vol.4 九州大学

学生インタビュー vol.4
電気で、身近な暮らしを楽しくしたい。女性技術者として活躍したい。
九州大学 末廣研究室
舞 香織さん、小手川 誠さん
九州大学の末廣研究室は、静電気工学や高電圧パルスパワー工学のバイオテクノロジーおよびナノテクノロジーへの応用に関する研究に取り組んでいます。これらの最先端テクノロジーは、私たちの身近な生活や暮らしを豊かにしてくれます。
※2009年6月現在。インタビュー中の敬称は略させて頂きました。
きっかけは、ロボットや家電が好き
小手川さんは、大学受験のとき、なぜ電気工学を専攻されたのですか。
小手川 誠(以下、小手川):私は、九州大学工学部の「電気情報工学科」という名前ですね(笑)。元々、私は自分でホームページを作成していました。また、将来はロボットをつくりたいなぁという夢も持っていました。それで、「インターネット=情報」「ロボット=電気」ということで、各々に関わる研究ができると思い「電気情報工学科」という名前に惹かれて進学しました(笑)。
舞さんはいかがですか。
舞 香織(以下、舞):私の実家は、父親と母親と妹の4人家族なのですが、家でPCの修理や配線をつなげるのが私の担当だったというのがきっかけです。父親が仕事へ行くと女3人が残りますよね。それでなぜか私がやるようになって、だんだんと家電が好きになってきたというわけです(笑)。
それから大学院へ進まれるわけですが、末廣研究室を志望された理由は?
小手川:末廣研究室を志望したのは、「カーボンナノチューブ」という最先端の研究をやっていたからです。新しいことをやりたいと思っていました。
舞さんは?
舞:私は学部時代、電力系統のシミュレーションなどをやっていました。ちょうど、このインタビューの大阪大学の方と全く同じ研究です。それで、電力の勉強を活かせる研究室が、九州大学では末廣研究室だったというのが大きな理由です。あとは、実験にも興味がありました。
ナノテクノロジー=10億分の1メートルを操る技術
おふたりとも同じ研究をされているのですか。
舞:はい。私たちを含めて3人でチームを組んで、小手川さんがリーダーです。
では、小手川さんに研究内容を伺います。簡単に言うと、どのような研究をなさっているのですか。
小手川:一言で言えば、電気の力を利用してカーボンナノチューブを使ったガスセンサをつくるという研究です。今まで誰もがやっていない、新しい研究です。
カーボンナノチューブとは何ですか。
小手川:カーボンナノチューブとは、カーボン(炭素)でできた、直径がナノメートル(10億分の1メートル、髪の毛でいうと1万分の1のサイズ)のチューブ状の物質です。カーボンナノチューブは、これだけの細さでありながら、ダイヤモンドと同等の強さを持ち、銅の約1000倍の電流を流すことができます。その他にも電気抵抗が少なく、銅の10倍の熱伝導率を持つなど、多くの優れた性質を持っています。そのため、様々な分野に応用が期待されている、新物質です。
凄いですね。例えば今、多くの電気機器には銅が使用されていますが、それがカーボンナノチューブになれば大きな進化が期待されますね。ガスセンサとは何ですか。
小手川:ガスセンサとは、特定の気体の濃度に反応するセンサのことを指します。私たちの身近なところですと、ガス漏れを感知すると警報音で知らせるセンサがありますね。でもそれだけではなく、例えば、汚染物質の検出や麻薬・地雷の探知、個人認証や食品開発など、多くの用途で活用が期待されています。
なるほど。それでは、どのようにカーボンナノチューブを使ってガスセンサをつくっているのですか。
小手川:カーボンナノチューブは小さすぎて、そのままだとセンサに応用ができないのです。そこで私たちは誘電泳動(※)という現象を利用して、カーボンナノチューブをガスセンサに利用しています。誘電泳動で微弱な力を利用することで、ナノサイズの微粒子をコントロールできるのです。
最終的には、どのようなガスセンサが生まれるのですか。
小手川:例えば、アンモニアや二酸化窒素などの環境汚染ガスを、ppmレベル(100万分の1)で高感度に検出できる性能を持つガスセンサの開発に成功しています。ナノレベルに感知ができるガスセンサです。
つまり、皆さんが手掛けている研究は、ナノテクロジーということですね。
小手川:そうです。元々、末廣先生は、誘電泳動を使って、食物から細菌を検出する研究をしていたそうです。今、騒がれている食の安全を守るためです。そこで今度はガスセンサに誘電泳動を応用したというわけです。
※誘電泳動とは、電気力学現象の一種で、不均一な電界中に置かれた浮遊粒子が電界の強い領域もしくは弱い領域に駆動される現象を言う。
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