vol.35 信州大学

電磁界を応用した先進研究で 暮らしを便利にするものづくりに貢献したい。

学生インタビュー vol.35

電磁界を応用した先進研究で 暮らしを便利にするものづくりに貢献したい。

信州大学 水野研究室
河合亮典さん、山本達也さん、中山徳人さん

信州大学の水野研究室は、多数の企業と共同研究を行っており、磁気に関する幅広い研究テーマをお持ちの研究室です。また水野勉教授の「社会へ出てすぐに通用する技術者・研究者を育てる」という方針のもと、学生への教育も熱心に取り組んでいます。今回、話を伺った3名の学生は、まるで企業の研究室に所属しているような大きな責任感と志を持って研究に取り組んでいました。

※2015年8月現在。本文中の敬称は略させていただきました。

“動くもの”がテーマの研究室に魅力を感じた

電気工学を志望された理由を教えてください。では修士2年の山本さんからどうぞ。

山本:中学生頃に携帯電話が普及して、デザインや機能が格好いいと思っていました。また、私の父親も自作PCをやっていて、家の中にマザーボードが置いてあったような環境でしたので、電子機器に自然と興味を持ったのがきっかけですね。

なるほど。それで電気工学科を志望されたわけですね。

山本:はい。理系が得意だったことや、就職に強いと言った話も聞いていたので、進路は工学部の電気・電子工学科へ進むことに決めていました。

水野研究室へ進学された理由を教えてください。

山本:水野研究室の研究テーマであるリニアモーターなどは“動くもの”なので面白いと思っていました。また非接触給電分野も、新しい研究テーマなので興味がありましたね。

それでは修士1年の河合さん、お願いします。

河合:高校時代は物理部に入っていて、放射線の一種であるアルファ線を主に研究していました。実験も面白いと思っていたので、工学系には進もうと考えていました。

電気工学に進んだのは、高校の先生に勧められたからだそうですね。

河合:ええ。「就職に強いから電気・電子はどうか」みたいな感じで言われました。水野研究室へ入った理由は、信州大学の電気工学科全体で“ものを動かす”研究、すなわちモーターやアクチュエーターの研究をしているのが水野研だけだったので魅力に感じましたね。

中山さんは学部4年ですから、2015年の4月から水野研究室ですね。

中山:はい。きっかけは父親が理科の教師で、家で実験などをやってくれて直接教えてくれたことです。ですから、もともと理系の勉強は、好きで得意でした。工学部へ進んだ理由は、理系の勉強の中でも物理が好きだったからです。

工学の中でも、電気へ行かれた理由は何ですか。

中山:決め手になったのは、高校の先生に見せてもらった『工学の就職率ランキング』で、電気が一番だったことです。また水野研究室へ進んだ理由は、非接触給電に興味があったからです。有線でつなげなくても給電できる、そのこと自体が夢のようでしたね。

非接触給電を用いた医療用「体内ロボット」の研究

中山さんの研究内容を教えてください。先ほどから話に出てくる非接触給電に関する研究だそうですね。

中山:そうです。非接触給電を用いた医療用「体内ロボット」への応用研究をやっています。具体的には、身体に与える負担の少ないカプセル内視鏡(※1)などの「体内ロボット」への応用研究です。一般的に胃カメラを飲むのは人体にとって負荷がかかりますが、それをカプセル型の錠剤のような内視鏡で飲んでもらうと負担が少なくなります。

確かに胃カメラを飲むよりカプセルの方が楽ですね。なぜ非接触で給電するのですか。

中山:現行のカプセル内視鏡は、ボタン電池を用いて電力を供給しているんです。しかしボタン電池はカプセルの体積の約半分を占めており、小形化の障害となっています。また、電池切れの恐れもあります。したがって電力を非接触で供給していこうというのが、本研究の目的です。

具体的には、どのような仕組みで非接触給電を行うのですか。

中山:電池の部分を受電コイルに入れ替えます。そのコイルが外部磁界によって電力を得られるという仕組みです。コイルは電池より小さいため、容量も大きく、外部磁界を与えるだけで電力が常に得られるのでバッテリー切れの恐れもないのです。

非常に夢のある研究ですね。課題は何ですか。

中山:非接触給電で磁界を送るのですが、人間の体が受けていい磁界は“磁界曝露”というガイドラインが決められていて、現段階ではそれを超えてしまうケースがあります。また、電池よりも電力を取り出せる効率が悪いなどといった問題もあります。今後はカプセル自体が動く「自走機構」や「位置検出」なども研究予定です。

研究において印象的だったエピソードを教えてください。

中山:コイルの導線が切れたり、基板を駄目にしてしまうなど、何回も失敗を繰り返した後に、良い実験結果が出たときは苦労した分、すごく達成感を得られますね。この研究は助成金をいただいていて、今後、研究成果を報告する機会もあるので頑張っていきたいです。

「机の上は給電コイルを模擬したものです。この給電コイルが埋め込まれたベッドに、カプセル内視鏡を飲んだ患者に寝てもらって、受電コイルへ磁界を送ります」中山さん。

「受電コイルはカプセルの中に入るコイルなので導線も細く、それを3軸方向に約100回ずつ巻きます。髪の毛より細い導線を巻いているので、細心の注意を払います」中山さん。

(※1)カプセル内視鏡とは小型カメラを内蔵したカプセル状の内視鏡で、主に胃などの消化器系を検査するときに使用する。

バックナンバー

バックナンバーを絞り込む

研究キーワードから探す

大学の所在地から探す

サイト更新情報をお届け

「インタビュー」「身近な電気工学」など、サイトの更新情報や電気工学にかかわる情報をお届けします。

メールマガジン登録