電気の施設訪問レポート vol.27

「東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®」をご紹介します
2020年7月9日、福島県大沼郡金山町に「東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®」がオープンしました。東北電力としては初めての本格的な水力発電のPR施設となります。パワーアカデミー事務局では、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、書面による取材を行いました。館長ご自身のコメントも含め、同水力館の見どころをご紹介します。
水力発電事業への協力に感謝して
四季折々の多彩な自然の表情が楽しめる奥会津の只見川(ただみがわ)。その絶景を望む道の駅「奥会津かねやま」に隣接して誕生したのが「東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®」です。
緑豊かな山々を背景にひときわ目を引くのが、その外観です。奥会津の山の連なりをイメージしたものであり、山並みのような折れ線をもつ軒のラインが、ダイナミックな雰囲気を醸し出しています。また、木質の外壁が生み出す落ち着いた素材感と大きなガラス面がつくりだす開放感が周囲の豊かな自然風景と調和し、凜とした印象を与えます。
さらに、西側にワイドに配置されたラウンジからは只見川の雄大な流れが一望でき、縦・約2m、横・約7mの壮大なステンドグラスは建物のシンボルとして美しい輝きを放っています。
奥会津地域は東北電力の草創期から大規模な電源開発が行われ、戦後の復興期を電力供給で支えました。現在も東北電力における水力発電総出力の約3割を占めています。そうした水力発電の特徴や奥会津地域における水力発電の歴史的意義、東北電力の再生可能エネルギーの活用に向けた取り組み、奥会津地域のさまざまな魅力などを紹介するとともに、地域の活性化にも貢献する施設を目指して誕生したのが「東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®」です。
館長の渡部さんは「只見川水系の水力発電の歴史は長く、100年を超えます。そして、日本の戦後復興に大きく貢献をしてきました。その歴史的な意義や水力発電の仕組みをわかりやすく伝えられればと思っています。またコミュニティの場、地域活性化の拠点としても貢献したいと考えております」と、意気込みを示しています。
地域コミュニティの中心に
「東北電力奥会津水力館」の愛称については、奥会津地域の中学生・高校生から募集。140点の応募の中から厳正な選考の結果、「みお里」が選ばれました。
この愛称には、作者の福島県昭和村立昭和中学校3年生(当時)・鈴木光希(すずき みつき)さんの「私たちの豊かな暮らしを支えてくれている水脈のふる里」という思いが込められています。
この愛称と響き合うように奥会津地域からは、「東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®」が地域コミュニティの中心として末永く愛されることを願う声が多く寄せられています。
渡部館長からは「当初の構想から約10年を経ての開館であり、開館を待ち望んでいたという声が多数聞かれました。また、これまでのPR館は、模型中心でしたが、『東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®』はアート作品の展示物が多いので期待以上のものがあったようです。知識を得られる面と心を癒される面と両方で好感を持たれています」とのコメントをいただきました。
美しい奥会津の自然とともに
尾瀬を源流とする只見川。その美しい流れを中心に抱く奥会津は、「アバランチ・シュート」(雪食地形)と呼ばれる急峻な崖が只見川沿いに発達し、四季折々、美しい自然の表情を見せてくれます。
国内でも有数の豪雪地帯であることから、水力発電の電源地帯として発展してきた奥会津。東北電力も奥会津地域には9ヵ所の水力発電所を有しています。
そんな奥会津の魅力について館長の渡部館長は「奥会津は豪雪地帯で、冬を起点とした生活リズムがあります。雪深い東北地方の人々がそうであるように、奥会津の人々も寡黙でねばり強いように感じます。奥会津には日本古来の習わし、しきたり、行事なども残っており、それらには人々の助け合いや温もりを感じます」と話しています。
水力館を建設する奥会津地域の水力発電所
発電所名 | 所在地 | 出力 | 運転開始 |
---|---|---|---|
滝谷川発電所 | 河沼郡柳津町 | 445kW | 1920年8月 |
