宮崎ウッドペレットを訪問しました

2012年10月1日掲載

2012年8月、パワーアカデミー事務局は、宮崎県小林市にある宮崎ウッドペレット株式会社を訪問しました。宮崎ウッドペレット株式会社は、未利用となっている国内林地残材などを「木質ペレット」に加工し、バイオマス発電用燃料として活用することを目的に2009年に設立されました。電源開発株式会社(J-POWER)と宮崎県森林組合連合会の共同出資によるものです。本レポートでは、宮崎ウッドペレット設立の意議、ペレットを作る工程をご紹介します。

森を守るバイオマス発電用燃料「木質ペレット」

日本は国土の約70%を森林で覆われています。森林資源に恵まれている国ですが、同時に林地残材(立木を丸太にする際に出る枝葉や端の部分、間引いて切られた木材など、通常林地に放置される残材)が発生します。この林地残材は、森林の荒廃の大きな原因となっています。

こうした林地残材をエネルギーに変えようとする試みが、「木質ペレット」によるバイオマス発電です。木質ペレットとは、木を粉砕・乾燥・圧縮してペレット状に成型したもので、再生可能エネルギーであるバイオマス発電の燃料となります。カーボンニュートラル(※)という概念から、石油等の化石燃料と違って大気中の二酸化炭素(CO2)を増加させず、また林地残材を活用できるため、森林保護の観点からも大きく注目を集めているのです。

※カーボンニュートラルとは・・・

バイオマスの燃焼時に放出されるCO2は、植物が光合成により吸収してきたCO2であるため、CO2の排出と吸収はプラスマイナスゼロになる。このような炭素循環の考え方のことをカーボンニュートラルと言う。

林地残材は「チップ」→「粉砕物」→「ペレット」の順で、バイオマス燃料となります。

宮崎ウッドペレットとは

宮崎ウッドペレット株式会社のオフィスとなります。

宮崎ウッドペレットの木質ペレット製造工場は、林地残材等を活用した製造工場としては、国内最大級の2万5000トン/年の製造能力を持ちます(林地残材等の受入可能量は年間8万立方メートル)。製造した木質ペレットは、J-POWERの松浦火力発電所(長崎県松浦市)において、石炭とともに発電用ボイラーで燃焼(混焼)の試験をされています。少しでも燃料の石炭を減らし、代わりに木質ペレットを燃やすことでカーボンニュートラルによるCO2排出量削減を行っています。

尚、この木質ペレットの製造は宮崎県の「森林整備加速化・林業再生事業」と、石炭火力にてCO2の削減を目的とする、一般社団法人新エネルギー導入促進協議会の「林地残材バイオマス石炭混焼発電実証事業(経済産業省補助事業)」にて実施されています。

木質ペレット製造の流れ

「木質ペレット製造工場」の主要設備をご案内いただきました。木質ペレット製造の流れにそってご紹介いたします。

「木質ペレット製造工場」の外観

「木質ペレット製造工場」の外観

宮崎県森林組合連合会の『小林林産物流通センター』に隣接。2011年3月より営業運転を開始しました。小林林産物流通センターに納入されている生産者より、林地残材を購入します。

中央操作室

中央操作室

木質ペレット製造工場は、スキッドフォークの操作以外、すべて自動化を実現。ほとんどの機器をこちらの中央操作室で操作します。

貯木ヤード

貯木ヤード

山から切り出された、林地残材を貯木する場所です。使用する林地残材は、主にスギ、ヒノキとなります。

スキッドフォーク

スキッドフォーク

原木を運び、工場内に入れるのが、「スキッドフォーク」です。この機器以外は、全て自動運転を実現しています。

木材切削機

スキッドフォークで運ばれた林地残材を切削刃物で削りチップ状にします。

切削刃物

チップ

チップヤード

チップヤード

木材切削機で製造した「チップ」を貯蔵します。約170トンの「チップ」を貯めることが可能です。

粉砕機

木材切削機で製造した「チップ」を粉砕機で更に細かく砕き「木粉(粉砕物)」にします。

粉砕機

木粉(粉砕物)

乾燥装置

乾燥装置

粉砕機で製造した「木粉」を「ペレット」が作りやすい水分まで熱風で乾燥します。熱風はペレット原料となる「木粉」を燃料として使用しています。

造粒機

乾燥機で乾かした「木粉」を固めて、「ペレット」(直径8mm程度の円筒形)を製造します。

造粒機

ペレット

貯蔵出荷設備

貯蔵サイロ

最大300トンの「ペレット」を貯蔵することが可能な貯蔵サイロです。「ペレット」は、トラックに積み込まれて出荷します。

松浦火力発電所

松浦火力発電所

「ペレット」はJ-POWERの松浦火力発電所(長崎県松浦市)までトラック輸送され、石炭とともに発電用ボイラーで燃焼します。

編集後記

宮崎ウッドペレットの木質ペレット製造工場は、2012年10月より2交代制、2013年4月より3交代制体制で本格稼動する予定です。森林保護、二酸化炭素排出削減、再生可能エネルギーの利用といった、これからの日本が実現すべきテーマのモデルケースとなりうる宮崎ウッドペレットの今後に目が離せません。パワーアカデミーでは今後も再生可能エネルギーをはじめとする、電力の現場を紹介していきます。

