vol.17 大坂府立大学

日本に新たな電力システムをつくりたい。

学生インタビュー vol.17

日本に新たな電力システムをつくりたい。

大坂府立大学 石亀研究室
大西 悟史さん&松田 真典さん&松岡 奈々子さん

大阪府立大学・石亀研究室は、新たな電力システムの構築を目的に日々研究に取り組んでいます。産学連携を積極的に行っており、私たちの身近な電力系統・電力機器を支えている研究室です。

※2011年10月現在。文章中の敬称は略させて頂きました。

電気工学は魔法だと思いました(笑)

電気工学を志望された理由を教えてください。

大西:高校時代は、得意科目が物理でした。その中でも電気が一番得意だったことが理由だと思います。一方で国語などの文系科目はあまりできませんでした(苦笑)。

松岡:私も大西さんと一緒で、物理と数学が好きで理系へ進みました。電気工学へ進んだのは、電気は社会に無くてはならない存在なので、社会貢献ができるかなと考えたからです。

松田:私も物理が得意だったので、工学部へ進むことを決めていましたが、機械か電気で悩みました。決めては、大阪府立大のオープンキャンパスへ行ったことです。電気工学科の展示で、電池がなくても聞けるラジオを作ったのですが、それがすごく印象的で魔法だと思いましたね(笑)。

石亀研究室へ進んだ理由も、教えてください。

大西:せっかく研究するなら、電力システムという大規模なものに携わりたいと思ったことです。大阪府立大学では、電力システムを主に研究しているのが、石亀先生でした。

松岡:私は、パワエレ系か電力システム系か悩みました。結局、電力システム系の石亀研究室を選んだのは、研究室の雰囲気が良く、産学共同研究が盛んだったからです。

松田:エネルギー問題に興味があったからですね。電気系にはモーターや制御といった、ものづくり中心の研究室もありますが、私はエネルギーに関わってみたいと思ったので、この電力システム研究室を選びました。

新しい太陽光発電分析と、大阪をEVがあふれる街にする

松田さんの研究を教えてください。

松田:2つテーマがあります。まず「独立成分分析を用いた太陽光発電の出力推定」から説明いたします。独立成分分析という、主に画像処理や音声処理などで使われる信号処理手法があるのですが、これを電力系統に応用して、太陽光発電の出力を推定しようという研究です。

詳しく教えてください。

松田:例えば最近、太陽光発電を屋根の上に設置して自家発電する家庭が増えてきています。ところが、電力会社はその時送電している電力の値だけを見ても、実際に家庭(地域)で使われている電力と、太陽光発電の電力の内訳が分からないのです。そこで独立成分分析を使うことによって、送電電力の内訳を判明させようという研究です。

これまで分からなかった太陽光発電の電力の値が分かるということは画期的ですね!

松田:そうですね。独立成分分析自体は、昔から信号処理の分野ではすごくメジャーな手法でしたが、これを電力分野に応用するのは、国内では恐らくなかったと思います。海外で少しあるぐらいで、国内では去年までは石亀研究室しかありませんでした。今年から北海道大学でも研究がはじまっており、今後盛り上がる気がします。

もうひとつの研究を教えてください。

松田:「ボロノイ図を用いたEV用急速充電器の最適配置に関する研究」で、主に学部4年生のときに1年間だけ行った研究です。大阪府からの研究依頼で、『大阪EVアクションプログラム』というプロジェクトに参加しました。大阪を電気自動車があふれる街にしたいという趣旨で2009年にスタートしたプロジェクトです。

具体的にどのようなことを行ったのですか。

松田:電気自動車の急速充電器を大阪府の中に20基取り付けること(研究をスタートしたときは1基のみ)になり、どこに設置すると効率的なのかを判断する手法を提案しました。「ボロノイ図」という施設設置の考え方があるのですが、これを急速充電器に応用した手法です。実際に活用いただき、2010年に20基の取り付けが終わりました。

※『大阪EVアクションプログラム』の詳細は下記大坂府のHPをご覧ください
http://www.pref.osaka.jp/energy/sinenerugi-/akusyon.html

膨大なシステムの解を解き明かす、電力系統の最先端研究

大西さんの研究を教えてください。

大西:私は、「調相設備の最適制御に関する研究」です。パワーアカデミーの学生インタビューにあります東京理科大学の研究と、似ていると思います。まず、調相設備とは無効電力(※)を調整する電気機械器具で、「電力用コンデンサ」「分路リアクトル」「同期調相器」「SVC(静止型無効電力補償装置)」といったもので構成されています。

