大学卒業後の進路選択へのアドバイス

2011年2月28日掲載

田中 正志

茨城大学 工学部 電気電子工学
助教

2000年3月
愛媛県立松山工業高等学校 電子科 卒業
2000年4月
豊橋技術科学大学 工学部 電気・電子工学課程 入学
2005年3月
豊橋技術科学大学 工学部 電気・電子工学課程 卒業
2005年4月
豊橋技術科学大学 大学院工学研究科 修士課程 電気・電子工学専攻 入学
2007年3月
豊橋技術科学大学 大学院工学研究科 修士課程 電気・電子工学専攻 修了
2007年4月
豊橋技術科学大学 大学院工学研究科 博士後期課程 電子・情報工学専攻 進学
2010年3月
豊橋技術科学大学 大学院工学研究科 博士後期課程 電子・情報工学専攻 修了
2010年4月
茨城大学 工学部 電気電子工学科 助教に着任し、現在に至る。
これまでに,固体酸化物形燃料電池の数値解析プログラムを用いた発電特性の検討および劣化前後のリチウムイオン二次電池の電圧過渡応答の検討に関する研究に従事

1. はじめに

一般的な大学生は学部を卒業すると学士の学位を授与されて就職する、あるいは大学院工学研究科修士課程(あるいは博士前期課程)へ進学し大学院生になります。この修士課程を修了すると修士の学位を授与されて就職あるいは大学院工学研究科博士後期課程へと進路を切ることになります。

この進路決定において最も重要なのが『 就職 』です。多くの高校生は大学を卒業後に就職する進路を思い描き、大学院までは進路の選択肢に考慮していないのではないでしょうか。さらに、多くの大学生は学部を卒業後には就職あるいは大学院修士課程への進学のどちらがより良い進路であるか悩んでいるのではないでしょうか。私自身も高校生のときは大学院なんて雲の上の存在で大学院進学は考えておりませんでした。さらに大学生のときは卒業後就職するのか、または大学院まで進学するかを悩みました。私の場合は結局のところ学生結婚したにもかかわらず、学部→修士課程→博士後期課程まで進学し学生時代を長引かせてしまいましたが、、、

私のことはさておいて、就職するためのベターな進路選択というのは誰しも様々に悩んでしまうと思います。そこで、本コラムを通じて高校生および大学生に対して、文部科学省の学校基本調査の総計的なデータを基に

  1. 大学を卒業後に就職する
  2. 大学から大学院修士課程へ進学してから修士課程修了後に就職する

という2つの進路について、どちらを選択する方が就職を見つけるのにベターな進路であるかという点について、私なりの提案を述べたいと思います。なお、本提案は統計データを基にし、且つ、若輩者である私の私案ですので細かいことは気にせずに、そんな考え方もあるかもしれない程度でお読み頂き、特に電力関係を志望している高校生は"大学院は比較的雲の上の存在ではない"ことを認識する、電気関係の学部に在籍する大学生は"今後の進路選択の一助"にしていただければ幸いです。

2. 大学生および大学院修士課程修了者の進路状況

図1 日本の大学生および大学院生の総人数の推移

それでは初めに文部科学省が発表している学校基本調査の統計データより得た1950年から2009年までの日本の大学生および大学院生(修士課程および博士後期課程の大学院生の合計)のそれぞれの総数を図1に示します。図より2009年時点で日本の大学生は280万人まで増加し、1950年当時の12倍となっています。一方、大学院生は2009年時点で28万人まで増加し、1950年当時の25倍となっています。このように日本の大学生は増加の一途をたどってきました。さらに、2010年3月卒業の日本の学生数541,428人のうち72,539人は大学院修士課程へ進学したことが発表されています。この統計データからは大学生の進路選択として、多くの大学生(学部生)は卒業後に就職する道を選んでいることが窺えます。

以上で使用した文部科学省学校基本調査は学部別の統計データとして人文科学、社会科学、理学、工学等11分野に大別し、各分野別の卒業者数および大学院進学者数、就職者数等の統計データも発表しています(表1)。

表1:大学生[学部生]の進路調査(2010年3月卒業)

区分 合計 進学者
(大学院)
就職者 専修学校
外国の学校
一時的な
仕事
左記
以外
不詳
死亡
日本の
全学生
541,428 72,539 329,132 13,500 19,332 87,174 10,807
工学分野の
全学生
89,623 35,841 42,328 1,853 930 7,974 697
電気通信工学所属の
全学生
28,978 11,075 13,604 727 316 3,052 204