桧枝岐発電所 | 南会津郡檜枝岐村 | 60kW | 1922年10月 |
内川発電所 | 南会津郡南会津町 | 530kW | 1927年12月 |
伊南川発電所 | 大沼郡金山町 | 19,400kW | 1938年10月 |
宮下発電所 | 大沼郡三島町 | 94,000kW | 1946年12月 |
柳津発電所 | 河沼郡柳津町 | 75,000kW | 1953年8月 |
上田発電所 | 大沼郡金山町 | 63,900kW | 1954年3月 |
本名発電所 | 大沼郡金山町 | 78,000kW | 1954年8月 |
第二沼沢発電所 | 大沼郡金山町 | 460,000kW | 1982年5月 |
「東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®」をご紹介いただきました
「東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®」は、周囲の自然環境と調和する木材を使った外観。⽔⼒発電を中⼼としたエネルギー理解に資する展示物、シアターでのダイナミックな映像、絵画・ステンドグラスなど多彩なアート作品などが展示の特徴です。
水力シアターホール
水力発電の仕組みや只⾒川における東北電力の水⼒発電所の開発の歴史などを、奥会津地域の魅⼒とともに映像で紹介しています。
水力スクエア
水力発電をはじめとした再生可能エネルギーやエネルギーミックスなどについて、多彩な展示装置に触れながら学ぶことができるコーナーです。 また、多数の水⼒発電所が建設されている只⾒川の特徴的な地形をジオラマで紹介。奥会津の自然環境が⽣み出す豊富な水を、上流から下流まで余すことなく発電に利⽤していることを紹介しています。
只見川と白州次郎
東北電力初代会⻑の⽩洲次郎⽒と 只⾒川の電源開発の関わりを紹介。「旧⽩洲邸武相荘(東京都町田市)」の協力のもと、同⽒の愛⽤品を展示するとともに、⽩洲次郎⽒の人となりにフォーカスしたエピソードも紹介しています。
地元逸品ギャラリー
画家や書家としても著名な片岡鶴太郎⽒が新たに描き起こした奥会津地域7町村の逸品の絵画を通じて、奥会津地域の魅⼒を発信しています。
只見川ギャラリー
「水源〜川〜水⼒発電施設〜灯り」をテーマに、複数の画家が描いた、画風が異なる絵画を通じて奥会津地域の魅⼒を紹介。 また、展示の最後には、只⾒川と水⼒発電所をモチーフにした巨⼤ステンドグラス(縦・約2m×横・約7m)で地域の魅⼒を伝えています。
企画展示室・多目的スペース
「企画展示室」は、地域の⽅々の文化・芸術の発表の場としてご活⽤いただけます。また、「多目的スペース」は、地域の⽅々の交流の場として集会・サークル活動などにご活用いただけます。
地域活性化への貢献を目指して
「東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®」の最寄り駅「会津中川」駅のJR只見線は、2011年の「平成23年7月新潟・福島豪雨」によって橋梁流出などの甚大な被害を受け、途中の区間の長期運休が続いています。現在、その復旧に向けた取り組みが進められており、地元ではJR只見線の全線開通とあわせて「東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®」が地域活性化の大きな一歩になると期待が寄せられています。
そうした地元の声に応え、渡部館長は「地域に寄り添い、皆さまに親しまれる施設としたい。 そして地域の活性化につながるよう、奥会津振興の起爆剤となれるような施設でありたいと思います」と語っています。具体的には「地域から只見線全線復旧に併せた企画の問い合わせなどもあるので、連携を取りながら施設を運営していきます。また、当館の展示作家によるワークショップなども計画したいと思います」とのことです。
さいごに(館長コメント)
館長の渡部博之さん
単なる水力発電のPR施設としてだけではなく、四季折々に変化する自然環境、くつろげる空間、心を癒してくれるアートなど見応えのある施設となっています。ぜひ、足を運んでみてください。お待ちしております。
編集後記
新型コロナウイルス禍という逆風の中ではありましたが、「東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®」が予定通りに開館を迎えられたことに、まずはお祝いを申し上げます。残念ながら編集スタッフが取材に出向くことはかなわず、館長以下、スタッフの皆さんのご協力のもと、書面での取材となってしまいました。コロナ禍収束後にはぜひ足を運び、奥会津の雄大な自然とともに、水力館の魅力を肌で感じたいと考えています。