第37回 人工知能と電気工学

人間も人工知能も「学習」と「電気」が不可欠です。

身近な電気工学 第37回 人工知能と電気工学

人間も人工知能も「学習」と「電気」が不可欠です。

AIは「学習」して賢いプログラムになる

人工知能は、英語で人工的な知能を意味する「Artificial Intelligence」の頭文字をとってAIと呼ばれます。"人工的な"というところがポイントで、現在主流のAIは人の脳をまねた仕組みで動いており、これを「ニューラルネットワーク(※1)」と言います。
ニューラルネットワークを人間の知能並みの賢いプログラムにするには、大量のデータを利用してコンピュータに自分で学習させる「機械学習(マシーンラーニング)」が有効です。さらに近年、機械学習の手法の一つとして、多層構造のニューラルネットワークを用いて、データの背景にあるルールやパターンを自ら抽出する技術「深層学習(ディープラーニング)」が開発されました。最近話題の対話型AI"ChatGPT"や画像生成AI"Midjourney"といった生成AIは、インターネット上に大量のデータが蓄積されたこととディープラーニングの手法が確立されたことなどにより、実現したものです。尚、AIの研究の歴史は古く、1956年の国際学会(ダートマス会議)においてはじめて、人工知能(AI)という言葉が使われて研究分野として確立されたと言われています。

AI・機械学習・深層学習の関係

AIの進化に電気工学の発展は欠かせない

電気工学において、実はAIは長年、研究対象となっていました。例えば電力分野では、電気エネルギーを発生させる発電、輸送・分配する送電・変電・配電、消費する需要といった電力系統全体の流れにおいて、極めて膨大なデータが発生します。電気設備ひとつ取ってみても、設置時期や場所、自然環境から受ける影響など、桁違いのデータを管理し、その中からより最適な対応をしていくことが求められます。こうしたデータの管理や分析・シミュレーションなどにAIを活用する研究が、様々な電気工学の研究室で行われています。
一方で、社会全体にAIが使われれば使われるほど、データセンターなどのデジタルインフラにおいて消費される電力量は爆発的に増えていきます。この増大し続ける電力量を、どのように省電力化していくのかを考えるのも、電気工学の重要な研究領域です。再生可能エネルギーの活用を中心に脱炭素社会をできるだけ進めながら、省電力化をどうやって進めていくのか。AI普及に電気工学の進化・発展は不可欠なのです。

近年、生涯学習の重要性が叫ばれていますが、人間も人工知能もより豊かに賢くなるためには、「学習」が欠かせません。そして、両者とも「電気」の存在はなくてはならないものなのです。

(※1)ニューラルネットワークとは、神経細胞(ニューロン)のネットワークで構成される人間の脳のように、神経細胞に相当する各ノードが接続されている情報処理のネットワーク。

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