最適制御を研究する目的について、具体的に教えてください。

大西:ふたつ目的があります。ひとつは、最適制御を行うことによって、電圧を規定範囲(※)内に維持すること。もうひとつは、耐久性を保つため、機器動作を少なくすることです。これらを実現するために、10の25乗通りもの機器動作の組み合わせから最適なものを探索します。

10の25乗(10,000,000,000,000,000,000,000,000)通り!想像もつかないですね。

大西:そうでしょうね(笑)。普通に一つひとつ調べていくと、PCを使っても何十年かかるか分かりません。そこで、私は「数理計画法」と言われる、数学的根拠に基づいて高速に解く手法を取り入れています。

これは、研究室独自でやられている研究ですか。

大西:いいえ。電力会社と共同で行っています。昨年までは「メタヒューリスティクス(※)」という方法でやっていました。メタヒューリスティクスを用いると非常に高速で計算できるのですが、数学的には証明されていないものなので、今年から共同研究している電力会社の要請で「数理計画法」を採用しています。

※無効電力とは
交流の電気には、有効電力(仕事に変わる電力)と無効電力(仕事に変わらない電力)がある。詳細は学生インタビュー「東北大学」をご覧ください。

※電圧の規程範囲とは
低電圧に関しては電気事業法第26条および電気事業法施行規則第44条により、101±6Vあるいは202±20Vと定められている。高電圧以上に関してはとくに規定されていないが、前記規則に準じて電圧変動目標幅を定めてその維持に努めている。詳細は電気工学用語集の「電圧調整」をご覧ください。
http://www.power-academy.jp/learn/glossary/id/1173

※メタヒューリスティクスとは
詳細は社会人インタビュー「キヤノン株式会社」をご覧ください。
http://www.power-academy.jp/human/society/vol12/

次に松岡さん、お願いします。

松岡:「SVCを用いた配電系統の電圧制御に関する研究」です。SVC(静止型無効電力補償装置)は、大西さんが言われたとおり調相設備の一種です。

配電系統の電圧制御とは何ですか。

松岡:基本的に大西さんと同じで、電圧を規定範囲内におさめる研究です。ただ、大西さんの研究は変電所よりも高圧の系統を想定していますが、私は、変電所から家庭までの配電系統の中で、SVCをどこに設置してどのように制御していくかを研究しています。

配電系統にSVCを入れる研究ということですね。現在は入っているのですか。

松岡:現在ではあまり入っていません。ただし、今後太陽光発電が電力系統へ大量に導入されると、逆潮流(※)などが起きて配電系統に悪影響があると考えられています。そこでSVCを用いて電圧を制御しようという試みです。

※逆潮流とは
分散電源が普及して、余剰電力が配電網に大量供給されるようになると、今まで電気を消費していた需要側が電気を供給することになり、潮流が逆向きになって、電圧変動や周波数変動などが起きて電力の品質が低下すると言われている。これが逆潮流問題である。

国際学会は刺激的!プログラミングは面白い!

研究をしていて、一番印象に残っていることは何でしたか。

松田:今年の夏に、韓国で行われた国際学会へ初めて出席したことです。色々な国の人たちが英語で討論しているところを見て、刺激を受けましたね。私も発表しましたが、英語で説明すると言葉足らずになってしまいます。そのためか、外国の方から頂く質問も初歩的な内容で、日本の学会の方が突っ込んだ議論ができるかもしれないと思ったのが、率直な感想です。

平成23年電気学会 電力・エネルギー部門大会の様子

それは国際学会全体の課題かもしれませんね。日本の学会はいかがですか。

松田:最近ですと、8月末に福井大学で行われた電気学会・B部門大会に出席しました。こちらは海外と違って突っ込みが鋭いです(苦笑)。

松岡さんは、学部4年なので研究がはじまって半年弱ですが、何かありますか。

松岡:電力系統のような大規模で複雑なシステムをパソコン上でシミュレーションできるということが驚きでした。

基本、石亀研究室の研究は、PCでシミュレーションですよね。

大西:そうですね。私も印象に残っているのはプログラムです。プログラムは非常に繊細なもので、半角の数字と英語と記号で組むのですが、1カ所全角があっただけでうまくいかなくなります。その入力ミスを探すだけで、1週間もかかったことがあります(苦笑)。

研究室ライフは、とても充実!女性も快適です。

研究室の特徴を教えてください。

大西:PC設備は充実していると思います。1人1台以上はあります。例えば、私は3台も使わせて頂いています。計算用のPCが2台で、通常使う用が1台です。

10の25乗通りですもんね(笑)。他にありますか。

大西:研究のための正当な理由があれば、設備に関しては購入を検討して頂けます。ほぼ一日、研究室の中でPCの前ですから、その辺りは石亀先生に気を遣って頂いています。椅子を買って頂きました(笑)。

