竹のバイオマス熱電併給事業施設を訪問しました

2019年9月30日掲載

2019年6月、パワーアカデミー事務局は、熊本県南関町(なんかんまち)にあるバンブーエナジー株式会社のバイオマス熱電併給事業施設を訪問しました。同施設は、竹をバイオマス原料として活用するという困難なテーマに挑み、現在実証事業を実施しています。製造された熱及び電気は併設された竹加工工場で利用されているほか、燃焼時に発生する燃焼灰の有効活用も検討中です。竹の活用に至ったブレークスルーやエネルギーの地産地消の意義を中心に、レポートします。

困難な「クリンカ問題」を克服して、竹を原料に

竹が燃焼すると灰の中に小さな塊ができます。これはいわば"クリンカの卵"。これがもっと大きくなってクリンカとなり、炉の内壁に付着することで耐火物を傷め劣化を速めたり、ボイラーに付着することで熱伝導率を低下させる等の問題が発生します。

動植物などの生物資源を原料とするバイオマス発電。竹(孟宗竹)は、全国で群生しているので入手しやすいこと、3年で生育するという高循環性があることなどから、バイオマス原料として有望視されてきました。一方で含水率が高い、中空のため木材に比べて資源にできる割合が少なく、品質が不安定などの問題もあり、中でも「クリンカ」の発生は大きな壁でした。「クリンカ」とは燃焼灰が低温で溶けて生成される塊で、これがバイオマス燃焼炉を傷めることから、燃焼が困難となります。

バンブーエナジー社ではこの難題の克服に立ち向かい、バーク(杉の木の皮)を混ぜ合わせることで「クリンカ」の発生を抑えることに成功。小型テストプラントでの燃焼試験では、竹8:バーク2の混合割合でもクリンカが発生しないことを確認しました。

今後、本実証プラントにて竹とバークの混合割合を変動させた運転データを蓄積し検証していきます。

エネルギーの"地産地消"に成功

バイオマス発電で多くの場合に課題となるのが、原料の調達です。特に木質ペレットは輸入に頼らざるを得ないのが現状です。その点、バンブーエナジー社では国内での原料調達モデルを確立しています。

竹については同社を中心に半径30Km圏内で収集。小規模な土地に竹林が点在することが特徴であるため、多くの地権者と交渉を続けて継続的・安定的に収集する体制を整えました。これは、放置されて荒廃が進んだ竹林が増えているという「放置竹林問題」解決の一助にもつながっています。

また、バークについても、地元の林業団体から協力を得て調達を行っています。 一方、地産地消の"消"については、隣接する竹加工工場に995KWの電力と6,795kWの熱を供給しています(2019年6月現在)。

この熱電併給設備については大量の熱量を確保でき、隣接する竹加工工場における乾燥需要を満足できることなどの有効性を考慮し、ORC熱電併給方式(※1)を採用しました。また、竹に含まれる腐食成分の影響を受けにくいという点もORC熱電併給方式採用の決め手となりました。

また、このORC熱電併給設備は発電の際に約80℃の温水が供給可能であることから、この温水も有効活用することで全体としてのエネルギー効率が高い設備になります。 バンブーエナジー社ではこの発電機をイタリアのメーカーから輸入しました。オーストリア製の炉とあわせ、バイオマス発電の先進地域であるヨーロッパのメーカーの知見に学ぼうという姿勢も感じられます。

(※1)蒸気タービンと違い、水でなくシリコンオイル等を熱媒体として利用する。取扱圧力が低く、機械的ストレスが低いなどの特徴がある。

グループ3社が連携して、竹の採集からバイオマス原料化、建材等の製品化という、"竹産業"のサプライチェーンを確立しています。

竹のサプライチェーン構築に加え、灰の活用も

このバンブーフロンティア事業は地元行政・企業・専門家等により2005年から竹の有効利活用方法に取り組んでおり、2018年までに様々な課題を克服。2015年からFSを実施し、バイオマスによるエネルギー供給の事業可能性を着実に高めてきました。まさにこの分野のパイオニアとして歩みを刻んでおり、国内初の竹を有効利用したORC熱電併給設備を備えたバイオマスプラントとなりました。

