して進める支えとなっています。
電気自動車と、再生可能エネルギーおよび送配電NWを協調させる
Q.研究内容をお教え下さい。
日本では人口減少による電力需要の縮小や過疎化による偏在化が言われていますが、自動車の駆動エネルギーの電動化は新規電力需要として期待できます。大容量蓄電池を備えるこれからの電気自動車は、電力・エネルギーの貯蔵源としても期待でき、太陽光・風力発電などの再生可能エネルギーとの相性も抜群です。再生可能エネルギーと電気自動車を、送配電ネットワークという社会インフラを介して上手に協調させることで、電力・エネルギー分野、自動車分野の低炭素化やライフスタイルを格段に進める研究を進めています。
さまざまなシーンのシステム解析を行って、バーチャルに再現
Q.現在までの研究成果と今後の展開についてお教えください。
電気自動車と太陽光発電の両者を備える住宅や、電気自動車シェアリングを備えたマンション、住宅地周辺の配電システム、再生可能エネルギーを導入した離島の電力システムなど、様々なシーンを想定したシステム解析を行い、電気自動車、再生可能エネルギー、電力システムの協調の効果を示しました。これらは、実際のスマートハウスやマンションなど、リアルデータによって測定しています。そして、それぞれのシーンを研究室内にバーチャルに再現し、電気自動車・充電システムを誘うことを可能とする、”Power Systems Design Simulator”を構築しました。海外でも電気自動車の普及拡大にともなって、電気自動車と電力システムの協調を志向する実証プロジェクトが立ち上がってきていますので、国際展開を進めます。理想としては、私の研究室内で、国内、海外問わずあらゆる形の電力システムを模擬して、電気自動車と電力システムの協調の姿を差し示す研究にしていければと考えています。
電気工学は社会インフラの根幹であり、国のあり方を示す
Q.最後にひとことお願いします。
自身がキャリアの重要な段階で研究支援を受けることができ、研究者として成長できる機会をいただきました。若い研究者や博士を目指す学生への継続的な支援活動をよろしくお願いいたします。最近、気象学や、数理解析、コンピュータサイエンス、情報学などの幅広い分野から電力・エネルギー分野への研究への参画があることを認識しています。電気学会に参加しても、さまざまな分野の方が集まっています。ぜひ学際的な研究活動に目を向けていただければと思います。 電気工学は、日々の生活と直結し、社会インフラの根幹であり、国のあり方をも示す、これまでもこれからも重要な分野です。再生可能エネルギーや電気自動車などの新しい電化機器の登場により、革新的で学際融合的な研究も必要とされています。社会インフラと密接でありながら、ダイナミックな局面を迎えている、電力システムの将来のあり方を一緒に考えてみませんか?