2015年9月、パワーアカデミー事務局は東北電力の新仙台火力発電所(仙台市宮城野区)を訪問しました。仙台市の一番東にある仙台港に位置する新仙台火力発電所は、1971年から運転を開始した40年以上、東北の人たちの暮らしを支えてきた火力発電所です。これまでは重油と天然ガスを燃料に2機の設備が稼動していましたが、東日本大震災という大災害を乗り越えて、新たにLNGを燃料とした最新鋭のガスコンバインド発電所(3号系列)に生まれ変わろうとしています。徹底した環境負荷低減と発電コストの低減、そして電力の安定供給を目指す、新仙台火力発電所の取り組みをご紹介します。

震災を乗り越えて、東北の「復興」と「未来」をつなぐ架け橋になる

新仙台火力発電所が位置する仙台港は、東北を代表する海上輸送の物流拠点です。正式名称は特定重要港湾仙台塩釜港仙台港区と言い、世界各国から様々なコンテナ船が寄港する国際港となっています。

周辺には多くの工場が連なっていますが、屋上に「避難場所」という看板を掲げた建物が見受けられました。またお話を伺う前に、津波警報が発令された場合の避難方法をご説明いただきました。現在ではその爪あとはほとんど見られませんが、2011年3月11日の東日本大震災では、津波が押し寄せて大きな被害があった地域です。津波は地面から3メートル(海抜6.5メートル)に達して、新仙台火力発電所の主要な建物の1階部分がほぼ水没。主要な機器類は使えなくなり、発電所として稼働できなくなりました。しかしこの甚大な被害に負けず、早期復旧に向けて懸命に取り組んだ結果、9ケ月後の12月27日に1号機が運転再開を果たしました。

そして2015年12月、東北の「復興」と「未来」をつなぐ架け橋になるべく、世界最高水準の発電効率を誇るコンバインドサイクル発電所として、3号系列の半量である3-1号の営業運転が開始されます。

さらなる電力の安定供給と地球環境保全、高効率化を実現するために

新仙台火力発電所は、1969年に建設が始まり、1971年に1号機,続けて1973年に2号機の運転が開始されました。1号機、2号機の発電出力はそれぞれ35万kWと60万kW。東北電力の総出力1777万kWのうち、約100万kWを担う主力の火力発電所でした。

建設当初は1号機・2号機ともに重油を燃料としていましたが、1995年に環境負荷低減を目的として2号機が、天然ガスへ移行。そして、2012年より3号系列(98万kW/49万kW×2軸)の新設工事を開始します。その目的は、既設の1号機、2号機の設備を廃止して、LNG(液化天然ガス)を燃料とした発電効率の高いガスコンバインドサイクル発電設備をつくる(リプレース)というものです。

なぜ既設の1号機、2号機の設備を廃止して、新たにコンバインドサイクル発電をつくるのか?建設背景として、火力発電所の老巧化の問題があげられます。現在、日本における火力発電設備は運転を開始してから30~40年を経過しているものがほとんどで、新仙台火力発電所もそれに該当します。さらに自然災害に対して、太平洋側と日本海側に燃料供給源を分散することで、燃料供給の安定性を確保したいという目的もありました。また、地球環境温暖化の防止のためにCO2排出削減につながる燃料使用量の削減をはかる必要もあります。さらなる電力の安定供給と地球環境保全、そしてエネルギーの高効率利用のため、コンバインドサイクル発電に生まれ変わろうとしているのです。

リプレース計画の概要

項目 現状 将来
1号機 2号機 3号系列(3-1号、3-2号)
原動力 汽力
(コンベンショナルプラント)
同左 ガスタービン及び汽力
(コンバインドサイクルプラント)
出力 35万kW 60万kW 98万kW
(49万kW×2軸)
燃料 重油 重油・原油・天然ガス LNG
LNG燃料設備 - LNGタンク
(地上式、16万kl×2基)
桟橋
(杭式ドルフィン形式)
営業運転開始
(廃止)
1971年8月
(2015年9月廃止)
1973年6月
(2011年10月廃止)
3-1号:2015年12月
3-2号:2016年7月
[2014年度供給計画における変更]
・3-1号:2016年8月⇒2015年12月(7ケ月前倒し)
・3-2号:2017年7月⇒2016年7月(1年前倒し)

世界最高クラスの発電効率を誇る、環境にやさしいガスコンバインド発電

それでは、リプレースした新仙台火力発電所の3号系列の特徴をご紹介しましょう。まずは何と言っても世界最高レベルの発電効率の実現を目指すガスコンバインドサイクル発電です。コンバインドサイクルとは、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式で、同じ量の燃料で、通常の火力発電より多くの電力をつくることができ、CO2の排出量も少ないすぐれた発電方式です(※1)。