松岡:私は今、先生に浄水器をお願いしています(笑)。

石亀研究室の雰囲気はどんな感じですか。

大西:にぎやかです。誕生日パーティーをやっています。最近では、石亀先生や助教の高山先生の誕生会もやりました。

松岡:私もこの間、誕生日会を開いてもらいました。カレンダーにチェックを入れると、お祝いをしてくれるんです(笑)。

それはアットホームですね。石亀研究室では、女性は松岡さん1人ですか。

松岡:はい。私の学年では5名います。

電気工学に限らず工学系は女性が少ないですが、どんなふうに感じますか。

松岡:女性用トイレが少ないといった施設面以外は、特に不自由を感じたことはありません。女性が普通に研究できる環境だと思いますよ。ただ、現状では女性が少ないのは事実なので、今後増えてくれるとうれしいです。

一日のスケジュールやアルバイトなど、普段の生活について教えてください。

松岡:研究室のコアタイムは、基本的に10時半から3時半です。研究が遅くならなければ、夕方には帰ってアルバイトをします。

松田:今は引退しましたが、学部生の間はアーチェリー部に入っていました。普段はコアタイムが基本ですが、学会が近づくと土日に出ることもあります。時期によって全然違いますね。

大西:石亀研究室は、コアタイムさえ守っていれば、基本的に自由ですね。自分の時間をプライベートのためにフレキシブルに使える研究室です。私自身、学部の4年まではサッカーサークルでの活動を行っていました。

「電気を送る」ことは絶対に誰かがやる必要がある

電気工学を学んで良かったと思うことをお教えください。

松岡:研究室に入って、まだ日が浅いので、これから電気工学を学んで良かったことが分かるかなと思います。学部時代は電気と情報、通信の3つを勉強して、テストをクリアすることに精一杯でした。

松田:一番大きいのは、電気に関する知識が得られたことですね。震災の影響で、計画停電や電力需給といった話題を聞くようになりましたが、ある程度バックボーンとして電気の知識を持っているので冷静に対応することができます。

大西:私は就職ですね。今年、就職活動をやっていて、電気を学んでいる人は重宝されていると感じました。電機はもちろん機械、食品、化学など、幅広い業界で求められていました。

今年は昨年度から続く就職難に加えて震災がありました。実際のところ、就職活動はいかがでしたか。

大西:今年は震災の影響で時期が遅れたりしましたが、私も含めて電気系の人たちはほとんどが就職できたと思います。電気系は、やはり就職に有利だと感じました。私は、鉄道会社へ就職が決まりました。

松田:私は電力会社へ就職が決まりました。就職活動中で印象深かったことは、建築事務所を受けたのですが、そこに電気系の採用枠があったことです。建築系でも入るのが難しい著名な事務所なのですが、採用枠があると聞いて、どこへ行っても電気系は活躍できることを改めて実感しましたね。

最後に皆さんの将来の夢や目標をお教えください。

大西:目標として、事業エリア全体を統括・マネジメントできるような人間になりたいと思っています。鉄道を通して地域活性化に少しでも貢献していきたいです。

松岡:これから修士課程へ進むので、もっと電気工学を勉強して、先輩たちが就職したような企業へ行きたいと思っています。

松田:電気があって当たり前という世の中が数十年続いてきましたが、震災以後揺らいでいます。微力ですが、電気があって当たり前という世の中を今後も支え続けていきたいと思います。

電力会社は震災後、逆風ですが、松田さんはその中へ進まれることをどう思われていますか。

松田:私は去年の夏、電力会社のインターンシップに参加し、電力会社の方々が実際に働いている姿を拝見しましたが、電気を送ることが"仕事"というより"使命"になっていることを感じました。確かに逆風ですが、「電気を送る」ことは絶対に誰かがやらなければならないので、先輩たちのように使命感を持って活躍したいと思っています。

今後の皆さんの活躍を祈念しています。本日はありがとうございました。

石亀 篤司

大阪府立/大阪府
大阪府立大学 工学研究科 電気情報システム工学分野

石亀 篤司 教授(いしがめ あつし)
当研究室は、1949年に工学部が開設されて以来の伝統ある研究室で、今日に至るまで電気エネルギーの発生・輸送・変換・制御にかかる電力工学と高電圧工学の研究・教育を行ってきました。卒研生は既に約300名に及びます。年末の忘年会には卒業生も参加して、現役卒研生・院生との連携が進められています。2010年度は、教員1名、大学院博士後期課程2名(社会人Dr.1名を含む)、博士前期課程9名、学部生3名の総勢15名で活発な研究活動を行っています。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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