超高圧線路用地絡点表示器の開発

2016年9月30日掲載

開発者

清水 雅仁(しみず まさひと)

中部電力株式会社技術開発本部電力技術研究所 送変電チームリーダー

1990年
名古屋大学工学部電気学科卒業
1992年
名古屋大学大学院工学研究科電気工学専攻博士課程前期課程修了
同 年
中部電力株式会社入社、技術開発本部電力技術研究所に配属
1995年
名古屋大学大学院工学研究科電気工学専攻博士課程後期課程入学
1998年
名古屋大学大学院工学研究科電気工学専攻博士課程後期課程修了
現 在
中部電力株式会社技術開発本部電力技術研究所 送変電チームリーダー

はじめに

発電所で発電した電力は、送電線を介してお客さまのもとにお届けしています。長距離に亘る架空送電線路で発生した故障箇所を早期に発見することができるように、中部電力(株)では154kV以下の負荷系送電線の鉄塔に地絡点表示器(G・ファインダ、以下GF)と呼ばれる装置を設置し、送電線故障点の早期発見に活用してきました。

しかし、275kV以上の超高圧送電線では架空地線に流れる故障電流の様相が154kV以下の送電線とは大きく異なるため適用可能なGFは開発されていませんでしたが、今回、超高圧線路用地絡点表示器(超高圧GF)を開発・実用化したので、紹介いたします。

地絡点表示器(GF)の概要

図1 GFの取付状況

架空送電線において電気故障が発生した場合、架空地線に取り付けられたGFの2個の検出コイルが鉄塔から分流する故障電流を検知します。各検出コイルの出力電圧波形をGF本体部で整形・位相比較することで電流方向の判定を行い、故障鉄塔を特定します。そして、故障鉄塔を遠方からでも確認できるように表示部から赤い布を放出して表示します。この装置は、故障電流を駆動源としているため、電源が不要で経年に伴う劣化更新および動作後の部品取替を除きメンテナンスも不要である点が特長です。

図2 GFの動作原理

開発の経緯

GFは故障巡視の効率化に非常に有用であるため、山岳地を経過するなど巡視環境が厳しい275kV以上の超高圧線路に適用可能なGF開発への要求は高かったものの、数10kAレベルの非常に大きな故障電流や保護制御との協調から故障継続時間が短いことなどから故障の検出方法に課題があり、これまで開発に至っていませんでした。

中部電力(株)では平成25年に275kV上越火力線を運用開始しましたが、建設決定直後より故障巡視方法について検討を進めてきました。そして、超高圧線路用の地絡点表示器(以下超高圧GF)の開発に着手することになりました。

開発ストーリー

1.故障電流の把握

図3 各鉄塔における故障電流の計算結果
    (1φG・2φG・2φS)

GFは架空地線に流れる電流を検出することにより故障鉄塔を判別しているため、装置の仕様決定にあたり超高圧送電線路における故障電流を把握する必要があります。

そこで、適用を想定している275kV上越火力線と中部電力(株)で最も亘長の長い500kV越美幹線を対象として設備構成や故障ケース等の計算条件から架空地線に分流する故障電流を計算して、超高圧GFの仕様決定にあたり必要となるデータを集約しました。

(超高圧GFの仕様に考慮すべき解析結果)

  1. 架空地線の多条化(2条/3条)に伴う故障電流の偏りは少なく、鉄塔1基に対し1台のGF取付で故障点の特定が可能である。
  2. 架空地線1条に流れる最小電流値は中間付近の鉄塔で1000A程度、最大電流値は23,000Aとなるようなケース(場所)もある。
  3. 短絡故障発生時に故障点以外の鉄塔で架空地線に流れる電流がGFを誤動作させる方向に流れるケースがあることがわかり、この時の電流値が最大で100Aである。

表1 故障電流の計算条件

送電電圧 275kV ,500kV
故障様相 1φG/2φG/2φS
設備 亘長:63km~110km,GW:2条/3条
接地抵抗 13Ω(設計目標値),1Ω

2.超高圧GFの仕様決定

故障電流の計算結果をもとに、動作/不動作レベルの検討を行い、超高圧送電線用GFの仕様を決定しました。

構造面では、従来品より設置場所が高所になることから動作後の表示蓋が強風で煽られることが想定されるため、表示部の蓋側と本体側の間を表示布に加えてチェーンで接続して補強するなどの改良を施すことにしました。

