vol.4 パナソニック株式会社
社会人インタビュー vol.4
エコキュートをもっと便利に。電気工学で地球環境を守る。
パナソニック株式会社
山口繁さん
パナソニック株式会社 ホームアプライアンス社は、パナソニックにおける家庭電化・冷熱空調の事業領域を担当し、私たちの身近な生活環境に役立つ商品を提供しています。今回の社会人インタビューに登場頂いた山口繁さんは、エコキュートを開発する初期の段階から設計・開発に携わっている、第一人者とも言うべきエンジニアです。
プロフィール
- 2000年
- 岐阜工業高等専門学校 専攻科 電子システム工学専攻修了
- 2002年
- 豊橋技術科学大学 大学院 電気・電子工学専攻修了
電気システム大講座 クリーンエネルギー変換工学 恩田研究室 - 2002年
- パナソニック株式会社入社
※2009年7月現在。インタビュー中の敬称は略させて頂きました
モノづくりが好きで、電気系の高専へ
山口さんは高専出身者と伺いましたが。
山口繁(以下、山口):はい。高専に5年。その後、高専の専攻課程に2年在籍していました。高専の専攻課程は、修了すると学士の単位を取得でき、大学院へ進学できます。私は、高専で電子制御工学を専攻していました。これは、簡単に言えば「どうやって電気をコントロールするか」という研究です。
ということは、中学生の頃から電気に関わる仕事をしたいという希望があったわけですね
山口:そうですね。元々、親が建築業を営んでいて、その影響でモノづくりが好きだったことと、親戚の人が家電の販売員で、幼い頃から電気製品に接する機会が多かったので、小さいころから電気製品を作りたいという希望がありました。電気製品はよく分解して遊んでいました。元に戻らないこともありましたが(笑)。
高専に進んだということは、技術者志向もその頃からありましたか。
山口:職人である父親のように、専門技術を活かした仕事をしたいという希望がありました。建築も良かったのですが、電気はいろいろな分野に応用されており、活躍の場が非常に多いと考えて電気系の高専へ進みました。
高専時代の思い出を教えて下さい。
山口:授業で、ロボットをつくったことですね。テレビでやっているロボコン大会と同じ感じで、学生がチームに分かれてロボット競技を行いました。
山口さんのチームはいかがでしたか。
山口:残念ながら完走はできませんでした(苦笑)。ロボットが球をゴールまで運ぶという競技内容で、相手を妨害出来るというルールでしたが、私たちのチームは見事に妨害されました(笑)。でも、半年間かけてロボットをつくったので達成感はありました。やはりカタチになるということが、エンジニアの醍醐味ですから。
クリーンエネルギーに関わる研究
それから豊橋技術科学大学の研究室へ進まれたわけですが、どのようなことを研究していたのですか。
山口:私は「クリーンエネルギー変換工学」を研究していました。具体的に言うと、燃料電池の応用研究です。燃料電池とは、水素と酸素を利用した次世代の発電システムのことです。燃料電池は、水(H2O)の電気分解と逆反応で電気をつくります。私たちはその仕組みを利用して冷却装置をつくる研究をしていました。
エコに関わる研究ですね。
山口:はい。当時(1999年前後)は、ハイブリッド車が誕生するなど環境が話題になった頃です。電気を使って環境を良くする研究をしたいという希望で、研究室へ進みました。
では、研究室で思い出に残っているエピソードを教えて下さい。
山口:研究室に、自動計測システムを導入したことです。予算組みから始めて、メーカーの選定、システムの選択など、最初から最後まで全て私が中心となって、導入したことは思い出に残っています。予算規模も大きかったので、学生だった自分にとって驚きの連続でした。
なるほど。他に何かありますか。
山口:研究以外の話ですが、鍋パーティーを頻繁にやっていたことも思い出に残っています(笑)。夜遅くまで研究をやって、最後は鍋を囲んでお互いを慰労するという感じで楽しかったです(笑)。
学生時代らしいエピソードですね(笑)。
エコキュート開発には、電気工学が不可欠
パナソニックへ入社された理由を教えて下さい。
山口:高専に進んだ理由と重複しますが、家電に関わる仕事をしたかったということです。院の研究は、エネルギー変換工学でしたので、応用可能な自動車か家電か迷ったのですが、子供の頃からの思いを優先しました。
それでは、入社してから現在に至るまでのお仕事を教えて下さい。
