vol.43 株式会社日立製作所

電力インフラを支える仕事を通じて、環境保護などの社会貢献を続けていきたい。

社会人インタビュー vol.43

電力インフラを支える仕事を通じて、環境保護などの社会貢献を続けていきたい。

株式会社日立製作所
宮原 秀幸(みやはら ひでゆき)さん

「世の中に貢献できる仕事がしたい」という志で電気工学の道に進んだ宮原さん。学生時代に取り組んだ環境負荷の小さい絶縁媒体の研究成果を、現在の変圧器の設計・開発という業務にも反映させるなど、社会貢献と環境保護というテーマを貫いてこられました。今後もその歩みを続け、電力インフラの様々な課題を解決できる人材を目指したいとお考えです。

プロフィール

2005年3月
東京電機大学 工学部 電気工学科 卒業
2007年3月
東京電機大学大学院 工学研究科 電気工学専攻 修士課程修了
2007年4月
株式会社日本AEパワーシステムズ(日立製作所、富士電機、明電舎の合弁会社)入社
2012年4月
同社合弁解消による事業継承に伴い、日立製作所に転籍
2019年7月
エネルギービジネスユニット エネルギー生産統括本部 送変電生産本部 変圧器設計部 中形変圧器設計グループ

※2019年7月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

リンゴに落雷させる実験を見て研究者の道へ

宮原さんが電気工学を学ぼうと思われた動機を教えてください。

宮原:もともと理系科目が得意で、中学時代にはトランジスタラジオを作るなど、ものづくりに興味がありました。電気工学科なら電気、電子、情報、数学、物理、化学などを幅広く学べ、さらには文系の授業もあるということから、様々な学びを通じて将来に向けて興味を持てる何かが見つかるのではと考えました。

具体的にこんな仕事がしたいというイメージはお持ちでしたか。

宮原:いいえ、将来に対しては、世の中に貢献できる仕事がしたいという漠然とした想いでしたね。

学生時代はパワーシステム研究室に所属されていたそうですね。

宮原:ええ。大学3年生の時に研究室見学を行った際、ある研究室の実験を見て大変驚きました。インパルス発生装置で雷を発生させてリンゴに落雷させるというものでした。それまで電気というのは数式や検針でしか存在が確かめられないものだと思っていたのに、このとき、初めて電気を目にすることができたのです。そのインパクトは大きく、自分も高電圧工学を学びたいと思いました。その研究室が、送変電機器の基礎研究をしていたパワーシステム研究室だったのです。

環境負荷の少ない代替絶縁媒体の研究に取り組む

パワーシステム研究室ではどんな研究に取り組まれましたか。

宮原:研究室では主に電力機器の開閉装置や変圧器に使われる絶縁媒体の研究を行っており、環境負荷の少ない、新しい代替絶縁媒体の研究に取り組んでいました。その中で私は、シリコーン液(※1)を代替絶縁媒体として用いることを目的に、絶縁特性の評価を行いました。
(※1)合成高分子化合物の無色透明の液体で、耐熱性、耐寒性、酸化安定性に優れている。

非常に社会貢献性の高い研究ですね。

宮原:はい。液体の絶縁媒体として通常使われる絶縁油は土壌汚染や資源枯渇の懸念があり、また、気体の絶縁媒体として通常使われるSF6(六フッ化硫黄ガス)は地球温暖化への影響が心配されています。その点、シリコーン液は環境や動植物に無害で、かつ防災性に優れ、地下資源を用いない持続可能な絶縁媒体として注目されていました。電力インフラを支える送変電機器も環境問題や資源問題を抱えており、私はこの研究を通じてそうした問題の解決に貢献できることに喜びを感じていました。

研究室での思い出を教えてください。

宮原:学会発表でインドネシアへ10日間の旅をしたことが思い出に残っています。私にとって初めての海外でした。仲間と一緒にバリ島を観光したことは、いい思い出です。学会発表そのものは大変緊張し、慣れない英語にも苦労しました。それでも海外の多くの研究者から大変好評でした。

どんな点が評価されましたか。

宮原:シリコーン液の絶縁試験のデータ取得には非常に時間がかかり、1つのデータを取るために20時間も必要で、それを何回も繰り返す必要がありました。そのため研究室に泊まり込む毎日だったのですが、こんなに時間のかかるデータをまとめ上げた、という点が特に評価されたと思います。苦労した研究だっただけに、私も大きな達成感を得ることができました。

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