vol.9 株式会社日立製作所

電気を広めて、紛争のない世界を実現したい。

社会人インタビュー vol.9

電気を広めて、紛争のない世界を実現したい。

株式会社日立製作所
仙波章臣さん

2010年で創業100周年を迎える、日本の代表的な総合電機メーカー・日立製作所。今回、取材に伺った日立事業所は、日立発祥の地で電力発電設備・一般産業機器からパワーデバイスまで幅広く製作している工場です。インタビューを受けていただいたのは、東京大学 大崎研究室出身の仙波章臣さん。主に火力及び原子力発電所向けの大型タービン発電機の設計をしている、現役のエンジニアです

プロフィール

1995年3月
東京大学工学部電気工学科卒 (正田・大崎研究室)
1997年3月
東京大学大学院工学系研究科 電気工学専攻卒 (大崎研究室)
同年
日立製作所入社 電力設計部配属
2002年~1年間
Massachusetts Institute of Technology(マサチューセッツ工科大学) 留学

※2010年9月現在。インタビュー中の敬称は略させて頂きました。

最大効率の発電機をつくる、ミッション

日立製作所に入社された理由を教えてください。

仙波:日立製作所は総合電機メーカーです。電力・産業システム以外にも、情報通信システム、電子デバイス、デジタルメディア・民生機器、高機能材料、物流、金融サービスなど多岐に渡る分野を手掛けています。更にグローバルな企業でもあります。私は発電機の開発を希望していたのですが、その他のことにも携われる可能性がある企業だと考えて入社を志望しました。

なるほど。総合電機メーカーならではの志望理由ですね。

仙波:でも正直に言いますと、入社した一番の理由はここが日立市だったからです(笑)。私の趣味は釣りで、入社前に2、3回来たことがあるのですが、事業所のすぐ近くに海がありました。それで、お昼休みや退勤後に釣りができるかなと思ったのです。実際は、全くできませんでしたが(笑)。

日立駅・駅前広場に展示されている、発電所用の大型タービン動翼のモニュメント

(笑)。それでは、現在のお仕事を教えてください。

仙波:私は入社以来、主に火力及び原子力発電所向けの大型タービン発電機の設計をしています。タービン発電機とは、タービンによって駆動される発電機のことで、タービンの機械エネルギーを電気エネルギーに変える機器です。プロジェクトの期間は、火力向けは2年ぐらい、原子力向けは、許認可などを入れると10年ぐらいかかります。設計業務に従事していた頃は、だいたい5つぐらいのプロジェクトを掛け持ちしていました。

具体的に設計というのはどのようなお仕事ですか。

仙波:設計といっても、常に机の前に座っているわけではなくて、設計自体に費やす時間は業務全体の半分以下です。設計以外にも、お客様にプレゼンテーションをしたり、値段を決めたり、部材の調達指示などを行います。世界中のお客様を相手に、いろいろな国にも出向きます。私の場合は、アメリカ、カナダを中心に、中国、イギリス、インドなどへ行きました。他には発電所全体のPRなども行っています。

それは幅広いですね。これまでお仕事をされていて、印象に残っているエピソードを教えていただけますか。

仙波:色々ありますが、最近だと「最大効率の発電機を作る」仕事がありました。その発電機は、アラスカから灼熱の砂漠まで、どこでも使用されるものです。従って、何百台も売るので一つ間違うと大変なことになってしまいます。こうしたミスが許されない状況の中で、発電機の効率を競合他社よりも高くするような難しい設計をしなければいけないミッションです。

仙波さんが携わった最大効率の発電機

最大効率の発電機とはどのぐらいなのですか。

仙波:私が設計した空気冷却方式の発電機の効率というのは、おおよそ98%から99%ぐらいです。既に十分に高効率なもので、私が取り組んだのは、その効率をたった0.1%上げるという程度のものです。

たった0.1%ですか!

仙波:そうです。実は、この0.1%というのが、お客様の運用コストにおいて、年間でみると相当額効いてくるのです。

なるほど。

仙波:問題は、その0.1%の効率を上げて、なおかつ値段を安くすることです。他社とのせめぎ合いは大変なもので、2年程度かかりっきりで設計しました。また、資材を安く調達するため北米を中心に海外へも出向き、日立の品質基準をクリアするために調達先の方々と悪戦苦闘してつくりあげました。この仕事は「技術の日立」の魂を見せられたかなと自負しています。

日立の火力・原子力用タービン発電機

電気工学はモノづくりにおいて総合的な視点を養える

学生時代に学んだ電気工学は、今のお仕事にどのように活かされていますか。

仙波:正直に言いますと、設計の中で電気工学の比率は非常に少ないです。ただ、問題に直面したときに、やったことあるなぁ、と、文献などを簡単に探せたり、解決のヒントを得たり、教授や同級生などの人脈を活かしたりはしています。

一般的なイメージですと、出身学科が電気工学で、発電機の仕事に携わっておられるので直結していると思ったのですが。

仙波:発電機は、一応、電気屋さんというカテゴリーには入ると思いますが、実際は、機械工学や材料力学、破壊力学、流体力学など、総合的に学問を駆使しないと設計できないのです。

なるほど。

仙波:入社後、そのギャップに戸惑いました。私たちが学んだ電気工学というのは、発電機の世界では一部に過ぎないのです。ただし、電気の世界では、0.00・・・オームから何百万オームまで、小さいものから大きいものまで、ひとりで全部扱います。一方、他の世界では、例えば0.00・・・トンから何百万トンまで、ひとりの人では扱いづらいです。そういう意味で、電気屋さんは、小さいものか大きいものまで扱える総合的な視点を持っていると思います。

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