第3回 電気自動車とミニ四駆 電気自動車は、実物大"ミニ四駆"

2009年5月掲載

クルマの走りを進化させる、モータ配置

インホーイールモータ

強力なネオジム磁石(希土類磁石)によって、モータの小型化が実現し、インホイールモータが誕生しました。

電気自動車は、クルマの一番の魅力である"走り"の性能も優れていると言われています。その大きな理由として、シンプルな構造で、電気モータを含む駆動系統が構成できるからです。電気自動車は、シフトレバーやクラッチペダルはなく、損失の発生するトランスミッション(変速装置)などを使用しなくとも、直接タイヤに動力を伝達できます。そのため、電気モータは、起動段階から最大トルク(回転力)を得ることができ、またエネルギー効率がエンジン自動車に比べて格段に良いのです。

そこで、電気自動車に最適な駆動系統は何か?ということが重要になります。エンジンを単純に電気モータに置き換えたもの。減速機を省いたもの。後輪横に2つ別々にモータを配置し、減速ギアによって接続したもの・・・。様々な配置が考えられていますが、今もっとも注目を集めているのが、タイヤにモータを組み込んだ四輪独立方式「インホイールモータ」です。

インホイールモータで誕生!最高時速370km"エリーカ"

エリーカ写真

エリーカは、2004年に慶應義塾大学電気自動車研究室が開発しました。

インホイールモータ方式は、電気自動車のモータ配置としてはもっとも理想的な構成と考えられています。モータが車輪へ直結しているため、動力が直接タイヤへ伝達され、ギアや駆動軸などによるエネルギー損失がありません。また、四輪すべてを個別に制御できるため、駆動力の配分を自在に行えるなど、多くのメリットがあります。

そして、このインホイールモータを採用して、最高時速370kmを実現した夢の電気自動車が"エリーカ(Eliica)"です。エリーカは、四輪ではなく、八輪駆動によるインホイールモータ方式を採用。テスト走行における加速性能は、世界を代表するスポーツカーを凌ぎました。また、エネルギー効率も優れており、「100円で100kmの旅」をコンセプトに製作されています。近い将来、もしかしたら電気自動車によるF1レースも開催されるかもしれません。

電気自動車の開発が世界を救う

エリーカ写真

東京電力と三菱自動車の共同研究により開発された、i MiEV(アイ ミーブ)

良い事だらけの電気自動車ですが、もちろん、量産化に至るまではまだまだ多くの課題があります。一番大きいのは、バッテリーの容量・コストの面で、エンジン自動車なみの航続距離が得られないことです。しかし、これまでご紹介してきたとおり、今までになかった圧倒的な性能と利便性を誇り、環境にやさしい電気自動車の量産化は避けて通れません。今年1月に就任した、アメリカのオバマ大統領も、不況を脱するべく"グリーンニューディール政策"を掲げて、電気自動車の普及を目指すことを明言しました。

子供達が熱中したミニ四駆は、時を越えて実物化し、今、地球環境と人間社会を救う切り札になろうとしています。

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