vol.51 電源開発送変電ネットワーク株式会社

東西日本間の電力融通を通じて安定した電力供給に貢献したい。

社会人インタビュー vol.51

東西日本間の電力融通を通じて安定した電力供給に貢献したい。

電源開発送変電ネットワーク株式会社
橋本 隆裕(はしもと たかひろ)さん

自然災害の多発や夏季・冬季の電力逼迫など、電力の安定供給が懸念されることが増えてきました。そうした事態に備え、東西日本間での電力融通を可能にする施設が佐久間送電変電事業所(静岡県浜松市)です。最前線でその保守に携わる橋本さんに、やりがいや使命について伺いました。

プロフィール

2013年4月
立命館大学 理工学部 電気電子工学科 入学
2017年3月
立命館大学 理工学部 電気電子工学科 卒業
2017年4月
立命館大学大学院 理工学研究科 電子システム専攻 入学
2019年3月
立命館大学大学院 理工学研究科 電子システム専攻 修了
2019年4月
電源開発株式会社入社
2019年9月
北地域流通システムセンター 上北流通事業所 配属
2020年4月
電源開発送変電ネットワーク株式会社 上北送変電事業所
2021年11月
電源開発送変電ネットワーク株式会社 佐久間送変電事業所

※2022年12月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

ロボットの動力源である電気に興味を抱く

電気に興味をもたれるようになったきっかけを教えてください。

橋本:小学校の社会科見学の授業だったと記憶しているのですが、自動車工場の製造ラインを見せていただき、ロボットに憧れたのが最初でした。単純にロボットがかっこいいと思い、その動力源であり、制御も担う電気に興味をもったわけです。

その延長で電気工学を専攻されたのですね。

橋本:人々が安心して快適な暮らしを送れるよう、様々な用途で使われている電気を理解したいと思いました。また両親が電材関連の専門商社を経営しており、父の「電気を学んでおくと活躍の場が広がる」というアドバイスも私の背中を押してくれました。

長距離送電の低コスト化に向けて

大学院ではどのような研究に取り組まれましたか。

橋本:高電圧直流送電 (HVDC) に適用される AC-DC コンバータとして、モジュラーマルチレベルコンバータ (MMC) の研究をしていました。再エネへのニーズの高まりを受けて洋上風力発電への期待が高まっており、送電線損失が少ないことや送電線建設コストが安価であることなどから、HVDCでの接続が有利とされています。このHVDCシステムへの適用を考えられているのが、複数の変換器セルを直列接続した MMCです。MMC が DC電圧を維持するには各セルの DC コンデンサ電圧のバランスを取る必要があり、私は交流系統電流と循環電流の逆相成分を用いた「相アームバランス制御」と「上下アームバランス制御」について研究を進めました。

成果はいかがでしたか。

橋本:制御がうまくいくことはシミュレーション上で確認してはいたものの、実機での検証には苦労しました。特に装置の仕様検討や選定には、多くの時間を費やしたことが記憶に残っています。制御の指令値を緩やかに上げてみるなどの試行錯誤の結果、初めて検証に成功したときは、一緒に研究していたメンバーと祝杯を挙げました。

研究室での思い出はありますか。

橋本:学会発表で函館に行ったことはいい思い出です。九州出身で関西の大学で学んでいた私にとって北海道は初めての土地で、旅行気分で出向きました。発表もうまくいき、仲間との観光も楽しかったです。

地域間連系線のダイナミックさに惹かれて

電源開発株式会社(J-POWER)への入社動機を教えてください。

橋本:大学院で研究をする中で、洋上発電の建設に携わっているゼネコンの社員の方に教えていただいたことがきっかけでした。実はそれまで私は電源開発という会社を知らなかったのですが、私の出身地の九州と本州を結ぶ送電線を保有しているのが電源開発と教わり、興味をもったのです。

地域間連系線ですね。

橋本:ええ。詳しく調べてみると、電源開発は電力会社の供給エリアをまたいで電気を送る地域間連系線を数多く保有していることがわかりました。今後再生可能エネルギーの需要が増すにつれて地域間連系線はますます重要になると思い、自分も全国の電力の安定供給に貢献したいと考えて、電源開発を志望しました。

