vol.5 京都大学

学生インタビュー vol.5
超伝導で、がん治療に貢献したい。省エネルギーを実現したい。
京都大学 雨宮研究室
岡田 奈々さん、竹内 活徳さん
京都大学の雨宮研究室は、エネルギー・メカ分野、医療・バイオ分野を中心とした幅広い分野への超伝導技術の応用を目指しています。送電ケーブルやモータなどの各種電気機器の高効率化や、がん治療用加速器の高機能・コンパクト化など、私達の身近な暮らしを豊かにする研究を日々行っています。
※2009年6月現在。インタビュー中の敬称は略させて頂きました。
超伝導は子供の頃からの憧れ(竹内)、電気で医療に貢献できる(岡田)
竹内さんは、電気工学をなぜ専攻されたのですか?
竹内 活徳(以下、竹内):高校の授業の中では、物理が得意だったことが大きいですね。それで大学へ進学するときは、理学部か工学部か迷いましたけど、実用的に世間に活かせるのは工学部かな、と思ったのがきっかけです。
工学部の中でも、なぜ電気系を志望されたのですか?
竹内:やっぱり物理の中でも、電気は日常生活に溢れているので、親しみやすかったことです。熱力学とかは正直、実感が持ちづらいですし(笑)。電気は日常にあるので分かりやすいと思い、電気系へ進みました。
岡田さんは、いかがですか。
岡田奈々(以下、岡田):私は、父親が小さいときからパソコンやビデオカメラ、テレビなんかを修理してくれて、なんかいいなぁと思って(笑)。父親の影響でもともと、電気関係に親しみがあったのが大きな理由です。
なるほど。それで、お二人とも学部から院へ進むわけですが、雨宮研究室への志望理由を教えて下さい。
竹内:やはり超伝導を手掛けている研究室ということですね。子供の頃から、リニアモーターカーで超伝導は凄いものだという憧れがありましたから。
超伝導は21世紀の最先端技術ですからね。岡田さんはいかがですか。
岡田:私も超伝導に惹かれましたね。あと、高校のときに、漫画やドラマに憧れて(笑)、実は医学の道もいいかなと考えていたことがあったのです。それで、雨宮研究室は、超伝導の医療応用の研究をしていると聞いて迷い無く選びましたね。
電気工学の道でも、医学に貢献できたわけですね。
超伝導ケーブル、重粒子線がん治療、最先端の研究に挑む
竹内さんは今、どのような研究をされていますか。
竹内:私は、超伝導を応用した送電ケーブルの研究です。今、送電ケーブルには主に銅が使用されているのですが、銅ですと電気抵抗があるため、電力ロスなどの問題が発生してしまいます。これを超伝導体に置き換えれば、電気抵抗がないため、現在よりもはるかに高効率な送電ケーブルとなるわけです。
省エネルギーを実現できる、代表的な超伝導応用と言われている研究ですね。当然、企業と一緒に研究しますよね。
竹内:はい。主に電線をつくっている会社さんが多いですね。研究室と企業、それぞれお互いの研究をすりあわせて一緒に開発していきます。企業の皆さんと今までにないモノをつくっていくのは、非常にやりがいがありますね。あと、学会での発表もかなりあります。それから、うちの研究室は、超伝導送電ケーブルに関する経済産業省の研究開発プロジェクトにも参画しています。
学生時代から凄い研究に関わっていますね!
岡田さんはどのような研究をされていますか。
岡田:私は、先ほどの超伝導の医療応用です。「がん治療用重粒子加速・照射装置」に高温超伝導マグネットを応用する研究を行っています。
「がん治療用重粒子加速・照射装置」とは何ですか。
岡田:炭素イオンなどの重粒子を高速に加速し照射することで、がん細胞を殺傷する装置のことです。がんの位置、大きさや形状に合わせて線量を調節して治療ができ、手術をする必要がないので、QOL(Quality of Life=生活の質)を重視した新しい治療法として、今注目を集めています。
その加速器に超伝導をどう応用しているのですか。
岡田:加速器は磁界による力※で粒子の誘導・制御を行っています。その磁界を発生させるためにマグネットが使用されているのですが、これを超伝導マグネットに置き換えることができれば、装置をコンパクトにしたり、コストを削減したりすることができるのです。
つまり超伝導応用がもっと進めば、最先端のがん治療器がさらに普及するわけですね。
岡田:そうですね。私たちの研究が実現すれば、もっと加速器が普及して、日本のがん治療は飛躍的な進歩を遂げるはずです。
※ ローレンツ力と言われる。磁場中を運動する荷電粒子に作用する力のことを指す。
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