新仙台火力発電所の場合、ガスタービンの入口燃焼ガス温度1530℃という最新鋭ガスタービンを採用して、世界最高クラスの発電効率60%以上(低位発熱量基準による)を計画しています。その結果、年間のCO2排出量を、従来の1/3の排出量に相当する年間約120万トンの削減を実現。これは、宮城県内の全スギ人工林の年間吸収率と同等の量だそうです(※2)。また、1kWhあたりの燃料使用量も従来の1/4相当分を削減できます(※3)。

(※1)コンバインドサイクル発電については、電気の施設訪問レポートvol.6「関西電力堺港発電所と堺太陽光発電所を訪問しました」もご覧ください。分かりやすく仕組みが解説されています。

(※2)既設1、2号、3号系列の年間利用率70%とした場合

(※3)原油・LNGをカロリー計算

クリーンな燃料であるLNGを、最先端技術タンクで安全に保管する

設備の特徴もご紹介しましょう。燃料であるLNG(液化天然ガス)は、天然ガスを約-160℃まで冷却して液体にしたもので、有害な硫黄酸化物・ばいじんを排出しないクリーンなエネルギーです。

このLNGを保管するLNGタンクは、金属タンクのすぐ外側をコンクリート(PC)製の防液堤で覆う構造となっています。これを地上式PCタンクと言って、東北電力では初の設備です。従来のLNGタンクは、金属タンクの周囲に防液堤をつくっていましたが、新しいLNGタンクは本体を内槽部分と外槽と一体構造の防液堤の2重構造にして、ガスのタンク外部への流失を防ぐと同時に、敷地の有効活用をはかりました。尚、この内槽と外槽の間には約1メートルの隙間があり、すきまなく断熱材(パーライト)を充填することにより、保冷の役目を果たしています。

より災害に強く、津波・地震対策の強化に取り組む

東日本大震災の経験を踏まえて、様々な津波・地震対策にも取り組んでいます。地震対策では、機器の耐震性を一層、強化しました。特に、配管の保護に力を入れて防振器の増設を行いました。一方、津波対策では、発電所海側の盛土(高さ約5m)と防潮堤を新たにつくって津波を防止します。また浸水対策では、電気設備や非常用発電設備となどの重要設備は、原則2階以上に設置することや、かさ上げを実施しています。さらに開閉所や遮断器なども、据付面を地盤面より3mにかさ上げして設置しました。その他、建物内への浸水を遅らせるための気密扉の設置や外壁強化にも取り組みました。これにより、東日本大震災相当の津波が発生しても、早期に復旧できる体制を整えています。

高さ約5mを誇る、発電所海側の盛土。樹はようやく葉が出たところで、東北の復興の歩みと共に成長していきます。

尚、発電所海側の盛土には、植樹を行っており、一部の区画は地元の小学生が植樹したそうです(この植樹は、津波の直撃を抑止する効果もあります)。敷地内全体では約6万本の苗を植えており、完全な成長までには約20年かかるそうですが、地球環境や地域住民との共生をはかる発電所のシンボルとして育っていくことでしょう。

リプレース中の新仙台火力発電所

取材当日はあいにくの雨で建設中の施設もありましたが、完成に向かって着々と工事が進んでいました。ご案内いただいた、新仙台火力発電所の主な施設をご紹介します。

LNG受入設備

LNGは、アンローディングアームと呼ばれる、タンカーからLNGなどを荷揚げする設備で運び込まれます。写真の中の4本の腕のようなものがアンローディングアームです。これをLNG船に接続して、LNGを受け入れます。LNGは、海外(マレーシア、オーストラリア、カタール、ロシアなど)から輸入しています。

LNGタンク

LNGタンクは、高さ約54m、直径約80m、容量16万kLのタンクを2機備えています。2機あわせて約2ケ月分の燃料を保管できます。写真のタンクは、2機のうちの“ナンバー2タンク”と呼ばれる1機です。これらLNGタンクは、JCM(※4)と言われる新工法で建設したことにより、工期を従来よりも約4ヶ月、短縮することに成功しました。LNGタンクから出たLNGは、LNG気化器を通り気化ガスに変えられてタービン建屋に送られます。LNG気化器は極低温のLNGを海水で温めてガス化するための設備です。