インターンシップにも参加されたそうですね。

橋本:小精精鋭で、風通しのよい社風だと感じました。社員の皆さんの人柄が素晴らしかったことも、入社の決め手となりました。

万一の際もすぐに電力融通できるように

現在は電源開発グループで送電を担う電源開発送変電ネットワーク株式会社に所属し、佐久間送変電事業所でお仕事をされています。

橋本:よく知られているように日本の電力系統の周波数は、東日本で50Hz、西日本で60Hzに分かれており、異なる周波数の電力系統を直接接続することはできません。この壁を取り除き、東日本と西日本で電力のやりとり(融通)ができるようにしているのが、佐久間周波数変換所です。大震災などの災害時や電力逼迫時などにおける東西間電力融通の役割を担っており、電力の安定供給に欠かせない役割を果たしています。

一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、重要な施設ですね。

橋本:地域で電力系統の周波数が異なる国は世界でも稀で、日本ならではの施設と言えます。国内に周波数変換所は3ヵ所あり、最初に建設されたのが佐久間周波数変換所です。私はここで保守の業務を担当しています。

保守とは具体的にどのようなお仕事なのでしょうか。

橋本:毎週・毎月の定期巡視点検にて設備に異常がないことを確認することに加え、年に数回、設備を停止させての点検や補修、更新作業などを行っています。停止期間はできるだけ短いほうがいいので、数多くの作業を同時に管理するために事前の調整が重要となります。また頻繁ではありませんが、夜間や祝日に装置故障が出た場合は出所して確認を行うこともあり、24時間、健全性を保てるようにしています。

赴任されて約1年ですが、印象的だった出来事を教えてください。

橋本:一番印象に残っているのは、装置更新後の確認試験として実施した3社対向試験です。周波数変換所の制御保護装置の更新に伴って運転・制御ルートをオンライン化し今後の運転頻度増加に対応したのですが、実際の運用の前には、問題がないか確認する必要がありました。そこで当社、電源開発株式会社、東京電力パワーグリッド株式会社の3社で確認のための試験を行ったわけです。事前に各社の進捗状況を踏まえて試験日時や内容を調整し、無事に遂行できました。

やりがいの大きい仕事ですね。

橋本:近年では自然災害や著しい気象条件に起因する電力逼迫も増えており、緊急の電力融通が多く求められるようになりました。そのため佐久間周波数変換所でも、いつでも瞬時に運転可能な状態を維持しておかなくてはなりません。いざというときにもすぐに電力融通が行えるように準備しておくことに、大きな使命感を抱いています。

いつか海外でも活躍したい

学生時代に学んだ知識は、仕事の上でどのように活きていますか。

橋本:パワーエレクトロニクスの研究室に所属していましたので、研究で身につけた理論は現場で大いに活かされていると感じます。また入社1年目に電験2種を取得しましたが、これも学生時代に幅広い知識を身につけておいたおかげだと思います。

今後はどのような仕事にチャレンジしたいと思いますか。

橋本:現場保守の経験を活かし、直流・変電技術を活用した技術開発や研究開発に取り組みたいと思っています。具体的には2027年の運用開始を目指して進められている新佐久間周波数変換所のプロジェクトに参画し、学生時代に取り組んだMMCの研究成果を活かせたらと考えています。また私は学生時代に留学等の経験もあることから電源開発グループの海外事業にも関心があり、いつか海外で働く機会があれば挑戦したいと思います。

ボーダレスに幅広く学んでほしい

改めて電気工学の魅力について教えてください。

橋本:電気工学は社会に不可欠の学問であり、宇宙開発からナノテクノロジーまで、様々な領域で応用が進んでいます。学生時代の仲間も多様な業界で活躍しており、こうした幅広さが一番の魅力でしょう。

メッセージをお願いします。

橋本:今も申し上げたように幅広い分野で活躍できることが電気工学を学ぶ魅力ですが、それは多様な分野の多様な技術・知識をもった方々と一緒に仕事をするということでもあります。そのため様々なバックグラウンドをもつ専門人材が最先端の研究を進めている大学という環境で、専門分野の垣根を越えて知識を吸収していただきたいと思います。

ありがとうございました。

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