「電気工学を学んで将来何になるの?」とたずねたら、あなたはどんな答えを返しますか。電車を動かす人、発電所で働く人といった答えでしょうか。

もちろん、どれも間違ってはいませんが、現代の電気工学は、電気エネルギーの発生・供給から、エレクトロニクス、情報までを網羅する幅広い学問です。学術研究の領域は、機械、建設、化学プラントを始め、医療、環境など、社会のあらゆる分野に密接に係わっており、現代社会に不可欠の工学技術となっています。

したがって、現代の電気工学技術者は、単に電気をエネルギーとして利用する機器・装置の保守・設計・開発にとどまらず、関連した物理・化学の諸現象の探求を始め新素材の開発、システム研究など多岐にわたる領域で活躍しています。また、その基礎的な研究は、装置・機器の構成、最適な運用に関する理論の構築など、情報処理を含むハード、ソフト両面の技術開発を担っており、社会の全ての基盤になっていると言っても過言ではありません(詳しくは下記表をご覧下さい)。

電気工学技術者は、いつの時代も必要とされる存在であり、これからますます重要になっていきます。

多岐にわたる電気工学の活躍領域

電気工学研究部門・分野一覧(社団法人電気学会より)

基礎・材料・共通

研究分野 教育・研究,応用数学,電気理論,計測,照明光応用,視覚,電気技術史,電磁界理論,音響,回路理論,電気物理,放電,プラズマ,金属・セラミックス,環境電磁工学,磁気応用,生体磁気,マイクロ磁気,絶縁体・誘電体材料,半導体材料,導電体材料,超電導材料,磁性体材料,機能性有機材料,材料作製・評価法
身につく知識 電気工学の応用分野である「電力・エネルギー」、「電子・情報・システム」、「産業応用」、「センサ・マイクロマシン」などの、いずれにも共通する基盤学術を広範囲に研究します。そのため、応用範囲が広く、様々な業界・職種でその知識が活かされます。

電力・エネルギー

研究分野 電力系統計画・運用,電力系統制御,系統解析・シミュレーション,系統保護,系統監視・制御システム,エネルギーシステム,送配電線・電力ケーブル ,送配電機器,開閉保護装置,変電機器,高電圧・雷・サージ,エネルギー変換・貯蔵装置,その他電力用機器
身につく知識 電力・エネルギー領域は、電力・鉄道・通信システムなど現代の社会・産業基盤を支えています。電力・エネルギーの安定と発展なしに私たちの生活は成り立ちません。必要でなくなることはなく、いつの時代も求められる知識です。

電子・情報・システム

研究分野 電子材料,電子デバイス,電子・集積回路,光・量子エレクトロニクス,生体・医用電子,電子応用,バイオニクス,通信・ネットワーク,マルチメディア,信号・画像処理,パターン認識,制御・計測,ロボティクス,ニューロ・ファジー・カオス,システム,ソフトウエア・情報処理,エレクトロニックコマース,バーチャルリアリティ,ソフトコンピューティング,人工知能,知能・知識情報処理,人工生命・創発システム,最適化,インテリジェントロボット・オートメーション,福祉応用,環境管理
身につく知識 デジタル家電、携帯電話、パソコン、ブルーレイディスク、液晶・有機ELテレビなどの最先端エレクトロニクス機器や、IT、最先端ネットワーク、ロボットなどの進化をひらく学問です。社会的にも大きな話題となり、流行の最先端を行く製品に、その知識が活かされます。

産業応用

研究分野 回転機,回転機制御,リニアドライブ,磁気浮上,モーションコントロール,静止器,超電導応用,パワーエレクトロニクス,電力用半導体素子応用,交通・電気鉄道,産業電力電気応用,メカトロニクス,産業計測制御,ロボティクス,金属産業,産業応用一般(一般産業),産業情報システム(産業システム情報化),生産設備管理,道路交通・ITS,自動車・電気自動車,公共施設
身につく知識 電気をどう産業に応用するのか?その基礎技術(パワーエレクトロニクス・制御理論)から産業・交通などの広い応用分野が学問対象です。産業そのものを支え、そして作り出す学問ですから、スケール感が大変大きいものです。関連する産業は幅広く、様々な業界・職種で必要とされる知識となります。

センサ・マイクロマシン

研究分野 センサ応用,センサシステム,化学センサ,機械量センサ,センサ新手法,マイクロ計測システム,マイクロロボット,マイクロマシン応用,センサ・アクチュエータ新材料,マイクロアクチュエータ,マイクロマシーニング
身につく知識 未来の製品・産業になくてはならない、センサとマイクロマシン(ナノレベルの超小型機械)に関連する学問です。新材料物性技術、半導体微細加工技術、ナノ技術、応用化学やバイオ技術、ロボット技術、センシングシステム技術など、次世代産業のキーテクノロジーに関する知識が身につきます。

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