我々の所属する工学分野に関していえば2010年3月に工学部を卒業した日本の学生数は89,623人で、そのうち35,841人は大学院修士課程へ進学したというデータが発表されています。さらに以上の統計は工学分野をさらに機械工学、電気通信工学、土木建築工学、応用化学、応用理学等14関係別に詳細に分割した統計データも発表しています。本コラムを提供しているパワーアカデミーに関連する電気通信工学関係に関して言えば2010年3月に卒業した日本の学生数は28,978人で、そのうち11,075人は大学院修士課程へ進学したというデータを発表しています。このことより工学部電気通信工学関係の学科に所属する大学生の40%程度は大学院へ進学する進路を選択していることが窺えます。したがって、電気通信工学関係の学部へ進学しようと考えている高校生や進路に悩む大学の学部生は上述した点を念頭に置き、大学卒業後は就職以外の進路として大学院もあるということを認識しておいてください。

小岩井の一本桜と岩手山

ところで、大学院修士課程へ進学しても最終的にその出口として就職という進路が決定できなければ大学院修士課程への進学が無駄であるのも事実です。そこで、次に文部科学省学校基本調査の統計データを下に得た2003年から2010年までの工学分野電気通信工学関係の大学生および大学院修士課程の卒業生の進路決定率を図2に示します。なお進路決定率は次式で求めました。

進路決定率

図より、2003年から2008年までの大学生の進路決定率は徐々に上昇し、そこから2010年にかけて急激に低下していることがわかります。また、大学生の進学決定率は大学院修士課程のそれより変化が激しいことがわかります。ここで、変化が激しい大学生の進路決定率と経済情勢を重ね合わせてみますと、進路決定率が上昇している2003年から2008年にかけては戦後最長景気の好景気期間と一致し、進路決定率が頭打ちの2008年から2009年にかけてはサブプライムローン問題、リーマンショックを発端とした経済局面の転換と一致し、進路決定率が急激に減少している2008年から現在にかけては急激な不景気になった期間と一致します。このことからも新聞紙上で述べられているような大学生の進路決定率と経済情勢との相関関係は非常に強いということが工学分野電気通信工学関係の大学生にも言えることがわかります。一方、大学院修士課程修了者の進路決定率は常に90%以上を超え、且つ、変化が少ないので、比較的に大学院修士課程修了者の進路決定率と経済情勢との間の相関関係は弱く、大学生より大学院生の就職の方が経済情勢の影響を受けにくいといえます。したがって、工学分野電気通信工学関係の学科に所属する大学生にとっては大学院修士課程まで進学してから就職を目指すほうが、最終的に卒業・修了時に就職・進学が決まらないといったような事態に陥る可能性が低いといえます。

3. 大学生の進路選択へのアドバイス

上述した大学生および大学院修士課程修了者の進路状況をまとめました。

  1. 日本の大学生のほとんどは大学卒業後に就職という進路を決定しているものの、工学部に関しては比較的多くの学生が大学院修士課程へ進学している。
  2. パワーアカデミーに関連する工学分野電気通信工学関係に関して言えば、大学院修士課程への進学率が約40%を示し、多くの学生が大学院へ進学している。
  3. パワーアカデミーに関連する工学分野電気通信工学関係に関して言えば、大学生の進路決定率は経済情勢に左右されやすい。一方大学院修士課程の進路決定率は経済情勢との間の相関は低く、近年の進路決定率は90%を超えている。

以上より私の進路選択の提案としては、大学生の3年生の夏からインターンシップなど就職活動に一喜一憂するのではなく、大学生の間はサークル活動やアルバイト等を通じてさまざまなことを学び学生生活を楽しむと共に、大学院修士課程への進学が可能となる程度の学力は十分に身に付け、大学院修士課程へ進学してから就職するという進路を選択することがお勧めであると考えています。

4. あとがき

本コラムでは私が学生であったときに大学院修士課程への進学を決意した理由についてデータを更新して書かせていただきました。私は結局のところ大学院修士課程で就職はせずに博士後期課程まで進学しましましたが、その理由に関してはまた別のところで述べたいと思います。 最後に本コラムは電気工学の面白さについて語ろうとあります。その点を度外視にした私のコラムをここまで読んでいただきありがとうございます。電気工学の研究の面白さについて私の本音を少しだけ述べておきたいと思います。私は現在、以下のテーマの研究を行っております。

  • 固体酸化物形燃料電池の特性解析プログラムを用いた発電特性の検討
  • 劣化前後のリチウムイオン二次電池の電圧過渡応答の検討

それらの研究において、作成中の数値計算プログラムがエラーばかり、実験では同じような失敗を繰り返して研究が進まない等の辛いことが多くあります。しかし、その中で失敗を繰り返しながらも問題を乗り越えて結果を出すと、図3のように国際会議に参加することで世界中の各地に行くことができるので研究を楽しいと思えます。このような経験は大学院修士課程まで進学しないと体験できないものだと思いますので、重なりますが現在進路を悩んでいる電気関係の学部に在籍する大学生は大学院修士課程まで進学し、大学での研究生活を自ら体験することで電気工学の面白さを実感してから就職するという進路も考えてみてください。

図3 国際会議で訪れた都市

参考文献文部科学省:学校基本調査「http://www.mext.go.jp/


電気工学のヒトたち