第36回 ヒートポンプの応用

熱エネルギーの「もったいない」を減らそう!

身近な電気工学 第36回 ヒートポンプの応用

熱エネルギーの「もったいない」を減らそう!

私たちの身近には、未利用の「熱」エネルギーがたくさんある

光、熱、振動、電波など、私たちの身近には、実は使われていないエネルギーがたくさん存在します。中でも"熱エネルギー"は、私たちの身近に幅広く存在しており、一次エネルギーの約6割が有効利用されずに排熱(未利用熱)になっていると言われています。例えば、工場や発電所などで燃料を燃やす場合、燃焼した熱はすべて利用されているわけではありません。その熱量の一部は排ガスと共に大気に放出している場合が多いのです。そこで近年、これらの熱を有効に使って、社会全体の省エネ化を進めようという取り組みが進められています。
具体的に未利用の熱エネルギーとして挙げられるのは、河川水や海水の熱、生活排水や下水の熱、工場排熱、地下鉄・地下街の冷暖房排熱、清掃工場の排熱などです。これらの熱を、ヒートポンプや熱交換器と言われる技術を使って、冷暖房や給湯といった地域の熱供給などに活用するのが熱エネルギー利用の取り組みです。

主な熱エネルギーの対象

・温度差エネルギー
生活排水や中・下水の熱、地中熱、河川水、海水の熱、雪氷熱
・排熱エネルギー
工場排熱、清掃工場の排熱、変電所の排熱、超高圧地中送電線からの排熱、地下鉄や地下街の冷暖房排熱

ヒートポンプ技術を進化させて、省エネ社会を実現する

ヒートポンプとは、大気中の熱(heat)を汲み上げ(pump)、その熱を有効に使う技術です。熱を温度の低い所から高い所へ移動させることが可能で、私たちの身近な例でいうと、エアコンやエコキュートなどに活用されています。
例えば、河川水や海水の熱をどのように利用するかというと、海や河川の水温は1年中あまり変化しません。そのため、季節で変化する外気に対して、夏は冷たく、冬は温かくなります。この大気と水の温度差による熱(冷熱)エネルギーを、ヒートポンプで取り出して冷暖房に利用(温度差エネルギー利用)するという仕組みです。
一方、熱交換器は、「高温→低温」の熱移動を効率よく行える装置です。例えば、国内の多くの清掃工場(ごみ焼却施設)では、排熱を熱交換器によって熱移動し、温水プールや温浴施設などで利用しています。

温度が1年中安定している河川水や海水、地下水を利用した 温度差エネルギー利用のイメージ

現状、未利用の熱エネルギーの活用はまだまだ発展途上の分野です。そのため、ヒートポンプや熱交換器といった、熱エネルギーを有効活用する技術の一層の発展が求められます。例えば、"スーパーヒートポンプ"と呼ばれる、エネルギー集積システムに用いられる超高性能の圧縮式ヒートポンプの研究開発も重要です。これらは電気工学の主要な研究範囲であり、社会全体の省エネルギー化や低炭素社会の実現のため、より一層の技術開発が期待されます。

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