(※4)JCM (Jack Climbing Method)とは、LNGタンクコンクリート壁に油圧ジャッキを配置し、油圧の力によってLNGタンクの屋根ごと釣り上げる新しい工法。

発電機(3-1号/3-2号)とタービン建屋

写真真中の手前に見える煙突が、3-1号(完成)。奥が3-2号(建設中)です。煙突は、高さが100mの排熱回収ボイラー直上型煙突と呼ばれるもので、ガスタービンの排気熱を回収して、水を蒸気にしています。一方、煙突の右側に見える建物がタービン建屋です。右下には排煙脱硝装置につかうアンモニアのタンクが見えています。排煙脱硝装置は煙突の付け根部分に設置されており、排煙中のNOXを5ppm以下に低減します。元々クリーンなLNGですが万全の環境対策を施してあります。

左端には既設1,2号機の煙突が見えています。この煙突の高さは180mですが、3号系列は環境負荷が小さいので、3-1号と3-2号の煙突は1,2号機よりも低くすることが可能となり景観にも配慮することができました。

トランス(変圧器)

発電所でつくられた電気は、高電圧で送り出されるため、途中、段階的に電圧を下げる必要があります。こちらが発電した電気の、電圧の大きさを変えるトランス(変圧器)です。発電機電圧の21kVを送電線の電圧275kVに昇圧します。

GIS(ガス絶縁開閉装置)

電力の開閉・遮断などを行うのが、GISです(写真真中)。いわば電気のスイッチと言える役割を担っています。津波対策として、地面から3m上にステージをつくって設置していることがお分かりになるでしょうか。ここから、ガスコンバインド発電でつくられた電気が、送電線を経由して私たちの元へ送られていきます。

編集後記

取材の途中に、新仙台火力発電所における、東日本大震災の津波の模様を映像で見せていただきました。津波によって、車が流されて次々と発電所の建屋にぶつかっていく様子は、言葉が出ないほど壮絶でした。

3号系列のリプレースの計画は、震災前からはじまっていたため、東日本大震災が発生して後ろ倒しになったのではないか?という疑問がありましたが、実は逆に前倒しに進めたそうです。

震災当時は、東北地域全体の電力供給力が落ちていたため、2011年10月に廃止予定だった2号機を早期復旧させようとする声も出ていました。しかし、2号機を復旧させると、今度は3号系列をつくるためのエリア(資材置き場など)がなくなるため、他地点の発電所に緊急電源を設置して乗り切り、将来を見据えた3号系列のリプレースを早めました。その結果、3-1号が7ケ月前倒し、3-2号が1年前倒しに。結果として、震災後の電力供給を乗り越えて、環境性と経済性を両立させた、最新鋭のガスコンバインド発電所が早期に完成しようとしています。

お話を伺っていて、思わず「ピンチはチャンス」という言葉がアタマに浮かびました。しかし言葉で言うのは簡単ですが、実際にこれを実現させたのは、関係者の皆様の想像をはるかに超えた努力の賜物です。取材の1週間後の9月16日付けで1号機も廃止となりましたが、2015年12月には3-1号が、2016年7月には3-2号がいよいよ稼働します。今後の新仙台火力発電所の活躍に、一層の期待が高まります。

電気工学キーワード

  • 電力系統
  • 電気機器

バックナンバー一覧

電気の施設訪問レポート vol.202016年11月掲載

三菱電機「中低圧直流配電システム実証棟」を訪問しました
2016年9月、パワーアカデミー事務局は、香川県丸亀市にある三菱電機株式会社の受配電システム製作所「中低圧直流配電システム実証棟」を訪問しました。…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.192016年7月掲載

「柏の葉スマートシティ」を訪問しました
2016年3月、パワーアカデミー事務局は「柏の葉スマートシティ」を訪問しました。柏の葉スマートシティは、内閣府の地域活性化総合特区に指定されており、国家的事業として取り組んでいる、…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.182015年10月掲載

東北電力「新仙台火力発電所」を訪問しました
2015年10月、パワーアカデミー事務局は東北電力の新仙台火力発電所(仙台市宮城野区)を訪問しました。仙台市の一番東にある仙台港に位置する新仙台火力発電所は、…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.172015年1月掲載

中部電力「南福光連系所」を訪問しました
2014年11月、パワーアカデミー事務局は中部電力と北陸電力の電力系統を連系している南福光連系所(富山県南砺市※とやまけんなんとし)を訪問しました。南福光連系所…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.162014年9月掲載

東京電力「常陸那珂火力発電所」を訪問しました
2014年7月、パワーアカデミー事務局は東京電力の常陸那珂(ひたちなか)火力発電所(茨城県那珂郡東海村)を訪問しました。緑豊かな自然と太平洋の大海原が広がる常…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.152014年5月掲載