山口:入社して最初の2~3年はエアコンの設計・開発に関わっていました。その後は、ずっとエコキュート製品に携わっています。エコキュートとは、冷媒にCO2を使用したヒートポンプ給湯機のことです。大気中の熱をくみあげ、その熱を効率よく水に移してお湯を沸かします。自然エネルギーを利用してお湯を沸かすので、燃焼式給湯器に比べて、CO2排出の大幅な削減が可能となります。
具体的にエコキュートへどのように関わっているのですか。
山口:エコキュートは、お湯を貯める貯湯ユニットと、お湯を沸かすヒートポンプユニットがあります。私はそのヒートポンプユニットの電装品の設計・開発に携わっています。
電装品とは何ですか。
山口:ヒートポンプユニットは、圧縮機や膨張弁などで構成されていますが、それらの部品を作動させるための電気制御装置です。圧縮機や膨張弁やファンモータなどがヒートポンプユニットの心臓や手足とすると、それらを動かすための脳が電装品と言えば分かりやすいでしょうか。
つまりヒートポンプユニットには不可欠な装置というわけですね。その電装品に電気工学はどのように貢献しているのでしょうか。
山口:電装品は、ただ動作するだけでなくインバータなどから発生するノイズへの対策や、過酷な使用環境でも安定して動作するための動作マージン確保といった、様々な配慮が必要です。しかも、それらを低コストで実現する必要があります。その実現のためには電気工学の回路技術や電子部品に関する知識は不可欠です。また、学生時代に学んだエネルギーの変換効率向上の取り組みも、高効率なエコキュートを開発する上で非常に役に立っています。
環境技術が評価され「省エネ大賞」を受賞!
今のお仕事をされていて、一番嬉しかったことを教えて下さい。
山口:モノづくりに関わっている人なら誰でもそうかもしれませんが、自分が関わった製品が、世に出ることです。エコキュートはちょっと特殊な製品で、普通の家電量販店には置いていませんが、たまに大型の家電量販店などでオール電化のコーナーが設置されたときは自然と立ち寄りますね(笑)。また、一般家庭に設置されているのを見かけたときも嬉しいですね。
技術者の一番の醍醐味ですよね。
山口:そうですね。私はエコキュートを開発する初期から携わっており、現在のカタログ製品は全てに私が関わりました。だから、特に思い入れが大きいです。
最新モデルは、どのような感じですか。
山口:ちょうど最新モデルを7月10日に発売したところですが、昨年度発売したモデルは、「平成20年度 第19回 省エネ大賞 資源エネルギー庁長官賞」を受賞しました。これは、ヒートポンプユニットの高効率性、貯湯ユニットの保温性能、生活スタイルに応じて最適な沸き上げ運転を行う学習制御などの省エネ技術が評価されて受賞したものです。自分が関わった製品が、「省エネNo1」に認められたことは本当に嬉しかったです。毎年、とにかく性能を良くしようと頑張っていますから。技術者の力が評価されたと思っています。
電気工学を学んで、地球環境を守ろう!
電気工学を学んでよかったことを教えて下さい。
山口:一番は、今の仕事に携われたことです。モノづくりという好きな仕事で、環境に貢献できる実感が持てたことはよかったと思います。あとは、電気に対するうんちくが語れることですね。奥さんにも時々聞かれますが、「雷ってこういうふうに発生するんだよ」と偉そうに語っています(笑)。
では、これから電気工学を学ぼうとされる方にメッセージを頂ければと思います。
山口:この先、ますます電気は環境に対する役割が大きくなります。エコキュートもそうですが、車が電気自動車化するなど、CO2削減や省エネルギーのために電気工学は欠かせない学問になってくると思います。ぜひ、電気工学を学んで、私と一緒に地球環境を守りましょう!
力強いメッセージをありがとうございます。最後にこれからの山口さんの夢や目標を教えて下さい。
山口:エコキュートの省エネ性を突き詰めたいという思いがあります。同じ話の繰り返しになりますが、それがお客様のためになり、結局は地球環境のためになるからです。自分が持っている電気工学の知識をぜひ環境に活かしていきたいです。
本日は、ありがとうございました。さらに環境にやさしいエコキュート製品をこれからも開発されることを願っております。
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