太陽光発電出力予測シミュレーションなどを通じて、再生可能エネルギーの普及に貢献したい。

2019年11月29日掲載

都心の機能的でおしゃれな学舎が自慢の早稲田大学・西早稲田キャンパス(通称、早大理工)。今回はこちらの「若尾研究室」におじゃましました。1人ひとり、ゆったりとしたスペースが確保された研究室はオープンで自由な雰囲気に包まれており、学生の皆さんそれぞれが思い思いの研究に打ち込んでいます。

※2019年10月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

理系の幅広い分野を学べる学科

皆さんが電気工学を学ぼうと思われた動機についてお聞かせください。森さんからお願いします。

:中学の授業で行った電磁誘導の実験がきっかけで、発電に興味を持つようになりました。以後もずっと電気系の授業では楽しく学ぶことができ、もっと専門的に電気工学を学びたいと考えて、大学に進みました。

続いて浅井さん、お願いします。

浅井:私は高校2年生の時に理系への進学を決めましたが、特に分野は絞っていませんでした。そこで電気と情報と生命という3つの分野について幅広く学ぶことのできる早稲田大学の「電気・情報生命工学科」に入学することにしたのです。そして、様々な分野の授業で学ぶうち、電気は社会に不可欠の存在であることから、電気を学んでおけばどこでも通用する汎用性を身につけられると思い、学部3年生で研究室を決める際に電気工学を学ぶことを決心しました。祖父、父が電気関係の仕事をしているので、その影響も少しはあったかもしれません。

桂川さんはいかがですか。

桂川:私も浅井さんと似ているかと思うのですが、小学校5年生の夏休みの自由研究がきっかけで植物に興味を持つようになったことが、理系に踏み出した第一歩でした。それをきっかけに生物全般への関心が高まり、浅井さんと同じく幅広い分野を学べるということで「電気・情報生命工学科」に進みました。そして、学部の授業で再生可能エネルギーの使い方を工夫することで利用効率を高められることを学び、その安定した品質を保つためにはどうしたらいいかということに興味を抱き、電気工学の道へ進むことにしました。

森さんは最初から電気工学一筋だったようですが、浅井さんと桂川さんは幅広く学ぶうちに、次第に電気工学への興味が湧いてきたということですね。

浅井:ええ。桂川さんのように生物に興味があって「電気・情報生命工学科」に進んだものの、研究室は電気系のところを選んだという学生は多いです。入り口の幅の広さは、この学科の大きな魅力だと思います。

では、研究室を選ばれた理由は何でしたか。

浅井:学部で若尾真治先生の授業を受けたことがきっかけです。とてもわかりやすい内容で、自分にフィットした研究ができるのではと思いました。

桂川:私は研究室の雰囲気で選びました。とてもアットホームな雰囲気が漂っていて、学生同士、オープンな関係が保たれていると感じ、居心地のよい研究室だと思ったのです。当時、女子学生は少なかったですが、その点は特に気になりませんでした。今では、電気エネルギーに興味を持って多くの女子学生が研究室に毎年入ってきます。

:私も桂川さんと同じで、研究室の雰囲気で決めました。学生が伸び伸びと研究に打ち込んでいる、そんな開放的な雰囲気がとても気に入りました。

浅井:若尾先生がとても気さくで優しい方なんですが、やはりそうした人柄が研究室の雰囲気に反映されているのではないでしょうか。先生の人間性に惹かれてこの研究室を選んだという学生は多いと思います。

誰でも容易に使える仕組みを目指して

皆さんの研究内容について教えてください。桂川さん、お願いします。

ワークステーションを使ったシミュレーションが研究の中心。「だから机の周りはすっきり」と桂川さん。

桂川:太陽光発電は天候によって発電量が左右されますが、私は気象庁の発表した気象データをもとに翌日の太陽光発電量の出力予測に携わっています。特に確率的な幅を持った予測値を計算しています。予測精度を改善することで、太陽光発電出力を考慮して各種電源の出力制御や蓄電装置の充放電制御を的確に行えるようにすることが目的です。

予測値の計算には、独自のプログラムを利用しているのですか。

桂川:はい、研究室には先輩たちから代々受け継がれてきたプログラムがあり、私も自分の研究を通じてプログラムに手を入れ、改良を続けています。

「再生可能エネルギーの研究は一生続けたいですね」と森さん。

森さんも桂川さんに近い研究内容とか。

:ええ。太陽光発電の発電量や住宅などの負荷量を予測し、その情報をもとにした発電出力の安定化のために蓄電池運用の開発を行っています。予測手法に関する勉強が終わったので、現在は蓄電池運用について勉強しているところです。太陽光発電における固定価格買取制度が今年から順次終了していくため、自家消費のための蓄電池運用も視野に入れて研究を進めたいと思っています。