表2 超高圧送電線用GFの仕様

項目 超高圧GF(G50)
送電電圧/系統 275kV以上/直接接地系統
動作条件
(CT2個の電流値合計)
逆位相AC200A~1kA,3サイクル以内(50ms)
逆位相AC1kA以上,2サイクル以内(33ms)
不動作条件 逆位相AC100A以下
同位相のAC電流(想定最大故障電流)
表示部 脱落防止用チェーン付

3.超高圧GFの構成決定

図4 センサの構造(広範囲な電流に対応するための工夫)

研究開発を進める中で、超高圧GFの構成を検討する際に大きな問題が発生しました。

GFは鉄心内部に発生した磁束を検出コイルが捕捉することにより電圧を発生し、表示部を動作させる仕組です。従来のGFでは最大400Aまで検出すれば良かったのに対し、超高圧GFでは最大23,000Aの電流を検出する必要があります。架空地線に過大な故障電流が流れた場合、鉄心内部に生じる磁束が飽和し、GFを動作させるための出力電圧が得られなくなり、正常に動作しません。

より大きな電流を観測する一般的な方法として、
(a)鉄心の断面積を大きくする
(b)鉄心間のギャップを広げて感度を下げる
などを検討してみましたが、(a)の方法ではセンサ部の大きさが約10倍(体積・重量)となり、架空地線に取り付けるセンサとして現実的でない大きさとなってしまいます。また、(b)の方法では感度が下がることで、比較的小さな故障電流領域では検出が難しいということがわかってきました。

そこで、センサの構成についてメーカー(日油技研工業(株)様)の技術者、当社の研究員がいろいろなアイデアを出し合い、実験を繰り返して従来とほぼ同じ大きさのセンサを構成することができました。超高圧GFのセンサでは、検出コイル部のギャップ長(架空地線を挟む鉄心の間隔)を拡大するだけでなく、検出コイルと鉄心の間に空隙を設け、鉄心と空心の2つの磁気特性を合わせ持つようにすることで、広範囲な電流に対応できるようにしました(特許登録済)。

4.動作確認試験

図5 超高圧GFの外観

開発した超高圧GFは、275kV上越火力線への適用に先立ち、メーカー工場内および(一財)電力中央研究所での大電流通電試験の結果、動作範囲および不動作範囲内の電流値において、正常に機能することを確認し、最大50kAまでの通電試験でも正常に動作し、回路部、本体ケース、ケーブル等の損傷もないことを確認しました。

今後の目標

275kV上越火力線のうち冬季に故障点探索が困難な鉄塔№28~№104(77基)に平成23年11月に導入しました。本表示器の適用により、故障点の早期特定に大きく寄与することが期待されます。

上越火力線に取り付けた超高圧GFは、まもなく適用後5年を迎えますが、幸い超高圧GFが動作する故障は発生していません。まだ、現場で「正常に動作する」という評価を受けていないので、内心、「故障の時にちゃんと動作するだろうか?」という思いもほんのわずかですがあり、積極的な普及活動はしてきませんでしたが、今後は、超高圧GFをより多くの送電線で導入してもらえるようにPRしていきたいと考えています。

学生へのメッセージ

今回の開発を振り返ってみて、超高圧GFのセンサ構成で技術的な壁にぶつかりましたが、それを突破できたのは繰り返し実験を続けたからだと思っています。机上検討では見落としていたこと、気付かなかったことを、実験中にオシロスコープの波形を見て、「どうして?」と疑問に感じたところから、前に書いたようなアイデアが生まれてきました。

今回の開発で、私自身、いろいろな角度から物を見る・考えることが研究開発を進める上で、非常に大事であることを学びました。若い学生の方は、まだそのような経験をした人は少ないと思いますが、今回の「開発者コラム」を参考にしていただき、実験・試験することの大切さを理解していただければ幸いです。


電気工学のヒトたち