第42回 ワイヤレス送電の可能性

宇宙で発電、地球へ送電。

身近な電気工学 第42回 ワイヤレス送電の可能性

宇宙で発電、地球へ送電。

ワイヤレス送電が大注目

『身近な電気工学 第20回』で紹介したように、送電線やコードを使わない無線(ワイヤレス)による電力伝送が注目を集めています。近年は、スマートフォンをケーブルでつなぐ必要がなく、置くだけで充電できるQi規格(※1)対応のワイヤレス充電器が普及しつつあります。皆さんも「置くだけ充電」を使ったことがあるのではないでしょうか。さらに、電気自動車(EV)向けのワイヤレス給電も研究・開発が進んでおり、停車中だけでなく走行中の給電も構想されています。これらは新たなモビリティインフラとして期待されています。

(※1)Wireless Power Consortium(WPC)が策定した、ワイヤレス充電の国際標準規格

進化を続ける宇宙太陽光発電

大規模なワイヤレス送電として注目を集めているのが「宇宙太陽光発電(SSP※2)」です。地上約3万6000kmの静止軌道に配置した人工衛星で太陽光を受けて発電し、マイクロ波やレーザーで地上へ送電する構想です。

発電のメリットは、地上と比較して、昼夜・天候の影響を受け難く、かつ、強度の高い太陽エネルギーを利用することができるため、安定供給に貢献できることです。また送電のメリットは、将来的には電気機器への直接給電も期待されます。宇宙からのマイクロ波で直接、スマートフォンやEVへの充電が可能になる日が来るかもしれません。
一方で、巨大な施設の建設費や運用コストなど多くの課題があり、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や企業、大学などで研究・開発が進められています。
近年は月面で発電して地球へ送電する「月面発電(月太陽発電)」も注目されています。各国の研究機関や民間企業(※3)が提案しており、月の資源を活用して大規模化できるメリットがありますが、人工衛星より地球まで遠く送電損失が大きいことや、月面開発・長期運用のための巨額コストなどが課題です。

スマートフォンのワイヤレス充電から宇宙太陽光発電まで、ワイヤレス送電には大きな可能性があり、電気工学など関連分野のさらなる研究・技術革新が求められます。

(※2)Space-based solar powerの略。1968年に米国で構想が発表されたのが最初と言われる
(※3)清水建設(株)が提案する月太陽発電「ルナリング」が挙げられる

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