vol.19 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

エネルギー・環境問題の解決と、 日本の産業を強くしたい。

社会人インタビュー vol.19

エネルギー・環境問題の解決と、 日本の産業を強くしたい。

独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) スマートコミュニティ部
田中 博英(たなか ひろひで)さん

独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、日本の「エネルギー・環境技術」「産業技術」などの技術開発を、総合的かつ国際的に推進する政策実施機関です。今回、インタビューにご登場いただいた田中博英さんは、スマートコミュニティの第一線でご活躍されています。まだなじみが薄いスマートコミュニティについて、そして電気工学の重要性について、丁寧に教えていただきました。

プロフィール

2003年4月
早稲田大学 理工学部 電気・情報生命工学科入学
2005年9月
早稲田大学 理工学部 電気・情報生命工学科 岩本研究室配属
2009年3月
早稲田大学大学院 先進理工学研究科 電気・情報生命専攻 修士課程修了
2009年4月
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)入講
2010年7月
スマートコミュニティ部へ配属。現在に至る。

※2012年11月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

数学は苦手でしたが、理科は好きでした(笑)

電気工学を志望された理由を教えてください。

田中:今振り返ると、幼稚園の頃リニアモーターカーの映像を見て超電導への興味を持ったのが、電気工学を志望したきっかけだった気がします。とにかく浮いているのがすごいと思った記憶があります(笑)。

その後、理系の道を進まれるわけですが、数学や理科が得意でしたか。

田中:理系の科目は好きでしたが、数学はどちらかというと苦手でした(苦笑)。一般的に理系というと、いわゆる論理的思考を持っている人が多いと言われますが、私はどちらかというと訓練しないと解けない人間でしたので(笑)。

そして、2003年の4月に早稲田大学の理工学部、電気・情報生命工学科へ入学されますね。

田中:ちょうど私は、電気・情報生命工学科の第1期生でした。それまでは電気、電子、情報を扱う学科だったのですが、それに加えて生命工学を統合した学科となったのです。背景としてその頃、学際領域(ある特定の学問分野と学問分野の境目にある領域)が注目され始めた時期でもありました。私はこの電気・情報生命工学科に興味を持ち、また超電導の研究もやりたいと思って入学しました。

超電導を志望された田中さんが、電力システムを専門とする岩本研究室に入られたのは、なぜでしょうか。

田中:色々と理由はありますが、インフラに漠然と興味を持ったことが挙げられます。理系の学生として、もの作りには当然興味はありましたが、その基になるエネルギーの安定供給の重要性に気がつきました。

学生だけでアメリカの国際学会で発表しました

岩本研究室ではどのような研究をされていましたか。

田中:電気事業の規制緩和や再生可能エネルギー導入など、以前とは取り巻く環境が変わってきた電力系統をいかに安定に運用するかなどの研究を行っていました。安定的に新電力(特定規模電気事業者)が参入可能な量を増やす手法の研究や、系統に落雷などの事故が起きた際に電圧を安定に保ちながら、いかに効率的に運用を行うかといった研究です。

この研究は田中さんご自身でテーマを設定したのですか。

田中:はい。岩本先生と大学院の先輩の方々からテーマをいただいた上でそれを発展させました。先生のご指導、先輩、同期、後輩と議論しながら研究の方向性を考えていきました。結構、熱い議論を交わしましたね(笑)。

研究室の思い出はどんなことがありますか。

田中:学会発表が印象に残っています。国際学会に1回(アメリカ・ニューメキシコ州)と、国内学会(電気学会の全国大会、B部門大会、電力技術・電力系統技術合同研究会)に3回、発表させていただきました。

学会でのエピソードを教えてください。

田中:アメリカ・ニューメキシコ州へ行ったことは思い出深いです。岩本先生は同行せずに、学生3人だけで行きました。そのうち1人が帰国子女だったので大丈夫だろうと言われて。大丈夫ではなかったのですが(笑)。発表が最終日だったこともあり、初日から最終日まで、気の休まることもなく、終わったときには本当にホッとしました(苦笑)。

それは思い出深いですね。学会に参加されてどんなことを得られましたか。

田中:自分の研究をいかにわかりやすく伝えるか、想定される質問にどう答えるか、などをトレーニングできました。また、学会の場で他大学の研究室の人とも仲良くなり、未だに交流が続いています。

「エネルギー」と「行政」に関わりたくてNEDOを志望

NEDOに入構(入社)された理由を教えてください。

田中:就職活動当時、私が専攻していた電力系統・電気事業では規制緩和の議論が為されており、行政の役割に非常に興味を抱きました。そこで、「エネルギー」、「行政」という二つのキーワードに関わる職を考えたときに、国と、実際に技術を手がける企業・研究機関との間を結び、社会へ還元していく仕組み作りに参加できるNEDOに入構しました。