「沖縄やんばる海水揚水発電所」を訪問しました
2014年2月、パワーアカデミー事務局は、沖縄県北部の国頭村(くにがみそん)にある、J-POWER(電源開発株式会社)の「沖縄やんばる海水揚水発電所」を訪問しました…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.142013年11月掲載

「神之池バイオマス発電所」を訪問しました
2013年9月、パワーアカデミー事務局は、茨城県神栖市にある、国内最大級の木質バイオマス専焼発電所「神之池バイオマス発電所」を訪問しました。これは、9月18日(水)に行われた…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.132013年10月掲載

「浮島太陽光発電所」を訪問しました
2013年8月、パワーアカデミー事務局は、神奈川県川崎市にある「浮島太陽光発電所」を訪問しました。浮島太陽光発電所は、川崎市と東京電力株式会社の共同事業として、川崎市の臨海部…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.122013年7月掲載

九州電力「黒川第一発電所」を訪問しました
2013年4月、パワーアカデミー事務局は、熊本県南阿蘇村にある九州電力の黒川第一発電所を訪問しました。黒川第一発電所は、約100年前の大正3年(1914)につくられた歴史ある水力発電所で…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.112013年2月掲載

新出雲ウインドファームを訪問しました
2012年11月、パワーアカデミー事務局は、島根県出雲市にある株式会社新出雲ウインドファームを訪問しました。同社は、2009年4月に営業運転を開始した、日本最大規模の…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.102012年10月掲載

宮崎ウッドペレットを訪問しました
2012年8月、パワーアカデミー事務局は、宮崎県小林市にある宮崎ウッドペレット株式会社を訪問しました。宮崎ウッドペレット株式会社は、未利用となっている国内林地残材…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.92012年9月掲載

九州電力「小丸川発電所」を訪問しました
2012年8月、パワーアカデミー事務局は、宮崎県児湯郡木城町にある九州電力の小丸川発電所を訪問しました。小丸川発電所は、九州で最大規模の発電出力を誇る揚水式発電所。…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.82012年5月掲載

電源開発「北本連系設備」を訪問しました。
2011年11月、パワーアカデミー事務局は、北海道・本州間電力連系設備(北本連系設備)の函館交直変換所を訪問しました。北本連系設備は、日本初の高電圧直流送電線という技術で、…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.72012年4月掲載

東北電力「上の岱地熱発電所」を訪問しました
2011年11月末、パワーアカデミー事務局は、秋田県湯沢市にある東北電力・上の岱地熱発電所を訪問しました。本…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.62012年4月掲載

関西電力「堺港発電所」と「PR館」を訪問しました
2011年10月、パワーアカデミー事務局は、大阪府堺市にある関西電力 堺港発電所と堺太陽光発電所を訪問しました。堺市の臨海部に位…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.52010年9月掲載

四国電力「伊方ビジターズハウス」を訪問しました
2010年9月、パワーアカデミー事務局は、愛媛県西宇和郡にある「伊方ビジターズハウス」を訪問しました。伊方ビジターズハウスは、四国の約4割の電力をまかなう伊方発電所に隣接するPR施設です。施… >>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.42009年12月掲載

中国電力「水島発電所」を見学しました
2009年12月、パワーアカデミー事務局は、岡山県倉敷市にある、中国電力の水島発電所を訪れました。水島発電所は、水島コンビナートの電力をまかなうため、1961年に運転を開始した火力発電所です。… >>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.32009年9月掲載

中部電力PR展示施設「でんきの科学館」を訪問しました
2009年9月、パワーアカデミー事務局は、愛知県名古屋市にある「でんきの科学館」を訪れました。でんきの科学館は、見て、触れて、体験しながら電気の世界を発見できる参加・体験型の科学館。さま… >>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.22009年11月掲載

東北電力「三居沢電気百年館」を訪問しました
2009年11月、パワーアカデミー事務局は、仙台市にある「三居沢電気百年館」を訪れました。三居沢電気百年館は、東北の電気誕生から百年目を記念して、1988年に建てられたものです。主に東… >>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.12009年8月掲載

関西電力「エル・シティ館」を訪問しました
2009年8月、パワーアカデミー事務局は、大阪府にある「エル・シティ館」を訪れました。エル・シティ館は、関西電力南港発電所のエル・シティ・ナンコウ内にあるPR施設。子供から大人ま… >>続きを読む

すべて表示する

5件だけ表示


電気工学を知る