なかなか意欲的なテーマでは。

:これから実用化が本格化していくテーマなので、自分で新しい道を開いているという感覚があります。

浅井さんの研究内容はいかがですか。

浅井:2016年4月の電力小売完全自由化に伴って、様々な事業者が電力の小売事業に参入してきましたが、自前の発電設備を持たない事業者も多く、そうした事業者は市場で電気の仕入れを行っています。私はその市場での卸電力の価格予測を研究しています。電力の価格は乱高下が激しく、例えば真夏にはひどく高騰します。こうした市場価格を精度高く予測することで、新規参入の事業者は無理のない調達計画が可能になるわけです。

電力の安定供給に関わるということで、身近なテーマという印象ですね。

桂川:出力予測のために気象庁発表のデータを使うとお話ししましたが、これは簡単に入手できるデータです。こうした、誰でも容易に利用できる仕組みであることが大切だと考えています。

浅井:私の研究も一般に公開されている情報をもとに価格を予測するものとなっています。

高性能の計算専用サーバーを駆使して

電力の出力予測や卸売価格の予測といった研究ですので、研究中はずっとワークステーションと向き合っている感じですね。

浅井:全員に共通するのが「ある現象をシミュレーションによって再現し、解析・分析する」ことですので、研究にワークステーションは必須です。そのためワークステーションは1人1台割り当てられており、しかもディスプレイが2台というマルチモニター環境です。計算機に強いメンバーが専属の「PC班」となって、面倒な設定やトラブルシューティングなどを行ってくれます。

桂川:さらに別室には研究室専用の大量のCPUコアとメモリを搭載した科学技術計算サーバーが20台以上も用意されているんですよ。高速大容量の共用データストレージを自由に使うこともできます。

:複雑な計算となると個人のワークステーションでは追いつかなくなって、時間がかかってしまいます。そんなときには計算専用サーバーの出番です。「ワークステーションがうなっているから計算サーバーに切り替えよう」という感じですね。

浅井さんは、毎日10時に研究室に来て18時頃に帰るという、規則正しい研究生活を送っています。

浅井:時には1人で6台以上の計算サーバーを同時に使ったり、複数の計算サーバーをまとめてスーパーコンピューターのように使用したりする学生がいることも。それでもまだ余裕があるのですから、恵まれた環境だと感じます。

桂川:ハードもソフトもより新しく高性能な環境に絶えずアップグレードされ続けていて、膨大なデータを扱っていても高速な計算が可能なので、研究の効率は高いです。

浅井:ただ、パラメータをどんどん増やして計算すればシミュレーションの精度は上がりますが、一方で、誰でも使えるプログラムという観点からすると、増やしすぎるのも考えものです。そのあたりのトレードオフについては、難しいところですね。

人に伝えることの難しさを学会で実感

研究活動でのエピソードを教えてください。

浅井:2019年春に北海道で開催された電気学会全国大会で発表したことが印象に残っています。いつもはゼミで研究内容を発表するのですが、同じ内容でも他大学の教授や企業の研究者に発表すると、いつもは通じることが通じなかったり、思ってもいなかった質問が来たりと、初めての人に研究内容を正しく、分かりやすく伝えることの難しさを実感しました。

桂川:私は、アメリカのシカゴで開催された国際学会が思い出深いです。一週間ほどの滞在でしたが、私の発表に対して海外の研究者の方々から「いい研究だね」とおほめの言葉をいただけて、とても嬉しかったです。質問もたくさんいただき、非常によい経験ができました。

英語は大丈夫でしたか。

桂川:私は英語が苦手なので、わかる限りの単語を使って必死で説明しました。おかげで語学力も鍛えられ、この国際学会でだいぶ成長できたかなと感じています。

森さんは学部生ということで学会はまだだと思いますが、先輩2人のお話を聞いていかがですか。

:桂川さんが国際学会に出かける前は、発表の準備に大忙しでした。その様子を見ながら、率直に大変だなあと思ったものでした。でも、苦労した分、大きな達成感が得られたでしょうし、手応えもあったと思うので、うらやましく感じます。ぜひ自分も早く学会デビューしたいですね。