NEDOへ入られて手掛けられたお仕事を教えてください。

田中:最初は燃料電池技術と水素技術の開発を行なう部署に配属されました。この部署で開発に取り組んだ家庭用燃料電池は、日本が世界に先駆けて実用化したものです。私は総括という役割で、部内と部外、NEDOと外部をつなぐといった全体調整を行っていました。

そして、2010年7月からスマートコミュニティ部へ移られましたね。

田中:はい。NEDOは太陽光や風力などの再生可能エネルギー技術の開発や、これらを電力系統に連系し、電力システムとして活用する技術の開発と実証を行なってきました。スマートコミュニティ部は、ここに需要側の視点を加えるとともに情報技術を活用し、より効率的なエネルギーシステムの開発と実証を行なうことを目的に、2010年7月に新設された部署です。アメリカのニューメキシコ州など、海外での実証事業や、スマートコミュニティの重要な要素である蓄電技術の開発を行なっております。また、様々な技術を組み合わせシステムとして動かしていくことが大切なため、様々な業界を束ねていく組織として、スマートコミュニティ・アライアンスの立ち上げと運営に関わっています。

スマートグリッドを含めた新社会システム"スマートコミュニティ"

まだ新しい概念なので"スマートコミュニティ"についてご説明いただけますか。

田中:まず"スマートグリッド"についてご説明いたします。従来の電力は、発電所から需要家へ一方的に流れるシステムを想定して作られていました。しかし、太陽光発電(PV)や風力発電等の再生可能エネルギーが導入されることにより、今まで電気を使う立場の需要家が電気を発電する立場になって、電力系統の中で需要家が発電した電気をどう制御するのかといった問題が起きます。これに対して、情報通信技術を用いて情報とエネルギーの流れを、一方向ではなく双方向で効率的に制御しようという概念が、スマートグリッドです。

はい。それではスマートコミュニティとは何ですか。

田中:情報通信技術を取り込んでできることは、エネルギー制御だけではなく、水道などの他の公共インフラや交通システムなどの多様なサービスにも適用可能です。例えば電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV)の場合、充電する場所がインフラとして重要になります。また、電力系統全体から見ると、EVは、電力を消費する負荷であり貯蔵する装置でもあります。

単純にユーザーから見ると車は、移動の手段でもありますね。

田中:そうですね。そこで従来のスマートグリッドだけではなく、熱エネルギーや交通システム、ビル、公共サービスなどの利用まで含めた社会システムや街づくり全体を考えていく中で、スマートコミュニティという概念が生まれたわけです。

スマートコミュニティの図

スマートコミュニティが実現しますと、国民一人ひとりにどんなメリットがあるのですか。

田中:スマートコミュニティの目指す姿は、そこに住む人たちが自律的にかつ持続的に環境やエネルギーに優しい行動を取るというものです。例えば、家庭では、エネルギーの見える化によって消費電力の削減につながったり、安い電力料金でEVの充電を行ったり。このように特段意識せずに取る行動が、電力系統面から見ると再生可能エネルギーの親和性を上げることにつながり、今までよりもっとPVや風力発電が導入されるようになるでしょう。また、これら分散電源による自立的なシステムが構築されることで、災害にも強いエネルギー供給システムが実現できると考えられます。

スマートハウス用の展示会模型です。米国・ニューメキシコ州における日米スマートグリッドの実証試験の模様となります。

現在、スマートコミュニティについてどのような取り組みがなされていますか。

田中:日本では、経済産業省とNEDOがスマートコミュニティを推進しています。具体的には、日本国内では経済産業省が、横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市で、大々的なスマートコミュニティの実証を行っています。一方、NEDOは海外での実証を行なっており、アメリカのニューメキシコ州やハワイ、フランスのリヨンなどで実証を展開しております。

朝・昼・夜・雨と、時間の変化で電気の流れを見せています。

日本の蓄電池産業の競争力を強化する蓄電池開発の企画マネジメント

スマートコミュニティ部の中で田中さんは、どんな仕事をやられているのですか。

田中:現在の私の主な仕事は、蓄電技術開発の企画・立案、マネジメントです。まず、蓄電池開発の背景からご説明しますと、元々、蓄電池は、2000年代前半まではほとんど日本企業の独壇場だったものが、最近では、特に小型民生用と呼ばれる携帯電話などのリチウムイオン電池の市場シェアを、韓国や中国メーカーに取られている状況になっています。

