東京大学日高・熊田研究室の「高電圧実験」

3.塩害放電実験

【概要】
碍子(がいし)が塩分を含む水で湿潤しているところに電圧が印加されると、部分放電が発生する「塩害放電」に関する紹介です。

放電前の状態

放電前の状態

塩害放電が起きた状態

塩害放電が起きた状態

塩害放電実験の模様を映像でご覧頂けます。

塩害放電実験の模様を映像でご覧頂けます。
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熊田先生インタビュー

Q. 塩害放電実験の目的を教えてください。

碍子とは、電線と鉄塔間などを電気的に絶縁するのに必要で、高電圧の送電線の電気が大地に流れないようにするためのものです。海岸の近くの送電線の場合、潮風などによって塩分が碍子に付着することで、どのような影響が出るのか実験を行っています。

Q.塩水を塗った碍子が放電したのは何故ですか?

碍子が塩水で濡れると漏れ電流が流れ、部分的に電界が集中するところが発生して、そこが放電するからです。この部分放電が進展すると、やがて絶縁破壊に至ることがあります。そのため、電力会社ではより大きな碍子の使用や、塩分の除去を行うなどの対応をしています(※)。左側の碍子(塩水を塗った)の方が右側に比べて明らかにサイズが大きいのですが、塩水による影響で放電してしまうことがわかります。

(※)塩害対策

海岸近くの発電所、変電所、送電線では、海からの塩分により碍子の絶縁耐力が低下し、地絡などに至ることがあります。そのため、塩害が心配される地域には、サイズの大きい碍子の適用など様々な塩害対策が施されています。

終わりに

熊田先生

電気を送るためには、放電現象を必ず理解しておく必要があります。また、私たちの身近なところでは、様々な放電現象が利用されております。放電は不思議で神秘的な現象であり、解明のしがいがある非常に楽しい研究だと言えます。高電圧の放電現象を通じて、電気への魅力・面白さを少しでもご理解いただけると嬉しいです。

参考

東京大学 日高・熊田研究室では、普段、あまり身近でない高電圧の世界について、東京大学 五月祭で落雷放電実験を一般公開しています。高電圧の魅力をぜひ体験下さい。

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