この記事に関連する電気工学のキーワード

  • 電力系統
  • 電力機器

あわせて読みたい

身近な電気工学

電気工学用語集

バックナンバー一覧

電気の施設訪問レポート vol.302023年3月掲載

JERAトヨタ自動車「大容量スイープ蓄電システム」を訪問しました
2023年2月、パワーアカデミー事務局は、JERA四日市火力発電所構内(三重県)に設置された、「大容量スイープ蓄電システム」を訪問しました。株式会社JERA(以下JERA)とトヨタ自動車株式会社(以下…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.292022年3月掲載

「Jファーム スマートアグリプラント」をご紹介します
今回の電気の施設訪問レポートはエネルギー分野へと展開し、エネルギーを上手く活用した施設のご紹介です。最先端のスマートアグリシステムを活用した太陽型植物工場が、北海道で高糖度ミニトマトなどの栽培に大きな…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.282021年3月掲載

「大規模CO2分離回収実証設備」をご紹介します
福岡県の最南端に位置する大牟田市。広大な干潟の有明海に面し、かつては炭坑の町としても知られていた同市が、今、エネルギーや環境問題の関係者から熱い視線を浴びています。注目の的となっているのは、バイオマス…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.272020年9月掲載

「東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®」をご紹介します
2020年7月9日、福島県大沼郡金山町に「東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®」がオープンしました。東北電力としては初めての本格的な水力発電のPR施設となります。パワーアカデミー事務局で…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.262020年3月掲載

「沖縄県海洋温度差発電実証試験設備」を訪問しました
2019年12月、パワーアカデミー事務局は、沖縄県・久米島町にある「沖縄県海洋温度差発電実証試験設備」を訪問しました。同施設は、太陽からの熱で温められた表層水と深海の冷たい海洋深層水(深層水)との温度…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.252019年9月掲載

竹のバイオマス熱電併給事業施設を訪問しました
2019年6月、パワーアカデミー事務局は、熊本県南関町(なんかんまち)にあるバンブーエナジー株式会社のバイオマス熱電併給事業施設を訪問しました。同施設は、竹をバイオマス原料として活用するという困難なテ…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.242019年2月掲載

「山川発電所/山川バイナリー発電所」を訪問しました
2018年12月、パワーアカデミー事務局は、指宿市山川地区にある地熱発電所、九州電力「山川(やまがわ)発電所」および九電みらいエナジー「山川バイナリー発電所」を訪問しました。山川バイナリー発電所は、山…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.232018年8月掲載

関西電力「蹴上発電所」を訪問しました
2018年6月、パワーアカデミー事務局は、京都市左京区にある関西電力・蹴上(けあげ)発電所を訪問しました。蹴上発電所は、日本ではじめての事業用水力発電所として京都の近代化に大きく貢献、現在でも現役の発…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.222018年1月掲載

「新島プロジェクト事業」を訪問しました
2017年12月、パワーアカデミー事務局は、東京都新島村を訪問しました。新島村では、再生可能エネルギーを最大限受け入れ可能な電力系統システムの構築を目指した実証試験「電力系統出力変動対応技術研究開発事…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.212017年8月掲載

「圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)実証設備」を訪問しました
今回、パワーアカデミー事務局は、静岡県賀茂郡河津町にある圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES:Compressed Air Energy Storage)システムの実証試験設備を訪問しました。…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.202016年11月掲載

三菱電機「中低圧直流配電システム実証棟」を訪問しました
2016年9月、パワーアカデミー事務局は、香川県丸亀市にある三菱電機株式会社の受配電システム製作所「中低圧直流配電システム実証棟」を訪問しました。…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.192016年7月掲載

「柏の葉スマートシティ」を訪問しました
2016年3月、パワーアカデミー事務局は「柏の葉スマートシティ」を訪問しました。柏の葉スマートシティは、内閣府の地域活性化総合特区に指定されており、国家的事業として取り組んでいる、…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.182015年10月掲載

東北電力「新仙台火力発電所」を訪問しました
2015年10月、パワーアカデミー事務局は東北電力の新仙台火力発電所(仙台市宮城野区)を訪問しました。仙台市の一番東にある仙台港に位置する新仙台火力発電所は、…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.172015年1月掲載

中部電力「南福光連系所」を訪問しました
2014年11月、パワーアカデミー事務局は中部電力と北陸電力の電力系統を連系している南福光連系所(富山県南砺市※とやまけんなんとし)を訪問しました。南福光連系所……>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.162014年9月掲載

東京電力「常陸那珂火力発電所」を訪問しました
2014年7月、パワーアカデミー事務局は東京電力の常陸那珂(ひたちなか)火力発電所(茨城県那珂郡東海村)を訪問しました。緑豊かな自然と太平洋の大海原が広がる常……>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.152014年5月掲載