蓄電池の市場は、新興国に日本は押され気味なんですね。

田中:ですが、こうした中で今後、蓄電池の大きな利用方法として注目されているのが、エネルギーマネジメントを実施するための需要家(家庭やビル等)に置かれる蓄電池、電力系統に設置する蓄電池、それからEVやPHEVなどの次世代自動車用の蓄電池、この3つです。こうした状況の中、2012年7月に、経済産業省が蓄電池戦略を打ち出しました。これは、2020年にこれら3つの蓄電池について世界市場シェアの50%を日本企業で取るという、大きな目標を掲げているものです。

需要家用の蓄電池について教えてください。

田中:需要家用の蓄電池は、震災以降、停電したら困るという消費者心理もあって、震災後すぐに各電池メーカーが販売を始めました。現在、国が蓄電池の購入にあたって補助金を出しています。

電力系統用の蓄電池はどんな状況ですか。

田中:電力系統用の蓄電池は、導入される再生可能エネルギーの出力変動等に対応するものですが、導入に向けては蓄電池の寿命やコスト面などにまだ課題が残っています。

EV用の蓄電池はどんな状況ですか。

田中:EVは、アイ・ミーブやリーフなど国内自動車メーカーが発売していますが、一般ユーザーが買おうとしたときに、航続距離(フル充電で走行可能な最大距離)がまだまだ短いことや、充電器の設置が少ないことが大きな不安点です。そこでNEDOは、電力系統用蓄電池についてはその安全性を徹底的に高め、低コスト化していき、次世代自動車用蓄電池については、コスト低減と、いかに多くの電気を貯められるかという技術開発の企画・マネジメントなどを行っています。

実際にはどのような流れで仕事を行っていますか。

田中:一例ですが、昨年(2011年)から今年(2012年)にかけて、自動車用蓄電池の開発プロジェクトを新たに立ち上げました。まず、企業の方々には各社が目指す技術開発の方向性などを、大学の先生方には皆様が持っている知見などをヒアリングしました。

その後はどうされるのですか。

田中:ヒアリングした情報を基に、実用化までに長く時間が掛かるものや、1社だけでは難しい技術開発について、我々が“どれぐらいの予算があればこういう開発ができます”といった全体像を描きました。それをNEDOの所管省庁である経済産業省と一緒に、財務省に対して予算を要求するという流れでした。

経済産業省と一緒に財務省に対して説明するのは、大変そうですね。

田中:そうですね(苦笑)。難しくもあり、やりがいもあり、非常に面白かったというのが本音です。この新プロジェクトは、今年(2012年)の7月に採択が決定しました。

電気工学は、すべての基となる分野です

学生時代の電気工学の研究は、現在のお仕事にどう活かされていますか。

田中:NEDOの仕事は直接研究開発を行うわけではありませんが、担当する技術分野に関する知識が求められます。また、スマートコミュニティの核となるスマートグリッドは、まさに私が専攻していた電力システムの分野ですから、電気工学を学んだことが大きく活かされています。実際に私以外にも、電気工学系出身の方が所属しています。

電気工学を学んで良かったと思うことをお教えください。

田中:様々なエネルギーへの変換方法が確立されている電気は、エネルギーキャリア(エネルギー媒体)として非常に重要で優秀な存在だと思います。例えば、電気は電子レンジやエアコンによる熱への変換、モーターによる動力への変換、照明による光への変換などが可能です。さらに、電気の輸送方法も現在は電力系統がしっかり作り上げられて、安定的に供給されています。

すべて電気工学が基ですね。

田中:はい。ただ、電気は目に見えないので、学んだことがない人には理解しづらいものです。ですから、分かりにくい電気を学生の頃にしっかりと学ぶことができたのは良かったですね。

今後、お仕事でどのような事をやってみたいと思いますか。

田中:行政に携わる一員として、NEDOのミッションとして掲げられている、「エネルギー・環境問題の解決」と「産業技術の国際競争力の強化」に少しでも貢献していければと考えています。国の政策方向性と民間企業の考えを適切に把握して、国民の皆様への説明責任を果たしつつ、皆様にとって意義のある利用しやすい仕組み・プロジェクトを企画・立案できるようになりたいです。

最後にこれから電気工学の道を進む方へメッセージをお願いします。

田中:基本的に電気は、何をやるにしても基になる分野だと思います。私自身は主に電力システムについて研究していましたが、情報通信などの関連分野も含めると、電気は非常に広範囲に関わっています。ですから、電気工学を身に付けていればその知識・経験は就職も含めて必ず活かされるはずです。

本日はNEDOのお仕事や、スマートコミュニティの概念や蓄電池の状況が理解できました。
どうもありがとうございました。

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