寒い時期は研究室で鍋パーティー

先輩後輩の垣根はなく、研究室ではいつも笑顔のコミュニケーション。

研究室は、とても広くてきれいですね。

浅井:実験やデータの実測は他の組織と連携して学外で行いますが、研究室の中では、先ほども言ったように計算機を使った研究が中心ですので、室内はとてもきれいです。しかも1人あたりのスペースがゆったりしているので、研究室全体が広々としています。

:雰囲気は一言で言えば、和気あいあいですね。研究室を選ぶ際に感じた印象通り、とてもオープンでフラットな感じです。上下関係も特に厳しいことはないですし、風通しのいい研究室です。

棚にはお鍋がしまってありますね。

桂川:ええ、鍋とIHクッキングヒーターがありますので、寒い時期は時々みんなで鍋を囲んで、晩ご飯を食べています。

浅井:鍋の時、先生は不在ですが、ピザパーティーではご一緒のことが多いですね。2ヵ月に1回くらいですが、ピザをデリバリーしてもらって、みんなでつまんでいます。

この大きいテーブルに皆さんが自然と集まってくる感じなんですね。ソフトボールチームもあるとか。

若尾研究室のソフトボールチームは強豪。優勝トロフィーを手にガッツポーズです。

浅井:ええ、研究室のほとんど全員がチームに加入していて、1軍と2軍があります。毎年、電気系の研究室でソフトボール大会が開かれており、うちのチームは現在4連覇中なんですよ。

:私は2軍なんですが、1軍が優勝するのを見て、嬉しかったです。

浅井:9月にはゼミ合宿があるのですが、初日は学部生の中間発表が行われ、2日目にはソフトボール、テニス、サッカーなどで過ごします。イベント好きな研究室ですね。

普段はどんなスケジュールで過ごされていますか。

桂川:私は10時頃に研究室に来て17時頃に帰宅することが多いですね。

明るく爽やかな雰囲気が特徴の若尾研究室。研究中とオフタイムのメリハリもしっかりしているとか。

浅井:私もだいたい同じような時間です。

:特にコアタイムが設けられてないので、週2回のゼミの時間以外は各自が自由な時間にやってきて、好きなだけ研究して、帰りたくなったら帰るという感じです。自由な雰囲気の研究室ですが、時間の過ごし方もとても自由なんです。

浅井:夜やってきて朝まで研究するという、極端に夜型の仲間もいますよ。研究を始める前には必ずヨガをする仲間もいますし。こういう雰囲気はやはり先生の人柄によるものでしょう。

活躍が期待される業界の幅広さを実感

電気工学を学んでいてよかったと思うのはどのような点ですか。

:ニュースで電気の話題が出たときに、電気工学の知識のおかげで理解しやすくなったと思います。以前、北海道でブラックアウトが起きたことがありましたが、あのときも大変関心を持ってニュースを見ていました。

浅井:私もエネルギー問題や電気自動車といった話題に興味を持つようになり、自然と知識、見識を広げられたと感じています。

:再生可能エネルギーの話題にも、関心が深まりました。

桂川:2人と同じく、私もエネルギーに対する関心が深まりました。エネルギー問題の解決に向けて社会全体がどのように取り組もうとしているのかがわかり、自分も今後どのようにエネルギー問題に向き合うべきか、考えるようになりました。

浅井:あとは電気工学を学んでいると就職活動が有利というのが、実感です。電気系の学生に対する推薦枠は学生の数より多かったほどですし、電気系の学生は概して内定が出るのも早かったと感じました。

桂川:それは私も同感です。求人が多いだけでなく、例えば食品業界など、一見して電気と関係がないように思える業界からも多くの求人がありました。電気工学を学んでいると活躍できる分野はずいぶん広がるということが実感できました。

:私は学部生ですし、就職と聞いてもピンとこないのですが、先輩のお話には、なるほどなあと思います。

では最後に、皆さんの夢を聞かせてください。

:今後は博士課程まで進み、現在の研究を継続していきたいと考えています。そして、社会に出ても再生可能エネルギーに関する研究に取り組み、ライフワークとして再生可能エネルギーの普及に貢献したいと思います。

桂川:私は大手電機メーカーに入社予定です。大規模なシステム構築に携わることになりますので、電気エネルギーを効率よく利用できるようなシステムを開発したいと思います。今の研究活動の延長として太陽光発電もそこに組み込めたら嬉しいですね。

浅井:社会人になったら工場やプラントなどに変電所設備を導入する仕事に携わる予定ですので、途上国も含め、世界の産業インフラを支える人材になりたいですね。

本日はどうもありがとうございました。

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