電験1種取得者としての専門性を活かし、 電力業界で必要とされる人材であり続けたい。

2019年3月29日掲載

中学生の頃から電力会社で活躍したいと考えていたという山崎さん。現在は地元企業の九州電力で配電部門の業務に携わっています。電気関連の資格としては最難関の電験1種にも合格されており、これからは配電に限らず幅広い分野で活躍する人材を目指したいとお考えです。

プロフィール

2010年3月
九州大学大学院 システム情報工学府 電気電子工学専攻 修士課程修了
2010年4月
九州電力株式会社 入社
2010年9月
佐賀配電事業所 訓練班
2011年8月
唐津配電事業所 配電総括グループ 総括
2012年8月
唐津配電事業所 配電建設グループ 設計
2014年8月
唐津配電事業所 配電総括グループ 制御
2017年8月
佐賀送配電統括センター 配電部 配電建設グループ

※2019年1月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

出発点は、乗り物はなぜ動くのかという疑問

山崎さんが電気工学を専攻された理由を教えてください。

山崎:実は中学生の頃から将来は電力会社に入ると決めていました。

ずいぶん早くから進路を決めていらっしゃったんですね。

山崎:ええ。幼い頃から電車や飛行機などの乗り物が好きでしたが、乗り物はどうして動くのだろう、動力源の電気はどこから来るんだろうと考えているうちに、電力や発電に興味を持つようになりました。次第に人々の生活を支えている電力業界に関心を抱くようになり、電気工学の道を選ぶことにしました。中学卒業後は地元の高等専門学校に進学し、5年間電気を学んだのですが、もっと専門的に学びたいとの思いで大学に編入しました。

なるほど。高専ですと卒業して就職される方も多かったと思いますが、山崎さんは進学の道を選ばれたわけですね。

山崎:進学と就職で半々ぐらいの割合でしたね。私は九州大学工学部電気情報工学科の3年時に編入し、そしてさらに深く学びたいと考えて、大学院に進みました。

研究室では、超電導線材の測定で企業の製品開発に貢献

大学院ではどのような研究に取り組まれましたか。

山崎:超電導関係の研究室に入り、超電導の研究に打ち込みました。超電導を選んだのは、せっかく大学院という学びの環境にいるのだから、将来的に夢の持てる研究に取り組んでみたいと思ったからです。ご存じのように超電導は、液体窒素マイナス196℃等の低温下では損失をほとんど無視できる状態で銅線の100倍以上の大電流を流すことができる現象です。しかし、電力機器に交流で用いられる際、交流損失を生じてしまいます。低損失・大電流密度という超伝導体のメリットを活かすためにはこの交流損失の低減や特性の把握が必須であり、応用超電導の分野の重要なテーマとなっています。私はこのテーマに取り組み、ケーブルをつくるのに適した超電導線材を開発するための研究を行いました。

すると、企業との連携も多かったのでは。

山崎:そうですね。超電導線材交流損失特性は、鞍型(くらがた)ピックアップコイル(※1)を用いた方法により、様々な磁界印加角度で測定して評価・分析するというアプローチで取り組みました。この鞍型ピックアップコイルを用いる方法は私たち独自の測定方法で、多くの企業からも大変に信頼されていました。測定データはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)やメーカーの超電導線材設計部に提供し、製品開発に役立てていただきました。

やりがいは大きかったでしょうね。

山崎:ええ、企業の開発段階にある最先端の様々な超電導線材の測定を行ってその特性改善に貢献できたので、やりがいは大きかったですね。NEDOの研究についてお墨付きを与えるような使われ方もしていましたから、大変に誇らしかったです。また、電気学会や応用物理学会の超電導ワークショップなどにも参加し、超電導線材の新サンプルについての分析結果発表を行うこともできました。

研究室についてはどんな思い出がありますか。

山崎:今も申し上げたように学会での発表にも積極的に参加させていただいたのですが、札幌や石垣島などでの発表にも行くことができ、そのつど、一緒に行った仲間たちと観光したことがいい思い出となっています。また、イベントの多い研究室で、夏は研究室のベランダでのバーベキュー大会、冬は鍋パーティーなどを楽しみました。大学の研究室対抗のソフトボール大会にも出場して、ベスト8まで勝ち上がったこともありました。楽しい研究生活でしたね。

(※1)鞍型コイルとは、サドル型コイルとも呼ばれ、超電導磁石に用いられることが多い。名前の由来は、馬の鞍の形に似ているため

ユーザーに最も近い配電業務のやりがいを知る

九州大学大学院を修了後、地元の九州電力に入社されましたね。中学時代からの志を見事にかなえられました。

山崎:はい。中学生の時の夢もありましたが、高校生の時に飛行機の中から見た光景も私の思いを後押ししてくれました。夜の飛行機だったのですが、福岡空港に着陸するとき、目の前に広がる福岡市を埋め尽くす電気の明るさや、そのネットワーク規模に圧倒されて、改めて電力の公益性の高さに感銘を受けたのです。その光景に、電気を学んできたという専門性を地元・九州のために活かし、人々の生活の役に立ちたいという思いを強くしました。

