電気の施設訪問レポート vol.7

東北電力・上の岱地熱発電所を訪問しました

東北電力・上の岱地熱発電所を訪問しました

2011年11月末、パワーアカデミー事務局は、秋田県湯沢市にある東北電力・上の岱地熱発電所を訪問しました。本レポートでは、震災後、注目を集める再生可能エネルギーのひとつ「地熱発電」の仕組みや特徴、そして上の岱地熱発電所の施設などをご紹介します。

地熱発電とは

地熱発電とは地球のマグマの熱を利用した発電方法のことです。いわば地球がエネルギー源であり、半永久的に利用できる大きなメリットがあります。また、化石燃料を使用しないため、地球温暖化の原因のひとつであるCO2排出量が非常に少ないエネルギーです。一方で、探査・開発に多額の費用と時間(15~20年)がかかるという課題もあります。さらに、地熱資源がある場所はそのほとんどが国立公園特別保護地区・特別区内にあり、利用が制限されているという実態があります。こうした問題を解決するためには、今後のさらなる技術進化が期待されます。

電源別 Co2の排出量

地熱発電の仕組み

地球には、地下十数キロメートルにマグマがあります。火山地帯では、マグマが地表の近くまで上昇し、深さ数キロメートルに千度前後のマグマ溜りをつくります。一方、地表からしみこんだ雨水や地下水は、マグマの熱で温められ、高温の地熱蒸気や熱水となって地層のわれ目や岩石のすきまに蓄えられます。これを地熱貯留槽と呼んでいます。地熱発電は、この地熱貯留槽にたまっている地熱蒸気をとりだし、蒸気タービンをまわして電気を起こします。役割を終えた熱水は、地下の深い部分にもどされます。

自熱発電の仕組み

上の岱地熱発電所の主な施設

上の岱地熱発電所は、湯沢市の市街地から南東へ約20km。栗駒国定公園をのぞむ緑の樹海の中にあります。東北電力では葛根田1号機に続く2番目の地熱発電所として、1994年3月から営業運転を開始しました。発電出力は、2万8800KW。これは、一般家庭の約7万5000世帯に供給できる分に相当します。それでは、見学をさせて頂いた主な施設をご紹介していきます。

発電所建屋

発電所建屋

発電所の建物は、形や色に配慮して、秋田の美しい自然環境との調和をはかっています。その姿はまさに、大自然の中の山小屋

蒸気タービン、発電機

蒸気タービン、発電機

発電所内にある、蒸気タービン(奥)と発電機(手前)です。蒸気タービンは地熱蒸気のエネルギーで回転します。蒸気タービンが回転すると、同じ軸にとりつけられている発電機がまわり、電気が起きます。

冷却塔

冷却塔

タービンを回し終わった蒸気は、復水器に入り冷却水で冷却され、約50℃の温水になります。この温水は、ポンプで冷却塔に送られて外気と接触し、外気と熱交換されるとともに気化熱を奪われ約25℃まで冷やされ、再び蒸気を冷やす冷却水として使用します。いわば、冷却塔は冷却水製造器です。この冷却塔は複数台あり、地熱発電のシンボル的な存在になっています。

生産井(せいさんせい)

生産井(せいさんせい)

地熱蒸気は、"生産井 "と呼ばれる井戸を通して取り出されます。上の岱地熱発電所には生産井が11本あります。井戸のパイプは浅い場所で、1200メートル。もっとも深い場所で2200メートルにもなります。写真は、上の岱発電所C基地の"生産井"です。

編集後記

JR湯沢駅から車で約1時間、秘境と呼ぶにふさわしい山奥に"上の岱地熱発電所"はありました。なかなか気軽に行ける場所ではありませんが、地熱発電という大きな可能性を秘めた再生可能エネルギーをぜひ一度ご覧頂ければと思いました。詳しくは、東北電力秋田支店へお問い合せください。

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