次世代交通インフラの充電ステーションを
実現する、非接触充電装置の研究。/東北工業大学 田倉 哲也 講師

2017年5月掲載

他メンバー:佐藤 文博(東北学院大学)、西澤 真裕(東北大学)、松木 英敏(東北大学)

本格的な電気自動車(EV)時代の到来に伴って、様々な新技術が生まれようとしています。非接触で電力伝送する非接触充電(ワイヤレス充電※1)もそのひとつですが、実現するためには、技術だけでなくノイズなど周辺機器などへ与える影響も考慮する必要があります。EV普及のための重要なインフラ整備となるこれらの課題に対して、東北工業大学の田倉哲也先生は、チームを組んで取り組みました。

(※1) 非接触充電については、身近な電気工学「未来は、コードやケーブルがなくなる?」もご覧ください。
※肩書きは採択時のものです。

テクノロジーの塊・電気自動車に対応するため、チーム型研究へ

Q.「パワーアカデミー研究助成」に応募したきっかけをお教え下さい。

東北工業大学 田倉 哲也 講師

磁気的な結合によって非接触で電力伝送する場合、周囲への漏洩電磁界(※2)の広がりが周辺機器などへ与える影響を考慮する必要があります。そのため、すでに非接触充電ステーション周辺機器からの高調波漏洩電磁界による通信周波数帯等への影響は、潜在的な課題となっています。その課題克服のために、高調波ノイズの発生源の特定とノイズ低減方法の提案を目的に応募しました。
応募にあたって、電気自動車への非接触充電は、停車中・走行中・双方向給電と様々な形態があり、個人で研究開発を進めるには多くの時間が必要です。また、EVへの非接触充電に関する研究は産学連携への発展が見込まれます。そこで、以前に移動体の分野で一緒に仕事をしたことのある先生方と共に、チーム型の萌芽研究へ応募しました。

(※2)「電磁界」とは、電流が流れている電線などのまわりに発生する「電界」と「磁界」の総称。電磁界が遅漏(ろうえい)すると、周囲の電気機器に悪影響を与える懸念があると言われている。

高効率な非接触充電装置開発に加え、ノイズ評価と低減手法も研究

Q.研究内容をお教え下さい。

東北工業大学 田倉 哲也 講師

非接触充電は様々な用途が期待されていますが、特に物流輸送分野における環境問題解決のために、EVへの用途が重要視されています。これにより、接続操作からの解放だけでなく、走行中充電や自動運転と融合することで次世代交通システムとして交通インフラ、電化社会の要となることが期待されています。そのためには、利便性の高い充電ステーションの実現が不可欠です。
実現には多くの課題がありますが、特に非接触充電装置から発生する漏洩電磁界は、例えば無線通信に障害を引き起こす可能性が指摘されています。そこで、高効率な非接触充電装置の開発はもちろん、非接触充電装置からの高調波ノイズの評価とノイズを低減する手法についても研究を行いました。

遅漏磁界の低減につながる研究成果を達成

Q. 現在までの研究成果と今後の展開についてお教えください。

今回の研究において、非接触充電中に発生する漏洩電磁界の主要な発生源としては高周波伝送線であることを明らかにしました。しかも伝送線から100 mm離れるとその影響がほとんどないことも確認しました。また、キャパシタ接続方法によるコイル電流の高調波成分の特性や、軽負荷時の周波数と漏洩磁界の関係も判明しました。さらに、走行中非接触給電における受電コイルとして分割直交巻型とすることで、漏洩磁界の低減につなげることができました。
今後は測定方法も含め、自動車のみならず民生機器を含めた提案として展開したいと考えています。また、今回の成果を社会へ還元するために産学だけでなく、産学“官”まで含めた連携で多くの方に周知したいと思っています。

■小型EV 駆動による検討

実際の小型EVを使って、これまでに検討を行った送受電コイル構成の有意性並びに漏洩磁界源の確認について駆動実験を行いました。

車輌外観と仕様

時代とともに変遷していけることが電気工学の強み

Q. 最後にひとことお願いします。

東日本大震災後、電気エネルギーの重要性について、身をもって体験した子供たちが大学に進学し、エネルギー(特に再生可能エネルギー)について学びたいと考える学生が増えています。そういった学生が迷うことなく博士課程に進学できる環境作りの一端をパワーアカデミーには担って頂きたいです。
近年、注目される再生可能エネルギーやEVは、電気工学なくしては成り立ちません。また、環境とのつながりも深いです。きっと、5年、10年先には別の課題が電気工学の技術を必要としています。研究内容も多岐にわたるため異分野との交流も盛んで、社会から必要とされることを肌で実感できる分野です。ぜひ多くの学生の皆さんに挑戦してほしいと思います。

東北工業大学 田倉 哲也 講師

2018年3月14日に開催された研究助成・成果報告会の様子。


電気工学の未来