「沖縄やんばる海水揚水発電所」を訪問しました
2014年2月、パワーアカデミー事務局は、沖縄県北部の国頭村(くにがみそん)にある、J-POWER(電源開発株式会社)の「沖縄やんばる海水揚水発電所」を訪問しました。沖縄やんばる海水揚水発電所は、世界…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.142013年11月掲載

「神之池バイオマス発電所」を訪問しました
2013年9月、パワーアカデミー事務局は、茨城県神栖市にある、国内最大級の木質バイオマス専焼発電所「神之池バイオマス発電所」を訪問しました。これは、9月18日(水)に行われた第2回GPAN(パワーアカ…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.132013年10月掲載

「浮島太陽光発電所」を訪問しました
2013年8月、パワーアカデミー事務局は、神奈川県川崎市にある「浮島太陽光発電所」を訪問しました。浮島太陽光発電所は、川崎市と東京電力株式会社の共同事業として、川崎市の臨海部に建設した大規模太陽光発電…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.122013年7月掲載

電気の歴史につながる九州電力・黒川第一発電所を訪問しました
2013年4月、パワーアカデミー事務局は、熊本県南阿蘇村にある九州電力の黒川第一発電所を訪問しました。黒川第一発電所は、約100年前の大正3年(1914)につくられた歴史ある水力発電所で、現在も現役で…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.112013年2月掲載

新出雲ウインドファームを訪問しました
2012年11月、パワーアカデミー事務局は、島根県出雲市にある株式会社新出雲ウインドファームを訪問しました。同社は、2009年4月に営業運転を開始した、日本最大規模の集合型風力発電施設「新出雲風力発電…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.102012年10月掲載

宮崎ウッドペレットを訪問しました
2012年8月、パワーアカデミー事務局は、宮崎県小林市にある宮崎ウッドペレット株式会社を訪問しました。宮崎ウッドペレット株式会社は、未利用となっている国内林地残材などを「木質ペレット」に加工し、バイオ…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.92012年9月掲載

九州電力・小丸川発電所を訪問しました
2012年8月、パワーアカデミー事務局は、宮崎県児湯郡木城町にある九州電力の小丸川発電所を訪問しました。小丸川発電所は、九州で最大規模の発電出力を誇る揚水式発電所。本レポートでは、小丸川発電所の仕組み…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.82012年5月掲載

電源開発・北本連系設備を訪問しました
2011年11月、パワーアカデミー事務局は、北海道・本州間電力連系設備(北本連系設備)の函館交直変換所を訪問しました。北本連系設備は、日本初の高電圧直流送電線という技術で、1979年に完成した北海道と…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.72012年4月掲載

東北電力・上の岱地熱発電所を訪問しました
2011年11月末、パワーアカデミー事務局は、秋田県湯沢市にある東北電力・上の岱地熱発電所を訪問しました。本レポートでは、震災後、注目を集める再生可能エネルギーのひとつ「地熱発電」の仕組みや特徴、そし…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.62012年4月掲載

関西電力堺港発電所と堺太陽光発電所を訪問しました
2011年10月、パワーアカデミー事務局は、大阪府堺市にある関西電力 堺港発電所と堺太陽光発電所を訪問しました。堺市の臨海部に位置する堺港発電所は、低炭素社会の実現とより低廉な電力の供給に向け、天然ガ…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.52010年9月掲載

四国電力「伊方ビジターズハウス」を訪問しました
2010年9月、パワーアカデミー事務局は、愛媛県西宇和郡にある「伊方ビジターズハウス」を訪問しました。伊方ビジターズハウスは、四国の約4割の電力をまかなう伊方発電所に隣接するPR施設です。施設は本館・…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.42009年12月掲載

中国電力「水島発電所」を訪問しました
2009年12月、パワーアカデミー事務局は、岡山県倉敷市にある、中国電力の水島発電所を訪れました。水島発電所は、水島コンビナートの電力をまかなうため、1961年に運転を開始した火力発電所です。発電所の…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.32009年11月掲載

中部電力PR展示施設「でんきの科学館」を訪問しました
2009年9月、パワーアカデミー事務局は、愛知県名古屋市にある「でんきの科学館」を訪れました。でんきの科学館は、見て、触れて、体験しながら電気の世界を発見できる参加・体験型の科学館。さまざまな角度から…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.22009年11月掲載

三居沢電気百年館を訪問しました
2009年11月、パワーアカデミー事務局は、仙台市にある「三居沢電気百年館」を訪れました。三居沢電気百年館は、東北の電気誕生から百年目を記念して、1988年に建てられたものです。主に東北地方における電…>>続きを読む

電気の施設訪問レポート vol.12009年8月掲載

関西電力「エル・シティ館」を訪問しました
2009年8月、パワーアカデミー事務局は、大阪府にある「エル・シティ館」を訪れました。エル・シティ館は、関西電力南港発電所のエル・シティ・ナンコウ内にあるPR施設。子供から大人まで、科学について遊び感…>>続きを読む

電気工学を知る