需要家系統における負荷種別と容量推定に関する研究 /愛知工業大学 雪田 和人教授

2014年5月掲載

家庭やビル、工場などで、ITを用いてエネルギー使用の最適化を図るシステム「エネルギー管理システム(EMS)」が注目を集めています。しかしその実現のためには、需要家において一体、どのようなエネルギーの使われ方がされているのかを把握する必要があります。愛知工業大学の雪田和人教授に、この“見える化”について、従来にはないアプローチで容易に把握できる方法をご提案いただきました。

構想中のエネルギー管理システム研究に、研究助成を活用する

Q.「パワーアカデミー研究助成」に応募したきっかけをお教え下さい。

愛知工業大学 雪田 和人教授

応募時、エネルギー管理システム(EMS※1)が注目されており、最新の家電製品などが、EMSとお話ができるような技術(消費電力などの見える化)が構築されつつありました(※2)。しかし、実際にシステムを構築して、EMSを実施しようとした場合、対象となる需要家における負荷(家電製品)は、双方向で会話ができる装置がなく、実際に調査する必要がありました。

そして実際に調査して、コンセント一つ一つに、どのような負荷が接続されているのかを調べるには、需要家の規模が小さければ問題がないのですが、大きな規模になるにつれて困難になりました。それならば、受電点における電流と電圧を観測することにより、どのような負荷機器があり、またその大きさなども想定できれば、将来のEMSへ貢献できるのではないか?と考えていたときに、パワーアカデミーの研究助成があり応募しました。

  • (※1)EMSについては身近な電気工学「電力もバレーもIT管理」をご覧ください。
  • (※2)すでに一部のテレビでは、現在の消費電力や省エネの達成状況、太陽光発電などの発電状況が表示される機能を備えています。

消費エネルギーの見える化を簡単に実現するための研究

Q.研究内容をお教え下さい。

愛知工業大学 雪田 和人教授

需要家における電流特性と電圧特性の波形を観測することにより、“その需要家で、どのような負荷機器が稼動しており、その負荷の消費電力がどのくらいなかのか?”を知ることができれば、需要家のエネルギーマネジメントの計画、実施をより早く実施できるようになると思います。

今回の研究では、負荷機器を、電気ストーブ、オーブントースターなどの抵抗性負荷、扇風機、空気清浄機などの誘導性負荷、パソコン、TVなどの容量性負荷の3種類に分類して、各容量を推定する手法の開発を実施しました。このため、住宅、工場や大学内における建物の受電点における電流特性、電圧特性を計測し、負荷特性を調査しました。このうち、住宅と大学における測定結果から、3種類の負荷種別を推定する手法はできたと思います。しかし、容量推定に関しては、まだ誤差が大きいので改善が必要だと思います。

様々な需要家の電流・電圧特性を観測可能にしたい

Q. 現在までの研究成果と今後の展開についてお教えください。

住宅における負荷機器を、3種類への分類ができたので、今後は、負荷機器を特定する手法を確立するとともに、工場などの比較的大きな機器などが導入されている需要家においても、負荷推定ができる手法を構築していきたいと思っています。実際に、各家電製品の機器特性に関して、動特性を測定してみると気づかないことが多々ありました。一部の機器は、機器構成を調査したりすると、かなりよく考えて設計されていることを認識しました。そして、将来、需要家の受電点において、電流特性、電圧特性を観測することにより、その需要家における最適なエネルギーマネジメントを提案できる装置を開発したいと考えています。

◎負荷推定構成概念図

  • 抵抗負荷・・・電気ストーブ、オーブントースター、炊飯器、電気ポット、ドライヤー、蛍光灯照明
  • 整流器負荷・・・パソコン、TV、オーディオ機器、ルーター、FAX電話
  • 誘導機負荷・・・扇風機、空気清浄機、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、プリンター、換気扇

中学生くらいから電気の大切さや、工学の面白さなどを伝えていくことが必要

Q. 最後にひとことお願いします。

工学を学ぶということを考えると、実際の機器に触れたり、見たり、できれば製作するという体験がないと、数式の意味やシミュレーションの妥当性などを見つけにくいと思います。そこで、実際に機器の製作現場や製品開発の現場などの見学や体験の現場を提供していただける機会の提供をお願いしたいです。

特に、実際に製品開発をしていく過程での苦労などを乗り越えた体験について、将来の技術者を目指す高校生や中学生と話し合える場を提供していただければと思います。実感値ですが高校生が進路を決めるのは、一年生の場合が多いと聞いています。ということは、中学生の時点から電気の大切さや、工学の面白さなどを伝えていく必要があると考えられます。若年層の啓蒙活動についてもご検討をお願いいたします。

愛知工業大学 雪田 和人教授

電気工学の未来