入社後、配電事業所でキャリアを積んでこられましたね。

山崎:最初に配属された佐賀配電事業所では訓練班に所属しました。これは現場でのOJTの一環であり、私たち新人12人に4人の指導員の先輩がついて、配電の仕事を基礎から教えてくれました。実際に電柱に登って作業も行いましたし、夏の暑い時期には日焼けしてヘルメットの紐の跡が顔についたこともありました。本音を言うと、入社前は送電業務への配属を希望していたのですが、この期間に配電の業務を徹底的に学んだことで、その面白さを知ることができました。なんといっても配電はお客さまに最も近い立場での仕事ですから、社会の役に立っている、人々の生活を支えているという実感は、非常に大きなやりがいでした。

その後、唐津配電事業所を経て現在は佐賀送配電統括センター配電部でご活躍です。

山崎:配電事業所には制御グループ、設計グループ、保全グループ、統括グループという4つのグループがあり、唐津配電事業所では総括、設計、制御を経験することができました。その経験をベースに、現在は配電事業所の一つ上の組織である佐賀送配電統括センターの配電部で業務を担当しています。

佐賀県の配電部門を統括するマネジメント業務を担当

現在のお仕事の内容について具体的に教えていただけますか。

山崎:これまで事業所で担当してきた設計業務や配電系統運用とは異なり、本店直轄の組織としてマネジメント業務を担当しています。具体的には佐賀県内の4つの事業所全体の配電工事の予実算管理に携わっており、工事進捗を管理しつつ、協力委託工事会社や各事業所と調整しながら、旗振り役として予算や実績の管理をしています。責任重大ですがやりがいは大きく、特に配電工事実績が予定通りに進むと達成感が得られます。

これまでどんなことが印象に残っていますか。エピソードを教えてください。

山崎:働き方改革の一環として取り組んだ、配電工事費の年度末想定の精度向上と時間外労働の削減です。年度末想定は8月・11月・1月の実績をベースに社会情勢などを踏まえて予算編成を行う業務ですが、様々なデータを活用するために作業に相当な時間を要するとともに、各事業所でバラツキが出てきます。そこで想定方法やデータの統一化を図ったところ、大幅な時間外削減と想定のブレの抑制が可能となりました。大きな手応えを得ることができた業務でした。

電気関連の資格の頂点と言われる電験1種(第一種電気主任技術者)を取得されたのは、入社後ですか?

山崎:2016年ですから入社7年目に、2回目の挑戦で取得しました。電験1種を取得できたのは学生時代に幅広い電気工学の知識を学んだおかげですし、その知識のおかげで配電の設計業務や配電線系統運用はもちろんのこと、送電、発電も含めた電力全般の理解もできていると思います。ただ、就職してからの受験は勉強時間の確保という点でも大変厳しかったので、できれば時間に余裕のある学生時代から資格取得の準備を進めておけばよかったと反省しています。この点は、学生の皆さんにぜひ伝えたいですね。

キャリアの選択肢の幅広さが電気工学の魅力

今後はどんなことに挑戦したいとお考えですか。

山崎:現行の電力システムの課題解決のために進められている電力システム改革のもと、送配電部門の法的分離に向けて、各電力会社間の送電・配電部門の壁がなくなりつつあります。九州電力においても、送配電の業務一体化や人的交流が行われています。私はこれまで配電分野を歩んできましたが、これからは送電にも携わり、電験1種の知識を活かして電力業界で必要とされる人材を目指したいと思います。その上で電力業界の使命である低廉で安定した電力供給に貢献したいですね。

今振り返って、電気工学を学んでよかったと思うのはどういうことでしょうか。

山崎:電気工学の魅力は、機械や化学など様々な分野に応用できる汎用性を身につけられることと、将来の選択肢が広いということだと思います。特に就職の際は進路の選択肢が非常に広く、電気工学を専攻しておけばまず間違いなく希望の道を歩んでいけるという確かさがあります。実際、私自身も高専や大学卒業時には電気関係のメーカーはもとより、食品会社など様々なメーカーから人材募集がありました。大学院修了時にも自動車メーカーや重工メーカー、鉄道会社など幅広い業界のトップ企業からの求人がありました。電気業界だけでなく、このような幅広い分野での選択が可能なのは、非常に大きな魅力だと思います。

最後に、電気工学を学んでいる学生さんにメッセージをお願いします。

山崎:今も申し上げましたが、電気工学を専攻する最大の魅力は、将来の選択肢の多様さにあります。だからこそ、早い時期から将来は何をやりたいかというビジョンをしっかりとさせ、自分の取り組むべき分野を明確にして、打ち込んでいただきたいと思います。もちろん資格取得を目指すという目標を掲げるのも素晴らしいことです。ぜひ友人と切磋琢磨しながら知識や能力を磨き、専門性を活かして社会に貢献できる人材を目指してください。

今後の幅広い分野での山崎さんのご活躍を祈念します。本日はありがとうございました。

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