バンブーエナジー社は竹の事業化を共通のテーマとするグループ3社のうちの1社で、同じグループのバンブーフロンティア株式会社は竹林整備を担い、もう1社のバンブーマテリアル株式会社は竹を使った新建材の開発・販売に取り組んでいます。このグループ3社が連携することで、新たな"竹産業"の創出につながるサプライチェーンが構築されているのです。

前述のように電力だけでなく熱エネルギーを竹加工工場での乾燥に活用するなどカスケード利用(※2)も行っているほか、最近では燃焼灰の有効利用も検討。竹の燃焼灰を用いた鳥インフルエンザウィルスへの効果試験を行ったところ、ウィルスの不活性化が確認できました。さらにはカンピロバクター、サルモネラ、大腸菌、黄色ブドウ球菌などに対しても有効であることから、今後は鳥インフルエンザウィルスの防疫剤や抗菌消臭効果を活かした機能性素材への利用法を検討していきます。

電気という領域を超えた大きな可能性を秘めた取り組みであり、今後の事業展開が楽しみです。

(※2)資源を一回だけの使い切りでなく、レベルを変えて多段階に渡って活用すること。

1本の竹から複数の製品を生み出すことを可能にしています。まさに"まるごと使い切る"という発想で、総合的な利活用を実現しました。

竹のバイオマス熱電併給プラントをご案内いただきました

当日ご案内いただいた竹のバイオマス熱電併給をご紹介します。このプラントは熊本県南関町の緑豊かな山中に設けられています。

竹チップの山

放置竹林などから調達された竹は、破砕機で細かく砕かれた後、チップの山となってプラント内に貯め置かれます。

集められたバーク

熊本県内の製材工場などから出たバーク(杉の木の皮)も毎日運び込まれてきます。廃棄物だったものが、ここで貴重な原料として活用されます。

竹とバークの混合

床がゆっくりと動くウォーキングフロアに積まれた竹とバークは、目標である3対7の割合で混ぜ合わされ、コンベアによってバイオマス燃焼炉へ運び込まれます。

バイオマスボイラー

コンベアから運び込まれた竹とバークは、ストーカ炉へゆっくりと自動投入されます。その際の熱は、次に投入される原料の乾燥にも利用されています。炉の中の炎は穏やかなオレンジ色をしています。

炉床灰排出コンベア

竹とバークの原料は燃やされて灰となり、コンテナに貯まっていきます。鳥インフルエンザ対策の防疫剤など、有効利用が検討されています。

ORC熱電併給設備

イタリアから輸入したORC熱電併給設備を設置。建屋はドーム球場と同じ原理のテントで覆われています。テントを採用したのはコスト対策のため。テント素材は十分な耐久性を持っており、また、地元消防署とも十分な協議を経て法令にも適用しています。

重油ボイラー棟

バイオマスボイラーのメンテナンスなどによる停止に備え、バックアップ用としてA重油を燃料としたボイラーも用意されています。

竹加工工場

竹から生まれた電気と熱は、同じ敷地内にあるバンブーマテリアル社の竹加工工場に供給されています。工場内では竹を活用した新建材が製造されています。

製品化された建材

竹をチップ状に加工し、プレス成型した「ナンカンボード」。家具部材やテーブル、床下材等幅広い用途に使用可能です。

竹を繊維状に加工し圧縮成形した、コンクリート並みの強度を持つ「BamWood」。内装材、家具建具等に幅広く活用可能な新素材です。

編集後記

増え続ける放置竹林のために"厄介者"とされてきた竹。それをバイオマス原料として活用しようとする、実に意欲的なチャレンジに驚きました。プラントはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実証事業として着工し、2019年4月に設備引き渡しが完了し、8月29日に竣工式を執り行いましたが、サプライチェーン構築などの事業性の高さにNEDOも大きな期待を寄せています。「失敗や苦労の連続でしたが全員で乗り越えてきました」(岡田久幸代表取締役社長)というバンブーエナジー社の姿勢に拍手を送りたいと思います。

ご案内いただいたバンブーエナジー株式会社の宮﨑龍一さん(左)と牧嶋隆光さん(右)。「我々のノウハウが広がって、日本全国に竹の発電所ができたら嬉しいですね」と牧嶋さんは夢を語ってくださいました。

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